動く世界に聖闘士達

「どういう事だ、それは?」
「陛下が昔からの関係性を離さず、それを今も引きずっている事が大佐の甘えを生んでいるのだということですよ。同時に陛下自身にもです」
「俺にもだと・・・?」
たまらず聞き返すピオニーにデスマスクは平然と甘えが両者にあると答え、いぶかしげな表情へと変える。
「言ってみれば単純な事です。陛下は昔からの幼なじみである大佐の事を信頼し、大佐もまた陛下の事を信頼しているのでしょう。幼なじみという事から気心の知れた間柄という事で・・・そしてそういった関係が続けば余程上っ面の関係でなければ触れても問題がない場所と触れたら怒りを覚える場所という物を把握する事が出来ますが、それを知るが故に大半の人は避けるのですよ。相手の本気の怒りを買うようなことを・・・ですがそうする内に知らず知らずその事実をない物とし、触れないようにしようとするために忘却を呼び起こしやすくなるんですよ。そういった人物であったという事実をね」
「・・・っ!・・・まさかお前は、俺がジェイドがどういう人間だったのかという事を忘れていたというのか・・・!?」
「はい、そう申し上げています」
デスマスクはもって回った言い回しで遠大に話を進め、ピオニーはその中身に言いたいことを察し愕然と目を見開いた。ジェイドから目を背けていたと言われていると気付き。
「陛下達にとってケテルブルクでの日々は心地よい物だったのでしょう・・・だからこそ幼なじみという間柄に心を許し、接してきた。ですがその心の内にあるネビリムという人物への気持ちにフォミクリー技術という物には互いに触れようとせず、そのまま互いの良いところだけを見るようになっていった」
「それが・・・甘えだというのか・・・?」
「少なくとも私はそう見ています・・・確かに大佐は有能ではあるのでしょうが万能、ましてや全知全能の存在ではありません。しかし陛下は我々に話を求めました・・・まるで大佐が合っていて、我々の方が間違っていてほしいと言わんばかりの反応を見せる形でです」
「そっ、それは・・・!」
「否定が出来ないことを=で全て繋げる事が出来るとは言わずとも、そういった気持ちが少なからずあったのは事実かと思われますが・・・違いますか、陛下?」
「・・・・・・あぁ、そうだ。どこかで俺はジェイドが間違えるわけなんてない、あいつは天才なんだからと・・・そう思っていた・・・」
そのまま話を進めながら心を見透かすように発言していくデスマスクにピオニーは次第に気持ちを見るからに落ち込ませていき、最後には暗くうなだれるようにしながら肯定を返した。
「だから甘えと私は言ったのですよ。確かに幼なじみという立場は陛下にとって特別な物ではあるでしょう・・・ですが君臣の間柄の中でそれを優先してしまった事はあまり感心出来る事ではないと私は思いました」
「・・・確かに、俺はお前の言う通り甘えていた・・・いつからか俺はジェイドなら俺の言うことを余すところなく汲み取り、動いてくれる物だと勝手に思っていた。そしてその皮肉混じりの言葉があいつらしいと・・・だが今ならはっきりと言える。俺はジェイドのあの姿を全てと思ってただ盲目に信じてしまっていた。その上で俺は皇帝としても、あいつの幼なじみとしても甘えてしまっていた・・・だがそれは過ちだった・・・俺はあいつの事を本当の意味で見ることを止めていたんだな・・・」
その姿を見て尚も厳しい言葉をぶつけるデスマスクにピオニーはうつむいたまま自責の念に駆られるように言葉を絞り出す・・・相当にデスマスクから告げられた言葉はピオニーに堪えたようだ。









19/24ページ
スキ