動く世界に聖闘士達

「・・・陛下、よろしいですか?」
「・・・あぁ、何だ?」
そんなピオニーに今度はアイオロスが声を上げ、ピオニーは落としていた顔を上げ視線を向ける。
「陛下は今後悔をされているのかもしれませんが、それを引きずるべきではないと思われます。もっとも、今陛下に厳しい言葉を向けた我々が言うべきではないと思いますが・・・」
「・・・いや、いい。それは俺が望んだことだし、お前の言うように俺も気を取り直した上で事に挑むべきだと思っているんだが・・・正直、今更どうしていいものかという気持ちになっているんだ。ジェイドとどう接するべきかとな・・・」
「成程・・・まずは一つ一つ決めてはいかがでしょうか?」
「一つ一つ?」
アイオロスは助言を送りつつ無礼を謝るとピオニーは首を横に振るのだが、まだ晴れ晴れとしない顔を見て一つ一つと言う。
「本来なら大佐の事はすぐに解決したいのでしょう、陛下も。ですが今の陛下は心が乱れて決意を固めるのに時間がかかるでしょう。その様子を見る限りでは」
「・・・認めたくはないがな」
「ですから一つ一つ段階を踏んではいかがかと申し上げています。大佐の事は今すぐ一日で全てを決めなければならないような事態にはないはずです。それに自分一人で決めなければならないような事でも」
「自分一人じゃなくてもとは・・・」
「大佐の事を一人で決めねばならないという理由はない、という事です・・・陛下がこのような形で我々を招いたのは重臣を巻き込むのではなく自分一人で決めるためでしょうが、一人で抱え込む事はないはずです。陛下には信頼すべき人物は大佐だけでなく他の人々もいるはずですから、そちらにも話をされた方がよろしいかと思われます。その方が気持ちを整理するという意味でも、客観的な視点から見るという意味でも効果的でしょうからね」
「誰かに話を、か・・・確かにそうだな。現に今のお前達の話を聞いて、俺も悩みを少なからず発散出来たのがあるから、それも効果的なのかもな・・・」
それでそう言った理由に加えて誰かに話した方がいいと穏やかな笑みを浮かべながらアイオロスが言うと、ピオニーはブツブツと考え込むように言葉を漏らしていく。
『・・・改めて思うが、意外と強かな男だな。アイオロスは』
『まぁそこんとこは教皇に選ばれるだけはあるからな。サガとはまた別の食わせ者だぜ』
カノンとデスマスクはそんな様子に通信で会話を交わす、アイオロスの強かさについて。



・・・何故カノンがそのような事を言うのかについてだが、アイオロスが誘導する話の中身がピオニーにとって厳しい言葉は使ってはいないのに結論がジェイドにとってよくないようにしようとしているからだ。

おそらくピオニーに直接ジェイドを排除させるように誘導する言葉を出したなら受け入れこそするだろうが、一人思い悩んだ上でかなり時間をかけるだろうし精神的な負担はかなりのものであると想像出来る・・・しかし周りにその判断を共用するよう委ねる事が出来るなら話は大分変わってくる。

まず言うならジェイドと共に旅をしてきて、デスマスクを筆頭にしてジェイドの事を信頼出来ない人間として見ているのだがそれは他のマルクト所属の軍人も同じと見ていた。特にセントビナーのグレン将軍のジェイドに対する気持ちは露骨だとも・・・そういった露骨な態度を出す人物がいるなら感性はそこまで違った人間はいないことはないしグランコクマ内にもそう言った人物はいる可能性は高いと、そうアイオロスは感じていたからこそ周りを巻き込もうとしているのだ。そう言った人物がいるならジェイドを排除するように動いてくれるのではないかと。

ただそれでもジェイドを擁護しようとする人物はいるかもしれないが、ピオニーの人物像からしてジェイドに対する責任感を感じて行動を起こさない事は有り得ないだろう。それにグレン将軍のような人物がグランコクマ内部に全くいないことは有り得ない・・・そう言ったことを見越した上でイメージを悪くすることなく話をしていくアイオロスは確かに強かであり、見かけ通りの好人物と言うだけでない事を示していた。










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