問われる神への言葉と従う者達

「現在ナタリア様の立場はお前もよく分かっていると思うが、その立場の是非もあってナタリア様には任せられる公務と言うものが必然的に限られている。お前達の行動によりアクゼリュスには向かわず戻ってきたとは言え、他の貴族に対する体面といった事もあるからな。ただそれらの事はその性質もあって基本的に公にする事は出来ない・・・だからこの数日は事実を明かした事もあって謹慎処分を解きナタリア様を試すためにも陛下はまず軽めの公務から任せる事にした。まぁそれらに関しては別に問題はなかったらしいのだ、元々ナタリア様はそれくらいの公務はこなしていたからな・・・」
「・・・もしやその軽めの公務とした事がナタリア様の反感を買ったのでしょうか?自分はそれくらいのことはやれると」
「・・・それも、ある」
それで公爵はナタリアの今の状況と取った措置について口にしカノンは取った行動に予想を立てるのだが、それもと疲れたように返す。
「・・・そういった状況なだけに現在ナタリア様には軽い公務を終えれば時間に余裕がある所か、朝に時間を取って昼から公務を行っても十分にこなすだけの事は平気で出来る・・・そのナタリア様が取る行動は何か、お前には想像がつくだつろうカノン」
「・・・ファブレ、もっと簡単に言うならアッシュに会いに来ることでは?」
「・・・うむ、そうだ」
そのまま苦心を絞り出すかのよう前置きをして問いかけを向ける公爵にカノンが答えれば、眉間のシワを指でつまみ揉みほぐすようにしながら答える。
「今の陛下がそのような事を簡単に許すとはあまり思えませんが・・・」
「・・・あぁ。事実陛下もナタリア様に苦言を呈したそうだが、そこで意識してか知らずか・・・ナタリア様の性格では後者だろうが、弱った様子で涙ぐみながら『私がやれることがそうないなら、せめてルークの為にも動きたい』・・・そうおっしゃったそうだ」
「・・・その言葉に陛下はほだされたと、そう言うことですか」
しかしとカノンは一応の信頼をインゴベルトにあるといったように問いを向けると、情に流されたとしか捉えられない返答に若干の失望を滲ませる。
「・・・陛下にそう言った気持ちが全くなかったかと言えば嘘になるだろう。ただその上で過度のファブレへの来訪は誉められた物ではないとナタリア様に言われたそうだが、その日からファブレに来訪しなかった日はそう言われた日の一日程度しかなかったと言っていい」
「・・・それで、ナタリア様はどのように言われているのですか?」
「・・・さっき言ったような事に加えて時間がありますからいいではないか、と言ったような言葉だ・・・本当ならここで是が非でもナタリア様の事をお止めするのが正しい事だというのは分かっているが、そうすることは現状ではあまり良くない事態を招きかねないのだ」
「良くない事態とは?」
そんな厳しい言葉を受けて一応フォローは入れつつ話を進める公爵だが、カノンは良くない事態と聞いて眉を寄せる。
「今ナタリア様の担当をしている側付きの者達の迷惑もたが、アッシュの機嫌が急降下しかねない事だ。今ナタリア様を押さえ付けるとしても言うことを聞くかは怪しく、またアッシュの機嫌が分かりやすい程にナタリア様がいる時はいいのだ。他の屋敷にいる者が話しかけたならいつ怒りだしてもおかしくない態度とは打って変わってだ」
「・・・つまりは実害がないから今はあえて放っていると言うよりは、放っておかざるを得ないという状況だということですか」
「そうなるが・・・それもいつまで続くか分からんし、続けては二人の為にならんだろうというのが我らの見解だ。現にアッシュの機嫌は良くなり対応は楽になってはいるが周りの者に対する対応が良くないことには変わりはなく不満は溜まり、そうやって二人がずっといれば私にシュザンヌに陛下以外の者では二人の言葉は嫌でも聞かねばならぬ状態になる可能性が高くなる・・・そうなれば二人に厳しい事を言った意味が無くなってしまうのだ」
「成程・・・その対応について陛下は我々に話をしたいということですか」
「そういうことになる・・・ファブレを辞めたお前にこう言った事を話すのは筋違いだとは思うがな・・・」
公爵はその事態についての状態と将来起こり得る事の危険性について話し、カノンが理解する姿に苦い表情を浮かべる。頼るべき相手ではない相手を頼らねばならぬ事に。








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