まとまりを見せる全体、反感を浮かべる個

「ですが私達からしてみれば、預言のない世界というものが想像出来ないのですが・・・」
「それはそうだと思います。星の記憶を詠むと言うことは神ですら避ける事なのですから、私達の世界で詠まれる事は無かったのです」
「っ・・・神ですら、避ける・・・!?」
そんな会話にトリトハイムが地球に預言がないことを疑問視する声で入るが、アテナが返した答えにまさかと目を見開く。神すらやらない行動と。
「星の記憶を詠むと言うことは星の生命を使うということ・・・そのようなことをすれば星の寿命が縮まり、人を始めとした生命体もですが神も星に住まうことが出来なくなります。いかに神と言えども星の生命が途絶えてしまえばどうしようもないのですから」
「・・・だから神は預言というか、星の記憶を詠む事をよしとしないと・・・?」
「はい。そもそも星の記憶を詠めるようになることなどまず有り得ない事なのですが、それをこの世界の人は知らないからこそプラネットストームという形にして尽きることのないエネルギーと思い込み使っていった・・・おそらく私以外の神がこの世界に来たとしたなら、どう控え目に見ても呆れを覚える事は間違いないでしょう。神ですら星を甦らせるなど出来ないことなのに、人は容易く星を滅ぼすのかと」
「・・・っ!」



・・・地球の命あるものを全て廃そうとしたハーデスとて、地球そのものを破壊しようとまではしなかった。それは神とて寄る所が無ければ存在する事が難しくなる上、星の生命力はいかな神でも再生出来る物ではない・・・何故なら神もまた星が産み出した生命体なのだから例え神と呼ばれるに相応しい力を持って成長したとしても、星の生命力は復活させるだけの力はないのだ。だからこそハーデスを始めとした神は力を摘出出来ると知っていても星の生命を使わない。その尊さがいかなものか分かっている為に・・・



・・・ハーデス達の事は言葉にはせずともアテナが語る神の視点からの言葉に、トリトハイムは唖然とする。神の啓示とすらオールドラントで思われていた預言が、神から見れば星を滅ぼしかねない愚かな行動と見られるというあまりのギャップと皮肉に。
「・・・この世界に生きてきた貴殿方には確かにピンと来ないと言うことは分かります。ですが本来なら預言という形で星の生命を脅かし、未来を視るなどといったことは有り得てはならないのです」
「・・・だからこそ是が非でも預言を詠むのを止め、プラネットストームの停止を行い障気をどうにかした上で外殻大地をどうにかしなければならないということですか・・・それらの一連の流れを達成するのはどれだけ難しいのかもですが、人々が受け入れてくれるでしょうか・・・」
「それらはこれより後の会談、そしてカノン達の行動により決まることです・・・信じてください、彼らを」
「・・・はぁ・・・」
その様子にアテナは励ましの声をかけ笑顔を浮かべるのだが、トリトハイムは事の重大さに苦い気返事を返してうつむく。やはり預言の衝撃もあってすぐに立ち直るというのはトリトハイムにとっては酷なのだろう。
「・・・む、この小宇宙は・・・」
「どうやらマルクトの船もそろそろ到着するみたいだね」
「・・・気配、と言うかその小宇宙で分かるんですね・・・皆さんは・・・ですが、それなら出迎えはちゃんとしないといけませんね・・・!」
そこで空気を気にせず小宇宙を感じたミロとアフロディーテの会話に、イオンは感心しつつも表情を引き締める。自身も表情を歪めていた事を自覚した為に。












・・・そのミロ達の言葉から一時間もしない内に、ピオニー達を乗せたマルクトの船は港へと入った。







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