聖闘士と冥府の誘い

「なら話をしよう。とはいってもそう難しいことではない。私はさっき一緒にいたアイオロス以外にも後三人程連れがいるのだが、その中にキムラスカに所属する者がいる。私がその者に頼み君の両親をキムラスカで内密に保護するよう、頼むという物だ」
「えっ・・・キムラスカの人がいるってどういうこと、ですか?」
それでカミュは早速と打開案を提示するが、事情をよく知らないアニスは手で涙を拭いつつその事に首を傾げる。
「今の君になら私達がここにいる意味を話してもいいだろう。まずはこちらの話を聞いてくれ」
その姿に既に一蓮托生になっている(とアニスは思っているだろう)事からカミュは話を始める、ファブレ邸をティアが襲ったことから始まる話の顛末を・・・












「・・・という訳で今私達はこのエンゲーブにいる。計らずもルーク様がタタル渓谷に飛ばされた事でな」
「そんな・・・じゃあ宿で寝てたあの人って、ファブレ邸を襲った犯人・・・!?」
「わかっていると思うがこの事は導師には内密にしてもらおう。あの方は見たところ情け深く事情を聞けば傷付くと予測がつく上、カノンはファブレ公爵に命じられた上でルーク様の保護とあの女の捕縛を目的としている。下手に事態をこじらせない為には黙ってもらった方が都合がいい上、君の見方も変わってくるだろう。最も、あの女に同情して肩入れするというなら話は別だが・・・」
「・・・そんなことするわけないじゃないですか。別にあの人とあたしは知り合いって訳でもないし、話聞いたら同情する余地も聞いててないと思ったし・・・それにそんなことするような人とあたし、一緒にされたくないし・・・」
・・・そして事情を説明し終わり立ち上がったアニスが驚きに目を剥く中でカミュはイオンに内密にしろと言った上でティアに肩入れしてもいいと暗にその場合処置を施すと含めて言うと、アニスは確かな力を込めて一緒にされるのは嫌だと首を横に振った・・・カミュに見捨てられるのも嫌だったのだろうが、ここまで言うということはアニスの中で余程ティアの行動は不審しか産まなかったのだろう。
「・・・でもキムラスカにパパとママを保護してもらうって言いましたけど、ホントにやってくれるんですか?そのカノンって人に、ルーク様って人・・・」
だがそこからカミュの案をまだ信じきれないと、アニスはカノンとルークを疑う弱い視線を向けてくる。
「心配はいらない。話によればカノンはルーク様にファブレ公爵の信任も厚く、またルーク様もファブレの子息。二人の言葉があれば公爵も手を打ってくださるだろう。ただ公爵は大詠師に対し打算的な考えで君の両親を保護するだろうが、むしろそう言った見返りがあるからこそ公爵は助け船を出されると思っておいた方がいい。同情を引くような形で物を言っても公爵はキムラスカの重鎮、他国の一つの家庭の為に同情のみで動くと思わない方がいい」
「そっか・・・でもそういう形なら、公爵もパパとママを保護してくれるよね・・・」
その返答にカミュはあえて希望的な答えではなく現実的な視線で考えれる損得勘定からの答えを返し、少しその言い方に微妙そうながらもアニスは確かに納得して頷く。



・・・こういった現実を知る者に対し、ただ大丈夫というのは余計に不安を煽るだけ。それならまだ言葉が悪かろうとも率直に成功に繋がる明快な道を標した方が、確かな安心に繋がるのだ。わずかな希望の為に綺麗に見えるだけの薄氷の張った湖の上を歩くより、確かな希望の為に泥まみれの道でも確かな地面の上に設けられた道を歩く方が。



(・・・まぁ公爵がそうすると言わなかった場合、私達が無理矢理さらうつもりでいるがな。この娘の両親はいずれこの娘にとっても近しい者にとっても、災いになる可能性がある。例え間接的でもな)
そしてその道をより確かに固める為、最後の手段として自分達が動くことも視野に入れているカミュ。そこまでしてアニスの両親を助ける、いや連れ出すとカミュが決めている訳はその両親からもたらされるだろう危険性にあった。











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