聖闘士と冥府の誘い
「・・・成程、話はわかった。君の両親は借金をしていて、その借金を肩代わりしているのが大詠師。それで大詠師は両親にその事は告げず君にだけその事実を知らせ、その借金を盾に君に導師のスパイをすることを命じている・・・という訳か」
「・・・はい、その通りです」
・・・時間は戻り、カミュがアニスのスパイの事実を知った時。
全ての話を聞き終わったカミュは事情をまとめた言葉を向けると、アニスは力なく肯定してうなだれる。
「確かに君の身の上は複雑であることは認めよう。そして大詠師に逆らえない事も・・・だがこれははっきり言わせてもらおう。今のまま君が導師のスパイを続けたところで、君はスパイどころか大詠師の傀儡をやめることは出来ない」
「!?そんな、なんで・・・!?」
その上でカミュから出てきたのは身の上を理解しつつも、その身の上から脱出は出来ないと冷静に淡々と述べた断定と呼べる力のこもった推測。その推測にアニスは驚き、たまらず顔を上げ訳を焦って聞いてくる。
「話を聞く限り君の両親は借金をすることへの抵抗が低いというより、無いに等しい。君はそのスパイ行為で借金を返しているのだろうが、当の本人達が借金をねずみ算式に増やし続けているのでは意味がない。いや、むしろ大詠師はそれを見越して借金の肩代わりをして君をスパイに仕立てたのだろう・・・このままでは大詠師が死なない限りは君は解放されることはないと私は見ている」
「・・・モースが死ぬまでって、そんな・・・」
その姿にカミュはいかにそのスパイを続けさせるための構図が良く出来ているのかと語れば、アニスは絶望したように顔を青白くさせて地面に膝だちになる。
「おそらく君はいずれは解放されることを夢見てスパイを続けているのだろう。いずれ来る自由の為にな。君はその事を信じ・・・いや、薄々は簡単に解放されることはないと思うことから目を背けながら活動していたのではないか?」
「・・・だって、借金を返したら自由になるって信じなきゃ・・・どうにかなりそうだったんだもん。でもあたし、ホントは気付いてた・・・このままだったらモースが死ぬまで、ずっとこのまんまなんじゃないかって・・・でも気付いちゃったら、もうどうしようもないじゃん・・・ッ、ヒクッ・・・!」
明らかに精神的に追い詰められている。それでも尚内心を見透かしたように残酷な問いかけを向けるカミュに、アニスは途切れ途切れながらもそれが当たっていることを認めるが自身の中にあった隠していた想いと向き合い手で目を擦りながら次第に嗚咽を上げ出した・・・希望はないと、その残酷な事実に向き合ったことで。
「・・・もし君が本当に大詠師の支配から逃れたいと、そう思うなら私の話を聞く気はないか?」
「・・・えっ?」
・・・だがカミュとて自身で言っていたがそのような状態のアニスを放っておけるような所業が出来るような鬼ではない。寧ろ黄金聖闘士において情け深い部類に入る人間である。
表情は変えないながらも手を差し伸べる情けを向けるカミュの声に、アニスは手をどけ涙を眦に浮かべながらも見上げる視線を向ける。
「だが一つ、これは言っておく。これから私が話すことは誰かにバレれば私達の立場もだが、君の立場も当然危うくなる物になる。何故危うくなるのかと言えば、君が話を聞いた後で裏切るというのであれば私は遠慮なく君をスパイだということを公表する気でいるからだ。だが話を聞かないというのであれば君の事は約束通り言わないようにしよう・・・それを踏まえて聞こう。私の話を聞くか聞かないか、どうする?」
「・・・それは・・・」
しかしそれでも冷静に事を進めるべきと、情けを向けながらも裏切った場合の処置を告げるカミュ。だが話を聞かないならそんなことはしないと言って選択の余地を与えると言ってどうするかと改めて聞くカミュに、アニスは視線をさ迷わせながら考える。
そして少ししてアニスはカミュに視線を向け・・・
「・・・聞きます、話を聞かせてください。このままだったらどうしようもないなら、貴方の話に乗りたいです・・・」
「そうか」
・・・すがるような力ない瞳で話に乗ると宣言した。その声にカミュはただ事実を受け止め、一つ頷いた。
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「・・・はい、その通りです」
・・・時間は戻り、カミュがアニスのスパイの事実を知った時。
全ての話を聞き終わったカミュは事情をまとめた言葉を向けると、アニスは力なく肯定してうなだれる。
「確かに君の身の上は複雑であることは認めよう。そして大詠師に逆らえない事も・・・だがこれははっきり言わせてもらおう。今のまま君が導師のスパイを続けたところで、君はスパイどころか大詠師の傀儡をやめることは出来ない」
「!?そんな、なんで・・・!?」
その上でカミュから出てきたのは身の上を理解しつつも、その身の上から脱出は出来ないと冷静に淡々と述べた断定と呼べる力のこもった推測。その推測にアニスは驚き、たまらず顔を上げ訳を焦って聞いてくる。
「話を聞く限り君の両親は借金をすることへの抵抗が低いというより、無いに等しい。君はそのスパイ行為で借金を返しているのだろうが、当の本人達が借金をねずみ算式に増やし続けているのでは意味がない。いや、むしろ大詠師はそれを見越して借金の肩代わりをして君をスパイに仕立てたのだろう・・・このままでは大詠師が死なない限りは君は解放されることはないと私は見ている」
「・・・モースが死ぬまでって、そんな・・・」
その姿にカミュはいかにそのスパイを続けさせるための構図が良く出来ているのかと語れば、アニスは絶望したように顔を青白くさせて地面に膝だちになる。
「おそらく君はいずれは解放されることを夢見てスパイを続けているのだろう。いずれ来る自由の為にな。君はその事を信じ・・・いや、薄々は簡単に解放されることはないと思うことから目を背けながら活動していたのではないか?」
「・・・だって、借金を返したら自由になるって信じなきゃ・・・どうにかなりそうだったんだもん。でもあたし、ホントは気付いてた・・・このままだったらモースが死ぬまで、ずっとこのまんまなんじゃないかって・・・でも気付いちゃったら、もうどうしようもないじゃん・・・ッ、ヒクッ・・・!」
明らかに精神的に追い詰められている。それでも尚内心を見透かしたように残酷な問いかけを向けるカミュに、アニスは途切れ途切れながらもそれが当たっていることを認めるが自身の中にあった隠していた想いと向き合い手で目を擦りながら次第に嗚咽を上げ出した・・・希望はないと、その残酷な事実に向き合ったことで。
「・・・もし君が本当に大詠師の支配から逃れたいと、そう思うなら私の話を聞く気はないか?」
「・・・えっ?」
・・・だがカミュとて自身で言っていたがそのような状態のアニスを放っておけるような所業が出来るような鬼ではない。寧ろ黄金聖闘士において情け深い部類に入る人間である。
表情は変えないながらも手を差し伸べる情けを向けるカミュの声に、アニスは手をどけ涙を眦に浮かべながらも見上げる視線を向ける。
「だが一つ、これは言っておく。これから私が話すことは誰かにバレれば私達の立場もだが、君の立場も当然危うくなる物になる。何故危うくなるのかと言えば、君が話を聞いた後で裏切るというのであれば私は遠慮なく君をスパイだということを公表する気でいるからだ。だが話を聞かないというのであれば君の事は約束通り言わないようにしよう・・・それを踏まえて聞こう。私の話を聞くか聞かないか、どうする?」
「・・・それは・・・」
しかしそれでも冷静に事を進めるべきと、情けを向けながらも裏切った場合の処置を告げるカミュ。だが話を聞かないならそんなことはしないと言って選択の余地を与えると言ってどうするかと改めて聞くカミュに、アニスは視線をさ迷わせながら考える。
そして少ししてアニスはカミュに視線を向け・・・
「・・・聞きます、話を聞かせてください。このままだったらどうしようもないなら、貴方の話に乗りたいです・・・」
「そうか」
・・・すがるような力ない瞳で話に乗ると宣言した。その声にカミュはただ事実を受け止め、一つ頷いた。
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