まとまりを見せる全体、反感を浮かべる個
「・・・久しぶりという程の時間でもないのだろうが、ここ最近が濃密だったせいかずいぶんと会ってなかったように感じてしまうな・・・」
「・・・こちらも、同じ気持ちです」
四人きりの場でインゴベルトが重く切り出した言葉に、ルークも重く頷いて返す。
「・・・この場ではルークと呼ぶが、どうだルーク?以降は問題はないか?」
「はい・・・カノンだけでなくアイオロス達も私に良くしてくれます。私は特に問題はありません」
「そうか・・・」
「・・・どうやら、下手な探りあいは意味がないようですな。陛下」
「・・・うむ、そのようだな」
「・・・すみません」
「お前が謝ることはない。むしろきっぱりと意思表示をしてくれたおかげでこちらも覚悟が出来た・・・アッシュ達と向かい合う覚悟がな」
そしてインゴベルトはルークと会話を交わしていくのだが全く揺るぐことのない強い意志を見せる姿に公爵が間に入り、申し訳なさそうな表情になるルークにすぐに見切りをつけて首を横に振って返す・・・アッシュ達と向き合うと。
「・・・すまんな、カノン。わざわざこのような場を設けてもらって」
「いえ、このような機会は必要であったと思いますから・・・互いの為にも」
「互いの為にも・・・か。そう聞くともう本当にお前達はファブレに戻るつもりはないのだと、改めて自覚させられるな・・・」
「・・・知らないことだったとは言え、七年もの間子息に成り代わっていたことは謝罪致します」
「いいのだ、ルークよ・・・それを見抜けなかった私にも責があるし、お前に罪を償ってもらう必要もない。お前は・・・自由だ」
「・・・今までありがとうございました父上、いえ公爵様・・・」
「・・・うむ」
そのままカノンに声をかけた後互いと言われた事にルークに視線を向けて会話をする公爵だが、様々な想いが交錯する形で交わされた会話の中、ルークが最後とばかりに呼び名を糺し神妙に頭を下げる姿に公爵もそっと目を閉じ頷いた・・・謀略により知らず知らず築いてきた親子という関係が今この瞬間終わった、そうハッキリ理解しながら。
「・・・私がこのような事を言う資格がないのは重々承知はしているが、ルークを頼む。カノン」
「はい、お任せください」
そして目を開けカノンにルークの事を頼むと公爵は告げ、カノンもまた頷いて返す。
「・・・これで後は我々が親としての責務を果たすだけだな」
「・・・はい、陛下」
「すまぬな、わざわざこちらまで来てもらって。もう戻ってよいぞ」
「はっ、ではまた会談の時にお会いしましょう」
インゴベルトは公爵と顔を見合わせた後に二人に退出を言い渡し、カノンとルークは頭を下げてから部屋を出ていく。
「・・・兄上」
「っ・・・なんだルーク、いきなり?」
それでマルクト陣営の集まる部屋に戻る道の中、名前ではなく兄呼びに変わったルークに軽く驚きながらも微笑を浮かべた顔を向けてカノンは何事かと返す。そこには頬を少し染め、視線を反らすルークの顔があった。
「何て言うか、その・・・さっきの会話でキムラスカとケジメをつける形になったから、これからはカノンじゃなくてちゃんと・・・兄上って呼ぼうって思ったんだ・・・」
「いや、無理にそう呼ばなくてもいいぞ。年下からの呼び捨ては慣れているし、言い慣れてる方でいい」
「そうじゃなくて・・・呼びたいってのもあるんだ、兄上って・・・兄上の事を、弟として・・・」
「っ!・・・そう呼びたいなら好きにすればいい」
「っ・・・うん」
そのまま訳を話すルークに初めは無理はいいとカノンは返すが、弟として・・・そう出てきた答えにカノンは衝撃を受けハッとするが心から嬉しそうに微笑みながら頭を撫で、ルークもまた嬉しそうに頷いた。この後に世界の行く末を決める会談があることなど微塵にも感じれぬ程、穏やかな空気の中で。
END
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「・・・こちらも、同じ気持ちです」
四人きりの場でインゴベルトが重く切り出した言葉に、ルークも重く頷いて返す。
「・・・この場ではルークと呼ぶが、どうだルーク?以降は問題はないか?」
「はい・・・カノンだけでなくアイオロス達も私に良くしてくれます。私は特に問題はありません」
「そうか・・・」
「・・・どうやら、下手な探りあいは意味がないようですな。陛下」
「・・・うむ、そのようだな」
「・・・すみません」
「お前が謝ることはない。むしろきっぱりと意思表示をしてくれたおかげでこちらも覚悟が出来た・・・アッシュ達と向かい合う覚悟がな」
そしてインゴベルトはルークと会話を交わしていくのだが全く揺るぐことのない強い意志を見せる姿に公爵が間に入り、申し訳なさそうな表情になるルークにすぐに見切りをつけて首を横に振って返す・・・アッシュ達と向き合うと。
「・・・すまんな、カノン。わざわざこのような場を設けてもらって」
「いえ、このような機会は必要であったと思いますから・・・互いの為にも」
「互いの為にも・・・か。そう聞くともう本当にお前達はファブレに戻るつもりはないのだと、改めて自覚させられるな・・・」
「・・・知らないことだったとは言え、七年もの間子息に成り代わっていたことは謝罪致します」
「いいのだ、ルークよ・・・それを見抜けなかった私にも責があるし、お前に罪を償ってもらう必要もない。お前は・・・自由だ」
「・・・今までありがとうございました父上、いえ公爵様・・・」
「・・・うむ」
そのままカノンに声をかけた後互いと言われた事にルークに視線を向けて会話をする公爵だが、様々な想いが交錯する形で交わされた会話の中、ルークが最後とばかりに呼び名を糺し神妙に頭を下げる姿に公爵もそっと目を閉じ頷いた・・・謀略により知らず知らず築いてきた親子という関係が今この瞬間終わった、そうハッキリ理解しながら。
「・・・私がこのような事を言う資格がないのは重々承知はしているが、ルークを頼む。カノン」
「はい、お任せください」
そして目を開けカノンにルークの事を頼むと公爵は告げ、カノンもまた頷いて返す。
「・・・これで後は我々が親としての責務を果たすだけだな」
「・・・はい、陛下」
「すまぬな、わざわざこちらまで来てもらって。もう戻ってよいぞ」
「はっ、ではまた会談の時にお会いしましょう」
インゴベルトは公爵と顔を見合わせた後に二人に退出を言い渡し、カノンとルークは頭を下げてから部屋を出ていく。
「・・・兄上」
「っ・・・なんだルーク、いきなり?」
それでマルクト陣営の集まる部屋に戻る道の中、名前ではなく兄呼びに変わったルークに軽く驚きながらも微笑を浮かべた顔を向けてカノンは何事かと返す。そこには頬を少し染め、視線を反らすルークの顔があった。
「何て言うか、その・・・さっきの会話でキムラスカとケジメをつける形になったから、これからはカノンじゃなくてちゃんと・・・兄上って呼ぼうって思ったんだ・・・」
「いや、無理にそう呼ばなくてもいいぞ。年下からの呼び捨ては慣れているし、言い慣れてる方でいい」
「そうじゃなくて・・・呼びたいってのもあるんだ、兄上って・・・兄上の事を、弟として・・・」
「っ!・・・そう呼びたいなら好きにすればいい」
「っ・・・うん」
そのまま訳を話すルークに初めは無理はいいとカノンは返すが、弟として・・・そう出てきた答えにカノンは衝撃を受けハッとするが心から嬉しそうに微笑みながら頭を撫で、ルークもまた嬉しそうに頷いた。この後に世界の行く末を決める会談があることなど微塵にも感じれぬ程、穏やかな空気の中で。
END
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