世界は聖闘士達の手によって変わり出す

「・・・アフロディーテさん、あの薔薇は一体なんなんですか?」
「私が持つ解毒作用を持った薔薇です。本来なら薔薇の近くにいたり薬として花片を紅茶の中に入れたりなどしても効果は十分に期待は出来ますが、直接薔薇を体に刺せば痛みこそありますが即行での解毒を行うことが出来ます」
「・・・では、あの薔薇の変化は・・・?」
「体の中にあるであろう障気を薔薇が吸いとった結果です。あの薔薇は人間にとっての毒素に反応するのですが・・・それでもあの薔薇が一気に花片全体まで色を染め上げることなど滅多にありません」
「っ・・・では、セフィロトの操作の際に相当の量の障気を取り込んでしまったと言うのは・・・」
「嘘ではないでしょう。そしてこれほどまでの薔薇の変わりようを見るからには、一般人なら気を保てるかどうかも怪しい程の量と見ていいです。一般的な治療が不可能というのはまず間違いないと見ていいくらいに」
「「「「・・・っ!」」」」
イオンはその変化についてをアフロディーテに問うのだが、詳しく話を聞いていく内に薔薇の効能に加え障気の量についてを聞かされ周りの人間共々に息を呑む。それだけの物なのかと理解して。
「・・・さて、気分はどうだい?刺された薔薇は少しは痛むだろうが、障気自体は体から抜けていると思うのだが・・・」
「・・・確かに悪くない。障気も嘘のように体の中から薔薇の方にスッキリと抜き取られていったのを感じた・・・だがお前が障気を確かめると言ったのはこの為だと分かるが、一輝とやらが何の為にその事を言い出したのかが分からんのだがな・・・」
「そう言えばそうだね・・・どうしてなんだい、一輝?」
そこでアフロディーテは具合の程を伺うのだが、大丈夫と返す傍らでそれを暴く理由はなかったはずというヴァンに納得して一輝に視線を向ける。
「・・・フン、この男が検討違いの目論見をしているからそれを白日に晒してやろうと思ったまでよ」
「何?」
「・・・もしや一輝、謡将はセフィロトの事実が明らかになるまでもを見越していたとでも言うのか?」
「えっ・・・兄上、それはどういうこと?」
「先程の意味深な笑みに今のやり取りを見て何となく思った・・・謡将はこうなることを望んでいたのではないかとな」
「望んでいたって・・・セフィロトの操作に自分がいなきゃ意味がないってことを?でもそうバレるのって、謡将の目的を考えると有り得ないと思うんだけれど・・・」
鼻を鳴らし気に入らないと返す様子にアフロディーテが再度疑問の声を上げるが、カノンが確信を持った様子で声をかける姿にルークが一同の代表と言ったように疑問を向ける。自然と兄と言いながら。
「あぁ、以前の謡将なら有り得ない事だっただろう・・・だが目的ももう達成出来ないことに再建を謀ることも出来ないと謡将が考えたなら、何か別の考えが浮かんだのではないのかと思ったんだが・・・それは俺にもハッキリと検討がつかんが、なんだと言うんだ?一輝」
「簡単な事よ・・・ヴァンは妹がセフィロトの操作により障気を受けることをよしとせず、自分が障気を受けることを覚悟したのだ。あえて諦めるといったように振る舞う形でな」
「何・・・?」
「兄さん・・・!?」
カノンはそう思った根拠までもを語り理由を最終的に一輝に伺うが、返ってきた言葉に訝しく眉を寄せる中でティアが信じられない物を見るようにヴァンに視線を向けた。
「・・・謡将に一応聞きますが、それは本当ですか?」
「・・・心の中を覗かれていると言うのなら、嘘はつけんのだろう・・・確かにその通りだ」
「何故・・・何故今更そんなことを言うの、兄さん!?」
カノンが一応とつけて確認を取ると観念したよう目を閉じヴァンは是と返し、ティアは悲痛といったように声を上げる・・・その光景を一輝が怒りを滲ませた瞳で見ているとも知らず。










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