聖闘士と冥府の誘い
「執事の人の話だとファブレ公爵はティアがなんで謡将を襲ったのかっていうのを聞くためにも捕らえて戻らないといけないって言ったんですよ。それは被害者側からしたら正当な主張です。で、どんな理由がティアにあるかはあたしは知らないけど、それを個人的な事だって言ったらファブレ側が納得してそれで済むってイオン様は思ってるんですか?・・・謡将もそれで疑われて捕まってるんですから、ちゃんとした理由がないとまず無理ですよ。ファブレが納得するのも、謡将を解放してもらうのも」
「・・・それは・・・」
・・・アニスの見方はカノン達側に立った物の見方ではある。だがそれが正論でいて正当でしかなかったら、答えは必然的にイオン側にとって苦しい物にしかならない。
今までにない自身を責めるようなただ真剣に厳しい視線を向けてくるアニスに、居心地が悪そうにイオンは言い訳を探しながら視線を背ける。
「・・・よろしいですか、導師?」
「・・・貴方は、アイオロスさん・・・」
そんな姿を見かねたよう、ルークの後ろからアイオロスが少し悲し気にイオンの方に近付き声をかける。
「貴方にこのような事は言いたくはありませんが、言わせていただきます・・・貴方がそのようにティア=グランツの身柄を惜しむのは、貴方のその優しさによるものなのでしょう。ですがその優しさ、いえ同情はティア=グランツの為に本当になるとお思いですか?」
「・・・え?」
そしてアイオロスは静かに問いかける、優しさを同情と言い換えたその行動の是非を。
「もし貴方がその同情を持ってティア=グランツをその立場から救い出したとします。そうしたらその後に彼女に増上慢を与えることになるんですよ?例え以降は何をしようとも導師の事を引き合いに出せば許されるか、もしくは助けられるという保証がつくというね」
「なっ・・・!?」
「っ!?・・・私はそんなことしないわ!」
「本当にそうか?」
・・・増上慢。仏教用語で悟ってないのに悟りを得たと驕り高ぶる様を表す言葉。または自分の実力がないのに思い上がって過信すること。
過程がどうあれティアを救い出したなら当人に増上慢を与えてしまうとアイオロスが言葉を選ばず言えば、イオンは驚きに絶句してティアは侮辱と言わんばかりに目を見開き怒りでアイオロスを責め立てる。だがアイオロスは揺るぐことなく反論を返す。
「謝ったから許されるべき、偶然だから他意はない、自分への扱いは不当・・・そういった君の行動がいかに自分本位であるか、それをカノン達から聞かされただろう君は。だがそれでも君は未だ自分にはそこまでの非はない、謝れば許されて然るべき・・・そう思っているだろう」
「っ・・・それは・・・っ!」
「だがそれは到底許されることではない。少なくとも相手にとってはな・・・導師」
「っ!」
周りからの目で見ていかに愚かであるとティアは映るか。そう聞かされても尚自分は許されるべきと信じて疑ってないだろうと問いかけるアイオロスに、ティアは先程袋叩きにあったのもありそうだと声高に言えずもなんとか正当にその訳を探そうと視線をさ迷わせる。その様子にアイオロスは今度は静かながらも力の込められた視線をイオンに送り、その身を萎縮させた。
「ここで貴方がティア=グランツを見逃すように動けば、彼女は彼女のしたことの重みを真に知ることなく終わります。彼女の起こした行動の責任は彼女自ら負うべきなのです、それを貴方が勝手に無いものだったり軽減していいはずがない・・・導師、それは優しさではありません。同情にすらならない、ただの暴挙です。他の者のことなど一切考えない迷惑な行為でしかない・・・貴方は昨日の件でこのような案件でどうするべきかと思い直してくださったと思っていたのですが、残念です・・・」
「っ!・・・アイオロス、さん・・・」
そこからいかにティアを助けることか愚かしい事かと語るアイオロスだったが、昨日と言い出した辺りで悲しそうに目を伏せ残念と言うとイオンは今までの内でも最大限に痛く悲しそうに自身の胸の辺りを掴み目を反らさず・・・いや、反らせずにその姿を見つめていた。
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「・・・それは・・・」
・・・アニスの見方はカノン達側に立った物の見方ではある。だがそれが正論でいて正当でしかなかったら、答えは必然的にイオン側にとって苦しい物にしかならない。
今までにない自身を責めるようなただ真剣に厳しい視線を向けてくるアニスに、居心地が悪そうにイオンは言い訳を探しながら視線を背ける。
「・・・よろしいですか、導師?」
「・・・貴方は、アイオロスさん・・・」
そんな姿を見かねたよう、ルークの後ろからアイオロスが少し悲し気にイオンの方に近付き声をかける。
「貴方にこのような事は言いたくはありませんが、言わせていただきます・・・貴方がそのようにティア=グランツの身柄を惜しむのは、貴方のその優しさによるものなのでしょう。ですがその優しさ、いえ同情はティア=グランツの為に本当になるとお思いですか?」
「・・・え?」
そしてアイオロスは静かに問いかける、優しさを同情と言い換えたその行動の是非を。
「もし貴方がその同情を持ってティア=グランツをその立場から救い出したとします。そうしたらその後に彼女に増上慢を与えることになるんですよ?例え以降は何をしようとも導師の事を引き合いに出せば許されるか、もしくは助けられるという保証がつくというね」
「なっ・・・!?」
「っ!?・・・私はそんなことしないわ!」
「本当にそうか?」
・・・増上慢。仏教用語で悟ってないのに悟りを得たと驕り高ぶる様を表す言葉。または自分の実力がないのに思い上がって過信すること。
過程がどうあれティアを救い出したなら当人に増上慢を与えてしまうとアイオロスが言葉を選ばず言えば、イオンは驚きに絶句してティアは侮辱と言わんばかりに目を見開き怒りでアイオロスを責め立てる。だがアイオロスは揺るぐことなく反論を返す。
「謝ったから許されるべき、偶然だから他意はない、自分への扱いは不当・・・そういった君の行動がいかに自分本位であるか、それをカノン達から聞かされただろう君は。だがそれでも君は未だ自分にはそこまでの非はない、謝れば許されて然るべき・・・そう思っているだろう」
「っ・・・それは・・・っ!」
「だがそれは到底許されることではない。少なくとも相手にとってはな・・・導師」
「っ!」
周りからの目で見ていかに愚かであるとティアは映るか。そう聞かされても尚自分は許されるべきと信じて疑ってないだろうと問いかけるアイオロスに、ティアは先程袋叩きにあったのもありそうだと声高に言えずもなんとか正当にその訳を探そうと視線をさ迷わせる。その様子にアイオロスは今度は静かながらも力の込められた視線をイオンに送り、その身を萎縮させた。
「ここで貴方がティア=グランツを見逃すように動けば、彼女は彼女のしたことの重みを真に知ることなく終わります。彼女の起こした行動の責任は彼女自ら負うべきなのです、それを貴方が勝手に無いものだったり軽減していいはずがない・・・導師、それは優しさではありません。同情にすらならない、ただの暴挙です。他の者のことなど一切考えない迷惑な行為でしかない・・・貴方は昨日の件でこのような案件でどうするべきかと思い直してくださったと思っていたのですが、残念です・・・」
「っ!・・・アイオロス、さん・・・」
そこからいかにティアを助けることか愚かしい事かと語るアイオロスだったが、昨日と言い出した辺りで悲しそうに目を伏せ残念と言うとイオンは今までの内でも最大限に痛く悲しそうに自身の胸の辺りを掴み目を反らさず・・・いや、反らせずにその姿を見つめていた。
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