「・・・では私から逆に聞こう、ジェイド＝カーティスよ。現時点でカノン達以上に事態の解決に適した人間が他にいるというのか？」
「・・・それは・・・」
だがそこに公爵が静かに問い掛けた中身にジェイドは言葉を濁す。否定をしようにも現状で他の誰かをパッと思い浮かべられなかった為に。
「・・・お前の言うことは分からぬ訳ではない。確かに今のカノン達の立場を考えるなら誰か国に属する者が舵を取り、以降の事態に取り組むのが外面的に正しい処置ではあるのだろう・・・だが思い返してみよ。アッシュの件から始まりこれまでの問題について対処してきたのはカノン達だということは否定出来ないだろう？」
「それは、そうですが・・・」
「不満そうだな。お前が何を思ってそう言っているのかは知らんが、カノン達の立場が不確かな物だと言うのが気に食わぬと言うのなら・・・陛下、カノン達の身分は私預かりの物としてこれからもカノン達に活動させてはいただけないでしょうか？」
「何・・・？」
すかさず公爵が前置きをした上でカノン達の行動の功績について話すがまだ納得しない様子のジェイドに、インゴベルトへと向き直りカノン達の立場を自分預かり・・・その名を貸し、責任を自分が持つから活動させてほしいと言った。
「クリムゾン・・・お前はそこまでするというのか・・・？」
「そうです、父上！何もこんな奴らにそのようなことをさせる必要などないでしょう！」
「お前がここに戻ってきたのは誰の事があってのものであり、そしてそれがなければお前がここに戻ってきたのか・・・それを分かって言っているのか、お前は？」
「っ・・・うっ・・・」
インゴベルトが本気かと疑うように声を向けアッシュがすかさず反対だと言わんばかりに声を上げるが、公爵から冷たい視線を向けられた上で返してきた言葉にすぐさま口ごもる。カノン達が行動を起こさねばまずキムラスカに戻ってくることはなかったと、アッシュ自身その事を自身で理解していた為に。
「・・・話を戻しますが、私は本気です。おそらくカノン達が行動を起こさねば預言通りに世界が滅びていたか、もしくはヴァンの目論見通りのやり方で世界は混迷に陥って相当な目にあっていたでしょう・・・何も知らないままに」
「うっ・・・それは・・・」
「しかしカノン達はそれらの問題に向き合ってきた上で我々と共に問題を解決しようとしてきました。一歩間違えば自分達が反逆者として見られかねない状況でです・・・今この国にてカノン達ほど滅私奉公出来る存在という者はいないでしょう。他の者では今から事実を知らされたならどうしていいものかと戸惑うばかりか、下手をすれば国ばかりか世界を揺るがす事実を手に入れたと増長までするやもしれない者ばかりでしょう」
「っ・・・うむ、確かにそう言った事を考えればそのままカノン達に以降も活動してもらう方がいいのかもしれぬな・・・」
「はい・・・ちなみにカノン、お前はどのようにしたいと思っている？」
「陛下に公爵様がお許しになるならこのまま事態が解決するまで動きたいと思っています。無論旅の最中で知り得た重要な事は漏らしはしませんし、事が済めば我々は潔く身を引かせていただきます。ルーク様と共に表舞台に出ることのないように」
「そうか・・・陛下、カノンはこのように申し上げていますがいかがされますか？」
「むぅ・・・」
そんなアッシュを一瞥した後に真摯に公爵は話を進めていき、話を振られたカノンも依然変わらぬ執事然とした様子で頭を下げる姿を受けてからどうするかと問い掛けるとインゴベルトは考えるようにうなり声を上げる。
「・・・分かった、クリムゾンの言う通りにしよう。下手な者に後を任せるよりはカノン達にそのまま任せた方が良さそうだからな」
「ありがとうございます、陛下」
「・・・っ」
そしてインゴベルトが出した結論は了承で、頷いたその姿に公爵が頭を下げるがジェイドはわかりにくいが苛立たしげに目を細めていた。









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