問われる神への言葉と従う者達

「・・・貴方が預言の為に従事しているからこそそう言ったことを言われることは信じられないのでしょうが、謡将の年齢を考えれば多感な頃ということに加えその事実があまりに重いこともあって何も言わないままに考えたのでしょう。そして結論として・・・貴殿方に預言の事を言っても信じないか嘘だと断じると思い、行動を起こしたのでしょう。預言を覆す為に」
「・・・それはそうでしょう。第七譜石の中身が滅びを詠んだ物だったなどと、そう言われたとて到底信じることなど出来ません・・・ヴァンはその時確かに幼かったこともありますし、ホドに第七譜石があったなどと・・・第一、ホドに第七譜石があってそれがもう消滅したなどと・・・そんなことなど、信じてたまるものか・・・!」
『・・・段々と熱を帯びてきたな、声が。その話を信じたなら第七譜石がもう誰の手にも入らない、その事実を認めたくないからだろうが・・・』
『醜い物だね。自分は手を汚しもせず人任せにしか行動しない癖に、いざ自分に不都合な事実を前にしたら理不尽な怒りを露にして否定しようとするなんて』
カノンはその様子に構わずヴァンの心情と行動について話をするが、市長は返答しつつも徐々に怒りを目に見えて浮かべていく。その姿にカミュとアフロディーテは共に通信の中で呆れを口にする、狂信者としての都合がいい考えに満ちた様子に。
『っ・・・おい、この小宇宙は・・・』
『・・・まさか、ここで来るとはな・・・』
そんな中でミロとアイオロスが声を上げるが、場にいる聖闘士は全員感じていた。今この近くに来ている小宇宙・・・それは強大であると共に、あまりにも馴染みのありすぎる攻撃的で特徴的な小宇宙だった。そんな小宇宙を放つ者は一人しかいない・・・
「そんなことなど信じたくないだと?・・・笑止!孫の事を本当の意味で見もせず、偽りの姿を疑うことなどしもしなかった者が言えることではない!」
「っ!?だ、誰だ!?」
そしてすぐに部屋の中に響く場にいない人間の声に、市長は慌てて辺りを見渡す。
「・・・誰だなどとどうでもいい、俺はただ貴様らに見せに来ただけだ・・・ヴァンの見た地獄をな!」
「なっ!?貴様、一体どこから・・・」
「受けろ、鳳凰幻魔拳を!」
「っ・・・!?」
その小宇宙の持ち主・・・一輝は入口のドアの前から小宇宙で空間をねじ曲げながら現れつつ口上を口にし、市長が言葉を言い切るのを待つことなく鳳凰幻魔拳を放ち声を断ち切った。
「・・・出てきていきなり幻魔拳かよ。それに他の奴らにまで放つなんて、何を考えてんだ?」
デスマスクは一輝に向かいその行動について言うが、幻魔拳が聖闘士を除いた一同にかけられた事について問う。そのおかげで意識のないルーク達に気を使わず普通に話しかける形で。
「言葉で説明してもあの手の輩は理解せんし、他の奴らにも必要だと思ったから放ったまでだ」
「・・・と言うことは最初からお前は私達がここに来るのを待っていたと言うのか?私達が詠師陣を連れてくるだろうということが分かった上で」
「誰を連れてくるかまでは俺の知ったことではない。ただ俺はこの街の事に人というものを知っていくにつれ、ただ悪夢を見せたところで根本的な解決にはならんと判断したからお前達を待っていた」
「・・・成程ねぇ。流石にお前さんでも腕に物を言わせときゃそれでいいなんて思わなかったって訳か」
一輝はその問いに答えカミュが自分達を待っていたのかと問うと、力押しはあまり意味がないと判断したとの返答にデスマスクも納得する。慎重を期した上で行動を起こしたのだと。
「では今彼らは君の言ったよう、謡将の体験した絶望を見ているのかい?」
「そうだ。奴の記憶に根深く残る絶望の瞬間を体験している、それがどれだけのものなのかをな」
アフロディーテは市長を含めた一同の姿を見渡しながら改めて幻魔拳の意味を確認し、一輝は肯定を返す。ヴァンの絶望を見せていると。








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