世界の確かな歩みが始まる

「・・・こういった所を旅するのは案外乙な物なのだな。異国情緒溢れると言うより、異文化情緒溢れると言った方がいいのだろうね。こんな場合は」
「確かにそうだな・・・世界が違えば国も何もないだろう」
シェリダンの街を上から見下ろせる場に来て、アフロディーテとミロは街並みを眺めながら穏やかに会話を交わす。
「導師に謡将はどうだ?」
「あぁ、問題はない。今は私の薔薇により体力も回復出来るような形で安眠している・・・とりあえず今日のような予想外の事があったから少しどうかと思ったが、別段変化はないよ」
「そうか・・・だが今思い出しても珍しい場面に巡りあった物だな。俺達の世界でいうような飛行機を二千年程ぶりに造って動かそうとした場に来て、その失敗を見て助けに行くなんて言うものに」
「地球じゃ今の時代は飛行機は当然のように普及しているしね。少し違うかも知れないがこの世界のライト兄弟を助けたような物かな、歴史の流れ的には」
「そう思うとギンジ達からすれば不謹慎かもしれないが、光栄な瞬間に立ち会えたのだろうな・・・まぁこの話をギンジ達が聞いたら気分は良くないだろうが、それはギンジを助けたということで勘弁してもらおう」
「そこに彼女を驚かせてしまった分も含めてね」
そのまま先程の事についてを話す二人だが、その表情は普段あまり会話を交わすことが少ないという事など関係無いと言ったように穏やかな笑みだった。



・・・さて、ミロ達が何故こんな会話をしているのかと言うとシェリダンに着いた時にアルビオールという空を飛ぶ譜業が開発されていて数時間後に試験飛行が開始されると聞いた。だがそれはあくまでこのシェリダンという街の近くにあるメジオラ高原という場にあるセフィロト巡りの為、たまたま聞いた事である。故に最初はそうなのかと心の片隅に置いてその後にセフィロトへと向かった。

それでミロ達は持ち前の能力を駆使してイオンとヴァンを抱えつつメジオラ高原の中を探し回り、セフィロトに辿り着きパッセージリングの操作を終えてシェリダンに戻ってきたのだが・・・そこでアルビオールが試験飛行の際に強風に煽られ、メジオラ高原の中に墜落した事を聞いてしまった。

その際にミロとアフロディーテは青息吐息と言った様子のイオンに頼まれた。ギンジを助けに行ってほしいと。その声に元々から熱血漢で正義感の気質の強いミロは即座に頷き、アフロディーテは時間が少ないことに自分達がやる方が手間がかからないだろうことから少し後に頷いた。そしてアルビオールの核とも言える機関は創世歴からの遺産で回収しなければ同じ物は手に入らないと言われ、流石に機械に対しての専門的な知識を持たない二人は仕方無いとギンジの妹であるノエルも連れてメジオラ高原に向かった。

・・・まぁギンジの救出自体はほんの数分もかからず終わった。二人の能力を持ってすれば特にギンジの元に行くのに何の問題もなかった為に。むしろ時間がかかったのはノエルがその光景に唖然としてしまい、その機関を取り除く時である。その時は流石に二人も無配慮だったと内心苦笑いをしてしまった。手っ取り早いやり方を他者も気にせず優先させてしまったことに。まぁそのおかげで特に何もなく終わった訳ではあるが・・・そこは置いておくとしよう。下手につつくとノエルの心の平穏の為にならないために。








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