神と神と崇められる存在

「先も言いましたが、彼は私に仕えていてくれていた身です。ただ別の神との戦いで一人行方知れずになりその身を案じていたのですが、こちらの世界で見付けた時には彼はやることがあると言って自分の責任を果たそうとする旨を私に示してくれました。私はそう言ったカノンの意気を知ったからこそ手助けをするために来たのです・・・自らの意志で道を切り開く、人としての力に満ちた決意を助ける為に」
「っ・・・で、では私達にはその意志がないというのですか・・・!?」
「言葉を選ばずに申し上げるなら、その通りです」
「・・・っ!」
アテナはカノンを見ながら微笑を浮かべつつ話をしていくが、話の流れに市長は意志がないと捉え伺うように視線を向けると、顔を向けてきたアテナの真剣な表情と簡潔な肯定に絶句する。
「・・・貴殿方が預言というものを神格化し、それを実行に移してきた行動。これらに意志がないとは言いません。ですが預言に記された事実が如何なものかという事を知らないとは言え、それが正しいものだと疑いもせず行動に移してきた事に私は自分の考えがあるとは思えません。言ってしまうなら、思考を放棄した行動とすら言えます。預言なら全て正しいのだから従う、というような物は最早意志とは言えません。それは・・・盲信です」
「「「「!?」」」」
・・・盲信、ハッキリと通る声でアテナから告げられた預言に対する姿勢及び考え方に対する結論に市長だけでなく教団に関わる人間達が大きく身をたじろがせた。
「・・・私は人と共に歩み、地上を守る為の神でありたいと思っています。ですが人々には神がいると私を頼って欲しくはないのです。人が人である意味を失わないように」
「・・・・・・だから、彼は貴女に仕えてはいても、意志があるから彼を助けると決めたと・・・?」
「そういうことになりますが、それと同時にこの世界に根付く問題が根深いと思っての事でもあります・・・先程に問い掛けた預言に詠まれたなら死ぬか、という問いに貴殿方が受け入れられぬ様子を見せたことが」
「っ・・・あれが・・・?」
アテナはそのまま憂うように手を胸元に置きながら話をし、市長はなんとか会話を続けようとするが預言の死の話についてを持ち出され訳がわからないといったよう声を漏らす。
「・・・重ね重ねこのような言い方をするのは心苦しくはありますが、そう言った時の貴殿方の反応から見て確信しました。もし預言の事実が今の形ではなく別の形で明らかになったとしたなら、人々はその事実を素直に受け止めれる可能性は低いだろうと」
「なっ!?何故そんなことを!?」
「都合の悪い事実・・・と言うよりは預言を貴殿方が認識するかを試させていただきました。その結果が信じられないと言った貴殿方のリアクションだったのですが・・・もし預言の中身を単に知ったなら貴殿方はそれを嘘だと断じ、繁栄が詠まれていた預言だけが本物だと拒否を返しただろうと私は見ていますが・・・どうですか?」
「・・・そ、それは・・・」
だがもしもの可能性に心外だと言ったように市長は声を大きくするが、アテナから返された根拠にすぐさま声と体を小さくしてしまう。



・・・これが地球のカルト教団とローレライ教団の大きな違い・・・都合が良くも悪くもそれを最後まで信じられる盲信を越えた狂信の域に入れない環境である。

ローレライ教団と言うよりは預言が繁栄に最終的に繋がるものだという認識だからこそとも言えるのだが、都合の悪い預言・・・言ってしまえば戦争や死を始めとしたマイナスイメージの強い預言は、教団が公にする事はまずなかった。それを公表する事は様々な思惑こそあれど、預言自体に悪いイメージを一般に植え付けかねない為に。

それが故に預言はいいことだけを詠まれた物と思われがちだが、悪いイメージを意図的に避けてきた為に悪いイメージに弱いのだ。預言がもたらす事実を受け入れがたい物となるために。









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