まとまりを見せる全体、反感を浮かべる個

・・・アイオロスの提案により二組に分かれ、キムラスカとマルクトに向かう事になったカノン達。とは言ってもダアトからバチカルやグランコクマに直行する船はどちらにもないため、両国の中立地帯でありどちらにも船を出しているケセドニアまでは一緒にとなった。









「・・・道中でも話したが、おそらく再び顔を合わせる時はキムラスカにマルクトにダアトの代表者が会談をする時になるだろう。しばらく時間はかかると思うが、我慢をしてくれ」
「うん・・・分かってる・・・」
それでケセドニアに着いたカノン達はキムラスカ側とマルクト側の港が違うため、キムラスカ側の港に向かうカノンにミロにアフロディーテの三人としばしの別れの挨拶を交わしていた。と言っても寂しげなルークをカノンが慰めると言うのが正しい見方であるが。
「・・・では俺達は行くぞ、ルーク」
「・・・あぁ、じゃあまたな」
それでも分かれて行動しなければならないために改めて声をかけるカノンに、ルークも表情を改めて頷き離れていく三人の後ろ姿を見つめる。



「しかし随分と好かれた物だね、あの子に。経緯が経緯だから当然と言えば当然かもしれないが」
「・・・別に悪い気はしないが、ファブレに俺が来てから一緒にいない時間がない方が珍しいと言える程だったからな。それがティア=グランツとの間で起こった擬似超振動の時の事は数えないとしても、初めて俺と長い時間を別れるような状況になる・・・その事に不安を感じたんだろう」
「・・・成程、いきなりそういった状況になれば不安を少なからず感じるということか」
そんな視線を受けつつ歩きながらアフロディーテがカノンに微笑を浮かべながら話しかけるが、少し陰を表情に見せるその様子にミロは真剣な面持ちを浮かべる。
「とは言えアイオロス達がいるし、今までの旅でルークも成長している。大丈夫だと俺は思っている」
「・・・フッ、麗しき兄弟愛というやつかい?」
「兄弟愛か・・・サガともロクに言葉を交わせなかった俺がそのような事を言われるとはな・・・」
しかし信頼はあるとカノンが言い切る姿にアフロディーテが兄弟愛との言葉を用いてイタズラっぽく笑むのだが、そこでサガの事を思い出して遠い目を浮かべる。お世辞にも仲がいい兄弟だったとは到底言えなかった事を思い。
「交わせなかったのなら交わせばいいだろう・・・サガもお前の事を思い遠慮してこちらに来ることを避けたが、気が気でないように見受けられた。だからこの旅が終わったら存分に言葉を交わせばいい。ルークのように穏やかにな」
「穏やかに、か・・・思えば俺とサガがそのような形で会話をしたことなど幼い頃以来なかったのかもな・・・だが今ならそれも出来そうだ」
ミロはそんな様子に自信を浮かべた笑みを見せて会話を勧め、カノンもまたすぐに優しい笑みを浮かべる。かつて出来なかった事、それを出来ると自然に受け入れているというように。


















・・・そのようにしてカノンが穏やかな気持ちを抱く中、三人はバチカルに向かう船へと乗った。本当ならさっさとバチカルに直行することも出来たのだが、あまりに早く着きすぎても人の早さではないと不自然になることを考え船に乗ったという訳である。



「・・・着いたな」
・・・そして特に障害もなかった為にカノン達は時間もかかることなく、バチカルの港へと足をつけた。
「どうする?このまま城に直行するのか?」
「いや、ファブレに行き公爵に話を通して共に行く。一応俺の身分の事を考えればその方がいいだろうからな」
「そうか、じゃあそうしよう」
ミロがこれからの事について問い掛けるとファブレに寄ってからと即断するカノンにアフロディーテもすぐに頷き、三人は上の階層へと向かう。







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