まとまりを見せる全体、反感を浮かべる個

「クリムゾンから聞いていると思うが、二人が自重した行動を取らんのだ・・・」
「そしてこの数日二人の様子を見ていたが、結局前に言ったままだ・・・改善の様子は全く見受けられん・・・」
インゴベルトに公爵は二人ともに苦渋の様子でアッシュとナタリアの事についてを漏らす、立場など全く気にせず。
「カノンよ。やはりナタリアに事実を伝えるべきか?今のままでは到底言うことを聞いてくれるとは思えんのだ・・・」
「・・・この数日の間でそうすることを考えていたのですか?」
「あぁ・・・二人に言うことを聞かせるにはこれしかないのではとな・・・」
『最後の手段に手を出すことについて考えていた、か。相当に追い詰められていたようだな』
『そのようだね。それにしても親の心子知らず、と言うのはこの事を示すんだろうね。だがもっとタチが悪いのはこの二人の危惧するような事態になっても彼らは自分のせいじゃないって言いそうな所かな。周りが自分に合わせないから悪いんだってね』
そんなインゴベルトは事実を明かすことを重く口にして、ミロとアフロディーテが小宇宙の通信で会話を交わすのだがアフロディーテの言葉は辛辣で皮肉が効いていた。アッシュとナタリアに対して微塵の信頼もないと示すように。
「・・・私の考えを申し上げるなら、そうするのはまだ早いかと思われます」
「早い・・・?」
「現時点で事実を明かしたならお二方は確かに黙られるかもしれませんが、反面として時間が経てば経つほどに不満は募るばかりで人の目・・・言葉を選ばずに言うなら陛下に公爵様に夫人以外の人のいる場では、今以上にピリピリとした心理状態になりかねないかと思われます。そうなれば一層取り返しのつかない事態になるでしょう」
「むぅ・・・ではどうするべきなのだ、カノン・・・?」
カノンはその考えに対して駄目だと言う理由についてを説明し、インゴベルトは尚更に困ったように目を向ける。
「・・・今の状況で取れる手段として有効な手はお二方に一緒の場にいてもらい、あまり人目に触れるような状態にさせないことであると思われます」
「人目に触れさせないだと?」
「はい。聞くところによりますと、『ルーク様』は機嫌が悪い時がほとんどでナタリア様はその『ルーク様』と共にいることを望まれているとか。そしてお二方は共にいれば機嫌がよろしくなるとの事ですが、その時間が無くなれば離れて機嫌が悪くなるとの事・・・ならばこそ逆転の発想としてお二方が共にいる時間を増やせば機嫌の浮き沈みも差は少なくなるかと思われますが、機嫌が悪くなる時の共通点は両者以外の他の者の目がある時・・・おそらくナタリア様はともかくとしても、『ルーク様』は本人の意に沿わない言葉をかけられたならナタリア様がいようと激情を露にすることでしょう」
「・・・成程、だから二人を一緒にして人目に触れないような状況にするべきだと言うのか。下手に二人の機嫌を損ねぬ為に」
「・・・そうなりますが、これはあくまでも一時的な処置でしかありません。今の状況のままでお二方を心から納得させるように言葉を尽くしても、受け入れていただけるとは思えませんので・・・」
「・・・あくまで今の状況での最善がそれだということか・・・」
そんな姿にカノンは自身の考える案を告げるのだが苦く一時的と語るその姿に、インゴベルトもつられて表情を苦くする。アッシュとナタリアの二人をすぐに改心させる事はカノンでも出来ないのだと感じて。










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