双子の片割れの焔への従事
・・・そんなカノンに当然いい表情で返せない公爵は、不法侵入者が何を言っていると言いカノンを見張りつきで牢ではなく屋敷の一室に放り込んだ。その処置には妥当だなと思ったカノンはいざとなればアナザーディメンションなりゴールデントライアングルなりを使う要領で異次元空間を開いて逃げればいいかと思っていたのだが(一輝にはサガの技ばかりを使う訳ではないとゴールデントライアングルを使ったが、別にアナザーディメンションをカノンが使えない訳はない。というよりゴールデントライアングルは海界にいる間にサガに対する意地であったり、北大西洋に関する地域らしい技をという事で身に付けた技である)、その部屋に備え付けてあった鏡を見てカノンは声を上げずに驚いていた。何せその姿はサガにスニオン岬に放り込まれた時の年齢だったのだから。
だが一応囚われの身であり自分がこうなった理由も経緯も知らない周りに知られてはいけないと声を上げなかったが、その事実は悶々とカノンの中で疑問として渦巻いていた。
そんな状態で一夜が明けた訳だが、状況は一変してカノンはすぐにルークの前に公爵の命令で引き連れられることとなった。その時ルークはまた涙を溢れさせカノンに飛び付いてきたのだが、そんな光景を見ながら公爵は疲れたように言った。『お前がいないと気付いてからルークが泣き止まん・・・』と。自分が何故そこまで好かれているのか正直わからないカノンだったが、それはそれでありがたかった。ルークと一緒にいようと思ったのもある上、ルークからこれ以上にないほど求められているのだから。
・・・そして再度公爵に深々と頭を下げた結果、特例で見張りつきとは言え屋敷に置いてもらうことに成功した・・・
「・・・よし、今日の課題終わったぞカノン」
「・・・はい、確かに。ではお茶にしましょう。すぐにお持ちしますので少々お待ちください・・・と、少し失礼」
・・・テスト用紙を手に取り少し嬉しそうにカノンに向けるルーク。そのテスト用紙を受け取りさっと目を通し茶の時間にと行こうとしかけたところ、カノンは何かにふと気付いたよう断りを入れ部屋の窓の方へと向かう。
「どうかしたのか、カノン?」
「・・・いえ、少し鳥の羽ばたきの音のような物が聞こえましたので様子を見たのですが何もございませんでした。お気になされないでください」
「・・・なんだ鳥か」
そんな突然の行動に眉を寄せるルークだったが鳥の気配と言われ興味を無くす。だがカノンは鳥の気配を感じて窓枠に近付いた訳ではない・・・むしろ鳥などより厄介なモノへ向けての警戒であった。ただカノンはそれを今の主へと悟らせないくらいには気を使って行動したに過ぎない。
・・・このファブレ邸でかなり異例な形でだが働く事が決定したカノンはそれこそ身を粉にして働く気概で、懸命に仕事に従事してきた。ただ元々の資質からどんな仕事でも器用に高いレベルでこなせる上、アテナに忠誠を誓うようになってからは忠誠心を捧げるべきと見た相手には比類なき忠誠心を向けるカノンに対して、好意の視線が向けられる時間はそうかからなかった。特に女性陣に関してはその全てが高いレベルで端正に整えられた容姿に、憧憬の念さえ浮かんでいた。
程なくして見張りの目がなくなったカノンはルークが一番屋敷でなついている事もあり、特別な用事がない時はルーク専属の教育係兼執事としての役割を任せられる事となった。
だがそんな破格の出世を遂げたとてカノンは調子に乗らなかった。いや、正確には乗れるはずもなかった。何故ならそうやって驕り高ぶる事が今まで早いスピードで築き上げてきた信頼と呼ぶ物を、一気にまた元のように塵芥にしかねないと考えたからだ。時間を特に使わず得られた物は総じて同じよう、崩れやすいと知っていた為に。
・・・故にカノンは慎重を期する為にも下手なことは言えず、ただじっと人知れずさりげに牽制をかけてきた。ルークの命を脅かしかねない、ガイという存在から守るために・・・
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だが一応囚われの身であり自分がこうなった理由も経緯も知らない周りに知られてはいけないと声を上げなかったが、その事実は悶々とカノンの中で疑問として渦巻いていた。
そんな状態で一夜が明けた訳だが、状況は一変してカノンはすぐにルークの前に公爵の命令で引き連れられることとなった。その時ルークはまた涙を溢れさせカノンに飛び付いてきたのだが、そんな光景を見ながら公爵は疲れたように言った。『お前がいないと気付いてからルークが泣き止まん・・・』と。自分が何故そこまで好かれているのか正直わからないカノンだったが、それはそれでありがたかった。ルークと一緒にいようと思ったのもある上、ルークからこれ以上にないほど求められているのだから。
・・・そして再度公爵に深々と頭を下げた結果、特例で見張りつきとは言え屋敷に置いてもらうことに成功した・・・
「・・・よし、今日の課題終わったぞカノン」
「・・・はい、確かに。ではお茶にしましょう。すぐにお持ちしますので少々お待ちください・・・と、少し失礼」
・・・テスト用紙を手に取り少し嬉しそうにカノンに向けるルーク。そのテスト用紙を受け取りさっと目を通し茶の時間にと行こうとしかけたところ、カノンは何かにふと気付いたよう断りを入れ部屋の窓の方へと向かう。
「どうかしたのか、カノン?」
「・・・いえ、少し鳥の羽ばたきの音のような物が聞こえましたので様子を見たのですが何もございませんでした。お気になされないでください」
「・・・なんだ鳥か」
そんな突然の行動に眉を寄せるルークだったが鳥の気配と言われ興味を無くす。だがカノンは鳥の気配を感じて窓枠に近付いた訳ではない・・・むしろ鳥などより厄介なモノへ向けての警戒であった。ただカノンはそれを今の主へと悟らせないくらいには気を使って行動したに過ぎない。
・・・このファブレ邸でかなり異例な形でだが働く事が決定したカノンはそれこそ身を粉にして働く気概で、懸命に仕事に従事してきた。ただ元々の資質からどんな仕事でも器用に高いレベルでこなせる上、アテナに忠誠を誓うようになってからは忠誠心を捧げるべきと見た相手には比類なき忠誠心を向けるカノンに対して、好意の視線が向けられる時間はそうかからなかった。特に女性陣に関してはその全てが高いレベルで端正に整えられた容姿に、憧憬の念さえ浮かんでいた。
程なくして見張りの目がなくなったカノンはルークが一番屋敷でなついている事もあり、特別な用事がない時はルーク専属の教育係兼執事としての役割を任せられる事となった。
だがそんな破格の出世を遂げたとてカノンは調子に乗らなかった。いや、正確には乗れるはずもなかった。何故ならそうやって驕り高ぶる事が今まで早いスピードで築き上げてきた信頼と呼ぶ物を、一気にまた元のように塵芥にしかねないと考えたからだ。時間を特に使わず得られた物は総じて同じよう、崩れやすいと知っていた為に。
・・・故にカノンは慎重を期する為にも下手なことは言えず、ただじっと人知れずさりげに牽制をかけてきた。ルークの命を脅かしかねない、ガイという存在から守るために・・・
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