聖闘士と冥府の誘い

・・・ルークを迎えに来たカノン達。一応は合流を果たしたものの複雑な環境に身を置いている事もあり、早目にバチカルに戻ろうと・・・した。









「・・・申し訳ありません、ルーク様。このような事になるなら少々無理をしてでも昨日の内に辻馬車に乗り、カイツールに向かうべきでした」
「・・・気にすんな。俺も大丈夫だなんて思ってたんだ。お前だけのせいじゃない」
・・・タルタロスで自分達にあてがわれた一室の中にて、椅子に座る主に対し誠心誠意を持って頭を下げるカノンにルークは首を横に振りお前だけのせいじゃないと返す。デスマスク達はカノンの後ろに控えている。



・・・事の発端は朝だった。昨日の内にアイオロスも無事にチーグルの森から戻り、全員揃ったことでルーク達は朝早く起きて急いで辻馬車に乗ろうとしたのだが・・・そこでルーク達はマルクト軍に包囲された。

その時出てきた大佐という人物の言うことにはとある情報筋から、キムラスカの王族らしき人物が村の中にいると上がってきたのでその人物を調べに来たとの事だった。

それでやろうと思えばマルクト軍を蹴散らす事も不可能ではなかったカノン達だが、余計な争いは更なる火種を産みかねないとあえて大人しく捕まることを選んだのだ。

そして今に至る・・・



「・・・お待たせしましたね」
「・・・っ!」
「「「「・・・」」」」
・・・そんな大人しく捕まったルーク達の元に大佐であるジェイドを先頭にイオンにアニスと続けて入ってきて、最後にカノンに気絶させられていたティアが入室してきた。だがその瞳には明らかな敵意がこもっていて、ルーク及びカノン達に隠すことなく向けられている。その事にルーク達は共通してタメ息を吐くのを抑えていた。明らかに面倒きわまりないといったその馬鹿な様子に。
「彼女から話はお聞きしました、貴方はルーク=フォン=ファブレ殿でよろしいですね?」
「・・・確認が取れてるなら、別にこちらに確認を取る必要はないんじゃないのか?」
「いえいえ、念のためにですよ。王族の名を不埒にも語るような不届きものだったなら、貴方に用はありませんので」
「・・・へぇ」
そんなティアを尻目にジェイドとイオンはルークの前に座りアニスとティアはその後ろに控えると、早速とジェイドは話を切り出す。だがその切り出した話口だけで不遜な空気を醸し出す物言いにルークは軽く探りを入れて慎重深く返すが、遠慮なく嫌味を多大に含ませた中身で返され冷たく目が細まる。そしてそれはカノンも同様だった。
「・・・カノン、お前が話せ。それで俺がどうするか決める」
「かしこまりました」
そこで即座にバトンタッチをするとルークが言えば、カノンもすぐに頷く。
「おや、自ら話されないとはどう言ったおつもりでしょうか?」
「・・・自分で言うのもなんだが生憎俺はあんまり頭の回る方じゃない。自慢じゃないけどな。こういった重要な時はカノンが話を聞いてから決めることになってるから、まずはカノンを通してくれ。それからだ、話は」
「・・・成程、わかりました」
・・・記憶を失いカノンが付いて必死に勉強していたとは言え、ルークにはまだ経験及び知識の量は多くはない。そしてそれを自身で苦い程ルークは理解している。
バトンタッチに関するジェイドの追求にルークは事情を隠しつつも譲らないと姿勢を示せば、ジェイドは納得してからカノンに視線を向ける。








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