問われる神への言葉と従う者達

「・・・ちなみにアッシュにはその事は少しでもお伝えしたのですか?」
「・・・いや、現段階でそうする事は危険だと思い伝えてはいない。今のアッシュの機嫌はナタリア様がいる時とそうでない時が雲泥の差だと先程言ったが、今その事を言った上でナタリア様に自分から来ないように言えと言ったなら私がいない時に機嫌が一気に降下するのは目に見えている。そうなれば状況が一気に悪くなり、ナタリア様が悪い意味で意気込み出す可能性があり・・・事実を伝えねばならぬ事態になり得るだろう」
「・・・それも今二人が一緒にいる時間が多い為ですか・・・」
カノンはそこでまた追加の質問をし、公爵の苦い顔からの返答に状況を察する。二人が共にいることの危険性を。
「・・・分かりました。その事については我々がダアトより戻った後、事態の改善へと動くようにしたいと思います」
「すまんな、カノン・・・」
「いえ・・・それより我々が屋敷を出た後、タトリン一家を下の階層の宿に移すようにしてはいただけないでしょうか?この数日で導師達とどのような交流をしていたのかは聞いてはいませんが、導師がいないとなればアッシュがどのように思うかと言うこともありますがタトリン一家の態度次第では爆発しかねない事も有り得るかと思います。それでタトリン一家には我々がダアトで事を済ませバチカルに戻った後に帰っていただくようにしようと思っているのですが、それまでの間の宿代は私が負担致します」
「成程、全く考えられん事ではないか・・・分かった、そうするようにしよう。それと宿代はこちらが払おう。今までこちらが世話になってきたのだから、それくらいはさせてもらおう」
「ありがとうございます、公爵様」
カノンはその頼みを引き受け頷くと共にタトリン一家についての事を頼み込み、公爵はその頼みを快く引き受けるだけでなく金までも負担すると返し頭を下げた。
「・・・では私はそろそろ屋敷を出たいと思います。導師もそろそろ準備が済んだ頃でしょうから」
「うむ、分かった・・・では頼んだぞ、カノン」
そして頭を上げ出発を口にし、公爵の返答を受けた後にカノンは場を後にする。









「・・・すまない、待たせた・・・と、君は・・・」
「あはは・・・ちょっと話を聞いたんですけど、イオン様がダアトに戻るって聞いて私だけここにいるわけにはいかないかなと思って・・・」
「そうか・・・わかった、そう言うことなら歓迎しよう」
それでカノンが屋敷の外に出るとイオンと共にアニスがいて気まずげな笑みを浮かべたのだが、気にした様子もなく微笑で返す。
「では早速港に向かいましょう。ダアトに向かうには早い方がいいですから」
「・・・はい、そうしましょう」
そして出発を切り出すカノンだが了承するイオンだが、その顔は少し浮かない様子だった。









「・・・後はしばらく待つのみ、か」
「ダアトに着くまでは特に何もないだろう。ゆっくりしておいていい、と言いたいが・・・そろそろ導師が来る頃だろう」
「イオンが?」
それで一同はケセドニアに向かう船に乗り込みミロを除いたカノン達は一室に集まっているのだが、ルークの声にカノンが入口のドアを見ながら呟く。
‘コンコン’
「・・・失礼します」
「どうされましたか、導師?」
「・・・本当に来たよ」
そしてすぐにノックとともに入室してきたイオンに、ルークは軽く驚きながら答えるカノンを見つつ呟く。









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