世界は聖闘士達の手によって変わり出す

「だが、一輝とやら・・・それはどういうことだ?パッセージリングの操作が出来ぬとは・・・」
「ヴァンの記憶には別のパッセージリングに行き、そこで既にユリア式封呪を解いた上で自分以外には操作が出来ないようにと書き換えていた映像があった。それを破棄するには本人の承認が必要な上、無理にでもそれを無視した操作を行えばいずれ・・・操作をしたアブソーブゲートとやら以外のセフィロトが一斉に魔界に堕ちるようになっているとの事だ」
「「「「!?」」」」
そんな中でインゴベルトが恐る恐ると一輝にどういうことかと尋ねるが、無理な操作が外殻大地の実質的な崩壊を招く処置を取っていたと返ってきた事に一斉に場にいたほとんどの人間が凍り付いた・・・最悪の事態になりかねなかった可能性があったことに。
「・・・一輝、何故謡将はそのような用心をしたのですか?私はそのような事をするような理由はないかと思うのですが・・・」
「記憶を読んだ限りではアブソーブゲートで操作をした際に妹のようなイレギュラーから事実を知られた際、他の者に触れられないようにする予防弁として思い付いたとのこと・・・その時は一応程度の気持ちでいたようだが、何も知らぬまま話を進む様子を見て事態が進みカノン達が狼狽する様子を想像しようとでもしていたのだろう。最も、カノンもこの男の不自然さには気付いていたようだがな」
「・・・そうなのか、カノン?」
「謡将がまだ何かを隠している・・・そう言った笑みをわずかに浮かべたと思った時に聞かずにはいられませんでした。その前に一輝が現れるとは思いませんでしたが・・・」
「・・・そうか」
その中で動揺していなかったアテナがどういうことかと経緯を詳しく聞き、一輝がぶっきらぼうながらちゃんと説明してカノンについて言うと公爵が真意を尋ねる。カノンはまた簡潔に答えていき公爵は納得するのだが、そのままカノンはヴァンに鋭い眼光で視線を向ける。
「・・・となれば、謡将には是非とも付いてきてもらわねばならんようだな。首根っこを引きずってでも、その操作を無効にするためにも・・・!」
「・・・フッ、ここまで来てしまえばそれもやむ無しと言った所か」
「・・・ではティアにこの話をするのは止めた方がよさそうですね。ヴァンにそうさせるというのであればティアは大丈夫でしょうし・・・」
「待て・・・この際だ、そのティアとやらもここに呼べ。その方が話を進めやすい」
「え・・・何故でしょうか・・・?」
そのままどうあっても連れていくと宣言するカノンにヴァンは諦めがついたといったように笑い、イオンがティアはいいだろうと言いかけたが一輝の命令と取れる要求に首を傾げる。
「すみませんが導師、一輝の言うようにしていただけますか?一輝が意味なくこのような事を言う訳はありませんから」
「・・・分かりました、ではティアをこちらに呼ぶよう手配してください」
「はい、分かりました」
そこにアテナが一輝を後押しするように願えばイオンも一先ず頷き、トリトハイムが外に行こうと動き出す・・・その中でヴァンがそっと歯を噛み締めていたのを見ていたのは、一握りの者だけであった。









・・・そして数分後、兵に連れられティアが部屋に入室してきた。
「っ・・・兄さん・・・!」
「・・・久しぶりだな、ティアよ」
イオンの近くまで来て辺りを見渡した所でヴァンを見つけて敵意を込めた眼差しを向けるティアに対し、ヴァンは落ち着き払いながらも熱のない笑みで答える。










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