問われる神への言葉と従う者達

『・・・随分とまた厳しい推測を口にするものだね、デスマスク』
『単に前に少し考えてみて話に出たから言ってみただけだよ。謡将殿の妹が預言の事を知ってたならどういう風になってたのかっていう俺の考えをな』
『あぁ・・・あの女の事か。その推測を当てはめてみれば確かにそう言ったことになる可能は高いだろうな』
アフロディーテはその中で小宇宙の通信でデスマスクに声をかけると、ティアの事が出てきたことに納得する。



・・・もし仮にデスマスクの言ったように幼い頃から徹頭徹尾預言を大事にした上で預言を知らされていたなら、ティアはまず確実に預言の達成だけが第一の人格になっていただろう。それこそどんな犠牲などいとわぬようにだ。

そしてそんなティアだったなら元々の迂闊さも相まって、それまでの旅で預言に関することを口走っていた可能性はかなり高かったのはまず間違いないと見ていいだろう。それこそティアの思い通りにならなければならない程に確率が高くなる形でだ。そうなっていたらカノン達の旅の過程は大きく変わっていたろう。

ただそれ以前の可能性として言うならティアがこの年まで生きていたのか、という可能性が出てくるかどうかも怪しかった。恐らく妹可愛さに目を曇らせていたヴァンとて元々の目的からそういった思考回路のティアを放っておくとは考えにくいし、何よりティアがそんなヴァンを二年も対策を取らずにいることの方が有り得ないと言えた。そのティアには肉親の情は確かにあるだろうが、預言の達成を至上とする為にヴァンを排除にかかるだろうという可能性が高い為に・・・そしてそうなれば確実に兄か妹かどちらかが排除される流れになるだろうが、そこは人生経験の差によりまずヴァンに軍配が上がる可能性が高かっただろう。

・・・そういった可能性を考えるとティアは預言達成の為のユリアシティの住民としてはある意味模範的な人間になっていただろう。預言の犠牲になる人間の事など全く気にすることのない人間として。



「・・・まぁ私の推測はあくまで確信のない推測です。その真偽については置いておき、今は歳を取った人々くらいしか市長以外に預言の全容を知る者はいないと思っておいて構わないでしょう」
「・・・うむ、そうだな。それならまだいいとは思うが・・・問題はその市長にいるかも分からぬまだ預言の事を知る者だ。モースはともかくとしてもその者達がどう動くかでまた妙な方向に状況が行きかねない可能性がある。預言を実行せんとしてまた動きかねん可能性が・・・」
「心配はいりません。この場での話し合いが終わり次第導師がよろしければになります我々はダアトにユリアシティへと向かいたいと思っています」
「何・・・?」
そんな通信を感じさせないようにデスマスクが改めて声を上げると公爵はその後の可能性について危惧の声を上げるが、カノンが自分達が解決に動くと言い出した事に眉を寄せる。
「元々我々がこのような場を設けていただくように言い出した理由の一つには導師にそろそろダアトに戻っていただかなくてはいけない時期に差し掛かってきていると見たからです。そしてその上で大詠師の指示に手足として動いていると見せる為に謡将の手の者がない今が導師にダアトに戻っていただく好機であると同時に、ユリアシティの者に対して手を打つ好機でもあるのです。これ以上悲劇を生む預言を実行に移させないようにする好機でも。そして下手に時間を伸ばせば伸ばすほどユリアシティの手の者から何か手を打たれる可能性が高くなりますので、そろそろこちらが動かねばならないのです」
「・・・確かにそうだとは思うが、導師はどう思うのだ?」
「・・・私も、そうした方がいいと思いました」
更にカノンがいかに今動くのかが重要かと言うと公爵が納得しつつイオンに話を振れば、そっと重く首を縦に振った。










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