動く世界に聖闘士達

「む・・・あれは・・・」
「ん・・・あれはジェイドに、ディスト・・・?」
そんな三人だがカミュがある光景を前にして凍気を消しながら視線を別に向けると、その先にいたジェイドとディストにルークも気付く。
「何を話してるんだ・・・?」
「・・・どうやら何か言い争いをしているようだな、あの様子から見て」
「あの二人はここが同郷だと言っていたが、何かあったのか?」
遠巻きに様子を見る三人は二人の様子がどこか険悪な感じだと感じ、眉を寄せる。
「・・・あっ、ジェイドがディストから離れた・・・ディストもそれでどっか行った・・・」
「・・・どうする、カノン?何があったか、聞くか?」
「・・・いや、別にいい。ここで自由行動にするとした以上一々奴らに介入しなければならない理由はないし、あの二人なら共謀して何か良からぬ企みをしているというわけではないだろう。現に険悪な空気になっていたのだからな・・・まぁ無視しておいて構わんだろう」
「そうか」
そんな二人が分かれる様子を見てどうするかとカミュが聞くが、カノンは触れる必要はないと言ったことに一言頷く。












・・・それで時間も夜になり宿に戻ったカノン達はジェイド達に触れることなく一夜を過ごした。そして特に問題もなく一同が揃った為にケテルブルクを出て港に着き、船に乗った。ジェイドにディストの間で微妙な空気があったこと以外に変わった事もないまま。



「・・・何か言い争いをしてたのか、あの二人が・・・」
「どうした、アイオロス?何かあったのか?」
そして船室の中の一室でその時の事を話したカノンとルークなのだが、アイオロスが眉間にシワを寄せる姿にどうしたのかとカノンが問う。
「いや、俺も実はあの二人が一緒にいるところを見たのだがその時にはもう一人女性の姿があったんだ。それで三人は険悪と言った空気もなく分かれていったんだが、後でその様子を見ていた住民に話を聞いてみたらその女性はあの大佐の妹でケテルブルクの代表だとのことだ」
「何?そうなのか?」
「あぁ。とはいってもケテルブルク内での評価としては品行方正で人当たりがよく、街の誰もが認める所の人格者だそうだ。現に俺も会ってみて話をしたが、大佐のような遠回しな嫌味など言わない人柄だった」
「そうか・・・」
そこからアイオロスが自分も二人を見たことに加え場にいた女性と話したと言うとカノンは頷くが、敵でもない人間には寛容なアイオロスにまでナチュラルに嫌味と言われる辺りジェイドの評価は一行の中で酷く低い物と言えた。
「それでその女性・・・ネフリーという名なのだが、その女性と話をした上で街の人に話をしていって分かったのだがその三人に加えて現マルクトの皇帝のピオニー陛下は同じ人物・・・名前はネビリムと言うのだそうだが、そのネビリムという人物の開く私塾で同じ時を過ごした幼馴染みだということだ」
「っ・・・皇帝陛下と幼馴染みだと・・・?」
「・・・この辺りはこの世界で長く暮らすお前の方が詳しいだろうが、グランコクマでの権力争いから遠ざけられてケテルブルクに飛ばされた事からだろう」
「っ・・・結果としてそれで命と共に、皇帝陛下の地位が舞い降りてきたという事件の事か・・・」
更にそのネフリーという女性からピオニーというマルクトの皇帝の名前があったことにカノンは怪訝そうに表情を変えるが、アイオロスがあまり心地よい物ではないと上げた話にルークも一緒につられて表情を苦く歪める・・・現在のマルクトの皇帝がピオニーなのは先代の皇帝の跡目を争った王族達が互いに殺しあった上で、ピオニー以外に王族が死んで誰もいなくなった為である。そしてその事はおおっぴらに言葉にされることはないし批難される事もない・・・王族同士血みどろの殺しあいが起きたことはそれ以前にもあるためでもあるが、マルクトはピオニー以外にもう王族の血を引く者がいないことから唯一生き残っている事を否定するようなことをすれば騒ぎになることは明白であった為に・・・だがそれでも起こった悲劇の中身は気持ちのいいものでもないし、歴史の勉強の一端で知識として受け入れていたカノンとルークからすればこんな形でそんな事が関わってくるとは思っていなかったのだ。







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