動く世界に聖闘士達

「ではカノンよ。このままそなたには行動してもらいたいのだが・・・頼めるか?」
「無論です」
「そうか・・・ならこのまま少し待っていてくれ。今からマルクトへ渡す手紙に書簡を書くのでな」
「かしこまりました」
インゴベルトはカノンにそのままの行動をするかを確認した後、部屋にある机へと向かう。



「・・・待たせたな、これが手紙と書簡だ。では早速で悪いが、グランコクマへと出立してくれるか?」
「はい、ピオニー陛下よりの返事をいただけたならすぐに戻って参りたいと思います。それと謡将達の身柄に関してはまだどうするべきかとの結論が出ていませんので、一先ずはまだ我々と共に連れていこうかと思います」
「うむ、分かった・・・ではな」
「はい、失礼します」
数分後、手紙と書簡を書き終えカノンに手渡すインゴベルト。それでいくつか言葉を交わした後、カノン達は部屋を後にしていく。






「・・・さて、後はお前達に任せるだけだが・・・ルーク、お前は屋敷に戻れ。これからの旅にお前は付いていく必要は無いこともあるが、お前も屋敷での行動に慣れてもらわねばならぬのでな」
「・・・はい、分かりました」
それで城を出て屋敷の前で公爵が立ち止まる中、アッシュの事を『ルーク』と呼んだ上で有無を言わさぬように命を下せば当人は不満を盛大に滲ませながら頷く。
「・・・後カノン、少し話したい事がある。お前だけこっちに来てくれ」
「はっ」
そこから公爵が少し距離を離すように天空客車側に移動しながら来るように言えば、カノンもすぐに従い後を追う。
「・・・どうされましたか?」
「・・・導師の事についてだ」
「・・・大詠師があのようなことになったため、今後どうすべきかと考えておられるのですね?」
「・・・その通りだ」
それで普通に話をしても聞こえない程の位置に来て小声でカノンが話し掛けると、公爵がイオンの事を切り出したことにすぐにその理由について当たりをつける。その予想に公爵は複雑そうに顔を歪める。
「おそらく現状で導師達をダアトに帰したとしても、大きな問題が起きる可能性はそうはないとは思う。モースはいつ元に戻るか、正直分からぬからな・・・だがそれでもモースの一派が導師の事をただてぐすね引いて待つとも思えん」
「そうですね・・・大詠師が首謀者であるならその下には自身の意志を代行出来る者が必要になりますし、表向きは大詠師に従っていた謡将達だけがそうとは限らないですからね」
「かといってだ・・・ファブレにずっと導師を置いておくことも少し難しくなりつつある・・・アッシュが戻ってきた事でな」
「・・・屋敷の中という閉鎖された環境上、全く顔を合わせずに済むという事態は考えられませんね。そして導師の姿を見たアッシュがどのような事を言うか予想が出来ないこともまた悩みの種であると・・・」
「・・・一応導師達にアッシュには互いに口止めをして過度の接触を避けるようにするつもりではいるが、それもどこまで続くか分からんのだ・・・どちらも共に自分を抑えられるか不安でな・・・」
そのまま語るイオンの身柄についての不安に加え、屋敷内でのアッシュとの顔合わせに際しての不安。その公爵の懸念にカノンも理解を示すが、ナチュラルに会話を交わす中で二人の口から『ルーク』の名ではなくアッシュと言われたアッシュ・・・この事実が未だカノンだけでなく公爵にまでもがアッシュを『ルーク』として認めるのはという気持ちがあることを示していた。
「・・・その件に関しましては我々がバチカルに戻ってくるまで何とか両者を抑えておいてはいただけないでしょうか?今は導師は我々の意向に従い行動してはくれていますが、流石にこれ以上はファブレにずっといてもらうのにも限界があります。それに今後の方針を決めるという意味でもマルクトとの和平が無事に済んだとの区切りをつけたと導師にも分かってもらった上で話し合い、対処するべきかと思います」
「・・・うむ、それまでなら何とかなるであろうしそれ以降の事は流石に導師を蔑ろには出来んしな。分かった、それまで導師達は私が抑えておこう」
「ありがとうございます」
それでカノンは一先ずはマルクトから帰るまではと言えば公爵も納得し協力の旨を明かし、カノンは頭を下げる。







5/24ページ
スキ