世界は聖闘士達の手によって変わり出す

「・・・何をするにせよ、人の行動の理由など所詮個人的な物だ。それ自体を俺は否定するつもりはない・・・が、個人的な理由を仰々しく飾り付け大義を伴わせるなど言語道断!そのような考えでぬけぬけと誰かの為になどとよく言えたものよ!」
「っ・・・!」



・・・一輝自身、聖闘士として聖衣を受け取った時から戦う理由というものを飾って偽った事は一度もない。星矢達と敵対していた時もそうだが、星矢達と共に戦うとなってからもだ。これは元々の一本気な物の考え方もあるからでもあるが、自分の正義という確固たる信念を持っているからだ。



そんな一輝からすれば建前を本音のように話すばかりか、建前が本音とばかりに言葉を飾るような事など見苦しい以外の何物でもない・・・怒りと共にそう突き付けられた事にティアは反論出来ず悔しそうに歯を噛み締める。一輝の言ったことはティア自身は認めたくはないだろうし自覚も薄いだろうが、当たっていた事もあり。
「・・・それでは何だ?そこの娘は何か兄の為にと動こうとしていたというのか?一輝、お前の言葉から考えるとそうなるように思うが・・・」
「この女からすれば兄が起こした事だから自分が責任を取る必要があると思っていたようだ・・・が、そんなものは言ってしまえば自己満足でしかない。この男が取るべき責任はこの男にある。肉親だからと責任を肩代わり出来るような物ではない」
「・・・成程、それが勘違いという事か。同時に、酷い過ちを犯してもいる」
「・・・え・・・?」
そこにアイオリアが厳めしい空気をどことなく滲ませながら問いを向け、一輝の返答に納得するが過ちとの言葉にティアは何をと不安に満ちた目を向ける。
「俺は今までの旅についてを又聞き話でしか聞いていないが、今の話を聞くに最初から最後までお前の目的は謡将の真意を探ることだったのだろう。ファブレ邸で謡将を襲ったのもそこで真意を聞ければそれでよしで、そうでなくとも兄にアクションをかけ続ければ何かが分かるかも知れないと見越してな」
「ちょっと待て、アイオリアとやら・・・ではまさか、たったそれだけの為に屋敷はこの女に襲われたというのか・・・?」
「私の見込みが正しければになりますが、話を聞く限りではティア=グランツに謡将を殺す意志は最初からなかった・・・もしくは動揺を誘い謡将の真意を聞ければそれでよかった、と思っていたのではないかと私は見ています。それにそもそも譜歌を用いてハンデを得たとて、謡将がその女に易々とやられていたとも到底思えません。最悪返り討ちにあったとしても兄なら自分は殺されることはない・・・とすらも考えていた可能性すら有り得ると見ています」
「っ・・・なん、だと・・・!?」
「「・・・!」」
アイオリアは自身の推測を語っていくのだがファブレ邸の主である公爵がその中身に食いつき、更に続けられたティアが考えていた可能性についての推測に怒りの様相を強めてイオンとトリトハイムが表情を青ざめさせる。
「では何か・・・そんな事の為に屋敷は使われたとでも言うのか・・・!?」
「っ・・・め、迷惑をかけたことは謝ります・・・ですがあれは、兄の真意を知るためには必要な事だったんです・・・」
「ならば何故ファブレ以外でやらなかった!?そのような理由であればわざわざダアトから遠く離れたバチカルにまで来る必要など皆無だったはずだ!それとも何だ!?ダアトには迷惑をかけたくなかったからキムラスカになら迷惑をかけていいとでも思ったからやったとでも言うのか!?・・・もしそうだったら尚更にタチが悪い事をしでかしてくれたというのを分かってて言っているのか、貴様!」
「っ・・・そ、それは・・・その・・・」
すぐに公爵はティアに怒りを抑えた眼差しを向け静かに問うが言い訳がましくたどたどしい口調で返す姿に一瞬で怒りを爆発させ、一気にまくしたてていく姿にたまらず視線を背け口ごもる。








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