世界は聖闘士達の手によって変わり出す

「ヴァン、お前には感付かれていたのか・・・だが私はその事にすら気付けなかった・・・つくづく私は肉親として失格なのだろうな・・・」
「フ・・・今更何を言われる。預言だからと多大な命を見捨てることを是とするような人物が・・・」
「ちょっと待って!・・・だったら私は何・・・私はおじいさまの事は何も知らなくて、でも兄さんはおじいさまの事を分かっていて・・・なんで私に何も教えてくれなかったのよ!兄さんもおじいさまも!」
「「・・・っ」」
その中で続けて会話をする二人だが、立場も思想も浮かべてる感情も何もかも違うはずなのにどこか繋がりを見せている・・・その奇妙な在り方に1人ポツンと取り残されたと言わんばかりに癇癪を上げるティアに、また二人は揃ったように顔を苦くしかめた。
「・・・何故教えなかっただと?それを言うなら貴様にも言ってやろう・・・何故貴様はそうだと気付けなかった?」
「っ、何故って、それは二人が何も言わなかったから・・・」
「言われなければ気付かなかった側には何の責もなく、相手を詰める権利があるとでも言うつもりか?・・・だとしたらなんたる惰弱よ!与えられ知らされる物以外を受け入れることしか出来ぬというのだからな!」
「!?」
そこに一輝が静かに気付けなかった事についてを突っ込み聞くが、ティアが戸惑いながら返した言葉を惰弱と激しく切って捨てた。
「・・・惰弱、か。お前の言葉は厳しい物だな、一輝とやら」
「だが事実だ。そしてそれはこの女だけではなく貴様らにも当てはまる」
「フッ・・・また随分と手厳しいが、今の私にはその言葉がやけに心地いい・・・お前なら当人の責任とでも言うのだろうが、ティアをこうしてしまった責任の一端は私にもある・・・本当に済まなかった、ティア・・・」
「に、兄さん・・・!?」
ヴァンがそこで一輝にどこか吹っ切れたように穏やかな表情で話し掛け辛辣な言葉で返されるが、自嘲の笑みを浮かべた後にティアへ頭を下げる。ティアはいきなりの謝罪に動揺冷めやらぬ様子で目を見張った。
「・・・思えば私もお前と向き合うことを放棄していたのだな・・・ユリアシティに戻った時に私の元に来るお前に対し、私はお前を巻き込むまいとした・・・だがそれはお前に対して向き合い、色々と教えるべき事をやらなかったということと同義だった・・・肉親としての役目を放棄してな・・・」
「っ・・・な、なんで今更そんなことを言うのよ兄さん・・・!?」
「・・・何故教えなかったと言われたから教えたというのもあるが、もうお前と向き合う機会もないと思ったからだ」
「えっ・・・!?」
そのままに過去を悔いるように謝罪をする姿にティアは不安で揺れながら訳を問うが、これが最後と取れるようなヴァンの言い方にまた一層不安に揺れる。
「おそらくこの会談が終われば私はセフィロトの封呪を解きに行った後、責を取るという形で処断されるだろう。そうなればどう見たところで命があることなど想像出来ん」
「っ!?・・・そんな・・・」
「そしてティア、お前も他人事ではない。先程の反応からして、お前も何らかの罰を受けることは間違いないだろう」
「えっ!?なんで私が・・・!?」
「先程公爵を怒らせた件を忘れたのか?・・・このようなことを私が言うのは筋違いに思うかもしれないが、お前は外交問題に発展するだけの事をしでかした。それだけの事をしたお前が神託の盾として罰も何もなくいられると思っているのか?」
「っ・・・イ、イオン様・・・」
「待て、この場は私が答えよう・・・ティア=グランツ。お前が今まで起こしてきた所業もそうだが、その考え方を聞いて神託の盾として相応しいなどとは到底思えぬ。故にこれからどのような裁きを下すのかはまだ決まってはいないが、どう少なく見積もっても神託の盾からの除籍は確実だ。こればかりは譲れぬ物ではない」
「っ・・・!」
ヴァンはそこから自分の命の危うさについてとティア自身の立場の危うさも話すが、当人がすぐに信じられないとイオンにすがるような目と手を向けたらトリトハイムが取り付くシマも見せぬとばかりに強い拒否を返す様子に絶望したよう顔色を一気に真っ青にした。













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