「・・・申し訳ありません、公爵・・・改めてティア＝グランツが起こした行動、私からも謝罪させていただきます」
「イ、イオン様・・・」
そこでイオンが心底から謝罪の為に頭を下げる姿に、ティアは呆然としたよう目を向ける。
「・・・ここで一つ聞こう、ティア＝グランツ。そのような顔をしているのは何故導師がそこまでしているのか、と思っているからか？」
「そ、それは・・・ファブレに迷惑をかけたのは私だし、個人的な事情なものだから・・・そこまでする必要はないと、思って・・・」
「個人的、か・・・だからこそ俺は過ちを犯したと言っているのだ」
「えっ・・・！？」
アイオリアが間断許さず鋭く問いを向けるとティアはなんとか返答をするといった様子になるが、だからこそと言われ一気にドキリとしたよう身をたじろがせる。
「貴様の行動は確かに言ってしまえば個人的な物だったのだろう。だが裏を返してしまえば個人的な物でしかなかったからこそ、道理も大義も・・・常識も、何もかも置き去りにしてしまった！」
「っ！？・・・常識もって・・・！？」
「今導師が頭を下げた姿を見てお前は思ったのだろう。個人的な事の延長線で迷惑をかけた程度の物だと。だが現実は違う・・・導師が一国の公爵という立場の人間に直々に頭を下げねばならぬと決断させたその行動は、れっきとした外交問題に発展した大事だ」
「！？」
更にアイオリアがらしくもなくもって回った言い方をしたことにティアは何をと言いかけるが、イオンが謝罪せざるを得なかった状況を作ったことは外交問題だと告げられまた顔色を青くした。
「無論、導師の性格を鑑みるにお前のことを心から申し訳無いと考えて謝罪したのもあるのだろう。だがその心を抜きにしても、そうせざるを得ない程に公爵がお前の個人的な行動に怒りを覚えた・・・これが個人的な行動によるものの結果と考えていいと思うか？ましてや神託の盾に所属し教団に忠誠を誓う人間が他国の人間の迷惑など省みず動いていいなどと思うか？・・・答えろ！ティア＝グランツ！」
「っ！！」
黄金の獅子の一喝が場に響き渡り、ティアはまなじりに涙を浮かべ膝から崩れ落ちそうになりながらもなんとか耐えた。ティアからすればアイオリアのあまりの迫力に負けたのもあるが、自分が個人的な行動を取ってきた事を否定出来ないことに衝撃を受けてもいたからである。
「・・・これは、私の責任でもあるのだろうな・・・ティアがこのような事になったのは・・・」
「っ、おじいさま・・・！？」
そこにイオンの側にいた市長が表情を悲嘆にくれさせる様子に、ティアが涙などどこかにいかせて目を丸くした。まさかの人物の言葉に。
「・・・ホドが滅び、お前達兄妹をユリアシティに引き取り育てることになった・・・だが私は、お前達兄妹に対して真っ向から向き合うことが出来なかった・・・お前達の両親二人がホドで死ぬと、そう預言で詠まれていた事を知っていた申し訳無さから・・・」
「！？・・・なん、ですって・・・！？」
「・・・大方そのようなものだと思っていました」
「っ・・・兄さんは、知っていたというの・・・！？」
「ハッキリ聞いたことはなかったが薄々予感はしていた。ホドが預言に滅びを詠まれていたと知るおじいさまが両親の死を知らなかったのか・・・そういったことを突き詰めて考えていく内にな」
「っ・・・！」
そして独白気味な言葉が続くが両親の死を知っていたという事に加え、ヴァンもが市長の考えを予想していたとの声が出てきた事に愕然とした。自分だけが何も知らなかったと、感付けなかった事実に。








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