まとまりを見せる全体、反感を浮かべる個

「確かに今の状況で大佐殿の行動の是非を全て問うのは難しいでしょう。ですが一部でもとっかかりさえ出来れば、現在の立場から公的に引きずり下ろすことは陛下の立場であれば然程難しい事ではありません」
「それが、タルタロス襲撃の事だというのか・・・?」
「はい。これは責任についてを正当に突き詰めても国交上の問題になり得ない、格好の事由になります。ただこれは大佐殿からすれば賊を見付けたから追ったと言えば減刑の言い分としては十分になりますので、大佐殿を完全な意味で裁くという意味には繋がらないでしょう・・・ですからこその配置場所、なのです」
「ここで配置場所だと・・・?」
そのままにジェイドをタルタロスの件で裁くと言いつつも十分な理由になり得ないからこその配置場所と改めて言うデスマスクに、話口が段階を踏みすぎている為かピオニーは怪訝な顔で声を漏らす。
「私見になりますが、もし罪の行方についてを公にして大佐殿を裁けたとしても大佐殿は心底から納得して悔い改めることはないでしょう。自分は間違っていない、相手がそれを理解していないのだと思い」
「っ・・・随分と嫌な予想をするもんだな・・・」
「承知の上で申し上げています。ですがそう言った人物だからこそ、素直に罰を与える事は罰になり得ない・・・だからこそ配置場所を変えるべきだと私は考えました」
「っ・・・だからなんだ、その配置場所を変えるとは・・・!?」
「簡単に言うなら多数の人と触れることの多い軍を率いる位置から、研究職などの人目につかない位置に大佐殿を配置するべきではと私は申し上げているのです」
「何っ・・・!?」
それで話がいつまで経っても本題に入らない様子にピオニーは焦れてきたといった声を向けるが、デスマスクがあっさりと告げた狙いに声を詰まらせた。予想してなかったと言った驚きに。
「大佐殿は確かに有能な軍人なのでしょう、陛下。戦場に出れば戦果を上げ、頭脳においても常人に比べて比類ない程の回転の良さをうかがわせる・・・ですがそれらはあくまでも人格的な意味での最善の配置とは言えなかった。少なくとも私の目から見れば」
「人格的な意味で、だと・・・?」
「はい。確かに一見すれば横柄でいたり横暴な兵士などに比べれば丁寧に見える大佐殿の態度ですが、それも自分の考えや能力に自信を持つからこその人を見下した物・・・事実、我々もそう言った大佐殿の発言と行動を受けて信頼が出来ないと感じました。そして今陛下からの話を受けて大佐殿の事について考えたのです。大佐殿は人の上に立つべき存在ではなかったのではと」
「・・・能力はあっても、人格がそれを無駄にしたと言うのか・・・」
「と言うよりは向き不向きを陛下もですが、何よりも大佐殿自身も理解していなかったからこそではと思います。兵を率いることに長けている事を、人を束ねることが出来る事とイコールで繋げてしまった・・・似て非なる物であると分からず」
「っ・・・兵を率いることと人を束ねることの違い、か・・・言いえて妙な物だが、少しの言葉の違いでここまで違うとは・・・」
そのままジェイドの人格についてを人の上に立つような物ではないと話を進めるデスマスクの言葉の中、ピオニーは自嘲気味に二つの違いについてを噛み締めるように笑う。察するにジェイドの事もそうだが自身にも投影しているのだろう、自分はジェイドを率いはしても束ねは出来ていなかったのだと。









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