動く世界に聖闘士達

「では私は屋敷に戻る・・・後はまた頼んだぞ」
「はい、かしこまりました」
話もまとまったことで公爵はカノンに背を向け屋敷の方に向かい、声を受ける中でアッシュを手招きして慌ててその後に付いてこさせる。
「・・・どのような話をされていたのですか?」
「・・・マルクトに行った後での行動指針についてだ。これよりどうするべきかとの話をされたのだが、マルクトに行った後にまたバチカルに戻ってきてからになったのだ」
「ほう・・・随分とあっさり話されるのですね。二人で内密に話されたことをまた」
「その話の中身をアッシュに聞かれては自分がやると言い出しかねないからだ。今のアッシュの立場はあまりいいものとは言えんから、自分が手柄を立ててやると意気込んでこちらに付いてくるとな・・・その点で貴方に話したところで大した問題はないと思ったから今話したに過ぎん」
「そうですか・・・」
そこにジェイドがカノンへと近付いて探るような視線と共に話の中身を伺ってくるが、さらりと吐かれる真実混じりの嘘にそれ以上の追求をジェイドはせずに終わる・・・これはジェイドからしてアッシュに妙な形ででしゃばられるのは避けたいからこその反応なのだが、それを見越した上でそう言い切るカノンは流石に役者が違っていた。
「では宿に戻るぞ。グランコクマに行くとなった以上デスマスク達との合流しなければならないからな」
「・・・えぇ、そうしますか」
それですぐに話を出立の方へと変えるカノンにジェイドも頷き、二人は下の階層へと向かう・・・












・・・それで宿に行きデスマスク達と合流した一同は港に行って船に乗り、一路ケセドニアに向かう。バチカルからグランコクマへと直航する航路は無いため、まずはケセドニアを経由して向かう為に。



「・・・グランコクマに行くのにはケテルブルクを経由して船に乗る必要があるのか・・・」
「あぁ、地形上直通の船という物を出すにはケテルブルク以外は距離が遠すぎて不便なのでな。海路ではそうやって行くくらいしか手段はない。個人で船を所有して向かうなら話は別だろうがな」
「そうなんだ・・・」
そして船室の中の一室で、ルークはカノンに机の上に広げた地図を前に問い掛ける。だがその口調は以前のように主人と従者といった物ではなく、個人と個人といった物になっていた。
「今頃はムウ達もグランコクマにいるかな・・・」
「多分そうだと思うぜ。そうでなきゃセントビナー辺りで救助活動に勤しんでるって所だろうな・・・まぁあいつらなら救助活動ももう終わってることだろうし、そろそろこっちに合流してもらいてぇ所なんだがな」
「合流?どうして合流したいんだ?」
「ま、こっちの都合ってやつだよ。今更って気もするがな」
それでルークはムウ達について漏らし、その声に答えたのは同じ部屋にいたデスマスクだがおどけたように肩を上げる。
「お前がカノンから聖闘士の事について聞いたってのを承知の上で言うが、俺ら黄金聖闘士ってのは十二人しかいねぇ最高のランクの人間だ。だがこのオールドラントって世界にはその十二人の内、カノンは別としても七人いんだ。そんでこれは昨日の事になるが、アテナがこの世界に来るって話が出てきた」
「えっ・・・アテナって神様なんだろ?そんな簡単にこっちの世界に来ていいのか?」
「まぁ俺も随分とフットワークの軽い神様だと思っちゃいるし、カノンに協力はありがたく受け入れろって言ったが、流石にアテナ直々にこっちに来るってなるとは思ってなかったんだよ。んでんな状況なもんだからアテナの事だから星矢に紫龍達を連れてくるかもしれねぇが、本来アテナが護衛として置かなきゃなんねぇ聖闘士ってのは黄金が普通だ。そう言ったことを考えりゃ黄金からまた一人か二人は最低でもつけなきゃなんねぇだろうが、そうなりゃ聖域には黄金が多数いねぇ事に加えてアテナまでがいなくなんだ。黄金だけならまだいいが、アテナがこっちに来るってんなら流石に向こうの黄金の数をこれ以上減らすわけにはいかねぇんだよ。聖域の為にもな」
「そうなんだ・・・」
・・・デスマスクも聖域の一員で、ある程度の分別はある。
いかにデスマスクからアテナが来ることについて考えているのかとの声を受け、ルークもしみじみと声を上げた。反対ではなく、その想いの在り方に感じ入る形で。






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