双子の片割れと三人の聖闘士の介入

・・・そして程なくしてカノン達が宿に戻り、カミュは情報交換を始める。



「・・・大佐か。厄介だな、村の代表の所にマルクト軍の大佐が来ているとは聞いたが・・・」
「現状でこちらに来る可能性は低いですが、その目的が何かと向こうにルーク様の情報が伝わるかどうかで話は変わってくるでしょう」
「そうだな・・・明日の朝早くには出れるよう辻馬車の業者を捕まえ交渉はしてきたが、それまで奴らに見つからん事を祈るのみだな」
先程起こった事を互いに報告したあとに残ったのは、やはりイオンの言った大佐の件。
アイオロスの分の席が空いた所で目立たないようにするためルークの隣に座ったカノンの苦い顔に、カミュの可能性を告げる声は更にその表情を苦くさせた。マルクトとダアトが組んで何をするかわからないが故に、キムラスカの貴族であるルークに被害が及ぶ可能性もあるために。
「・・・ま、何するにしたって明日まで待たなきゃ何も出来ねーんだ。それにいくらなんでもマルクト軍がこんな宿ってとこで場所もわきまえずドンパチするわきゃねーだろ。そう考えたら明日さっさと早く起きて即行トンズラに限ると思うぜ俺は」
「そうだな、デスマスクの言うとおりだ・・・ルーク様、明日は朝早くの出立になります。今日は早めのご就寝をお願いします」
「あぁ、わかった・・・んじゃ俺もう寝るわ、ちょっと疲れた・・・」
「お休みなさいませ、ルーク様」
そこにデスマスクが常識的な面から見た建設的な意見を上げればカノンも賛同し、ルークも納得して頷いたかと思えば眠そうに目をこすりながらベッドに椅子から立ち上がり向かう。さりげにティアと最も離れた位置にあるベッドに向かうその姿にカノンは立ち上がり、執事としての礼を取り見送った。
「・・・私はアイオロスが戻ってくるまで外で待っていよう。導師に再び宿に来られても面倒だからな」
「あぁ、悪いなカミュ」
その光景を見て今度はカミュが立ち上がり外に出ると言えば、カノンはそっと笑顔でその姿を見送る。
「・・・しっかしまぁ、随分とあぶねぇ状況にいんだな俺ら。一つ間違えりゃ世界をまとめる2つの国によって、全世界を巻き込んでの戦争・・・地球でもこれだけ危険なシチュエーションなんてなかったぜ。そんな規模の戦争なんてな」
「・・・まぁそれは今まで数々の戦争による物が大きいんだがな。しかしその裏にはダアト、というよりは預言による物があると俺は見ている」
「預言ねぇ・・・あんまいいイメージが涌かねぇな、俺も」
二人の空間になったことでテーブルに足をドカッと下ろすデスマスクの声に緊迫感はないが、中身は物騒極まりない物。その話にカノンは着席しつつも真剣な様子で自身の考えとして預言と出せば、デスマスクはガシガシ頭をかきながらめんどくさげに呟く。
「あんたの見方じゃ今までの戦争も預言によって仕組まれた、いわば預言に沿わせる為の戦争だろ?まぁ別に俺は戦争を否定はしねぇよ。やりたきゃやれって思うしな。けど所構わず戦争に限らず日常生活でもなんでも預言を押し通すってのは、言ってみりゃ思考を放棄してるってのと同意だ。んな事に流されるままに従うなんざ俺の本意じゃねーよ」
「・・・確かお前はシュラにアフロディーテと共にサガが教皇の名を騙っていたという事を知りつつ、従っていたのだったな。それも強制したわけではなく、自分の意志で」
「まぁな。俺は力こそが正義と思い、赤ん坊で非力な降臨したてのアテナより確かな力で教皇を排したサガの方が確実に力で地上を守れると思ったからサガについた。それは脅されたとかじゃなく、俺自身の意志でだ。ま、アテナに紫龍達は力を示して俺達を倒したから従うことにしたんだけどな・・・んで、そんな俺からすりゃ自分で物事考えずただ預言だからつって付き従うのは愚の骨頂としか思えねーんだよ」
「成程な」
・・・デスマスクはその気性に加えて取った行動もあって、お世辞にも模範的なアテナの聖闘士と見られたことはなく、自らもそんなタイプではないと自覚している。だがその意志の強さは黄金聖闘士において他の者と比べても遜色ない程力強く、その思考の在り方は誰であろうと揺るがされない程気高かった。



その自身の思考も含めいかに預言が自分の考えに沿わない存在か、そう語るデスマスクにカノンは納得の声を上げた。







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