取捨選択を求められる者達

「では我々はここを出るぞ、カノン。それとアッシュ・・・分かっていると思うが、明日ファブレに戻ってくるまでにはその服を着替えておけ・・・何もルークの服をそのまま着ろとは言わんが、神託の盾の軍服を着たままで屋敷に戻られてはどういう事だと言われかねんからな」
「っ・・・はい、わかりました・・・」
「うむ・・・では陛下、我らはこれで」
「あぁ、ご苦労」
それで公爵が場を区切るように退出を切り出す中、アッシュに対し着替えを命じれば複雑そうにアッシュは頷く。その返答に頷いた公爵が頭を下げた後にインゴベルトの声を受け、カノン達は再び変装をしながら退出していく・・・












・・・そして城を出て公爵とまた明日と言って別れた後にカノン達は下の階層に行き、再び宿を取った。



「・・・これでうまくいったな、カノン」
「あぁ、一先ずはな」
それで宿の一室。精神的に張りつめていたのか、ベッドに着くなり横になってすぐに寝息を立てて目を瞑ったルークを横目にカノンとアイオロスは部屋の隅で小さな声で会話を交わす。
「しかしもう少しルークは取り乱すかと思ったが、そんなことはなかったな」
「ある程度アッシュの言うだろう事に予想がついていたことや、謡将の動機がそこまでの物だと思っていなかったという驚きもあって何も言えなかったのもあるのだろう・・・まぁそれについては俺もあまり人の事は言えんがな・・・」
「・・・星の未来の事か・・・」
アイオロスはそのままルークについての話題に移行しカノンはその精神状態を推測するのだが、ヴァンから受けた・・・星の終焉を指し示す預言の中身。その事を苦く口にするカノンに、アイオロスも表情を曇らせる。
「・・・ユリアは本当は預言を滅びを避けるために詠んだのだろう。そうならないようにと」
「そうだろう・・・だがそれは叶わぬ夢となってしまった。史実には創世歴時代に様々あったこともあって預言が本当はそういうものだと知らせることは出来ず、預言の価値が独り立ちしてしまったことによりな・・・だがいかに皮肉に彩られた形でとは言えその預言は日の目を見ることになったのだ。これからはこの世界を星が見た滅びの命運から解放するためにも行動させてもらう・・・!」
「カノン・・・そうだな、俺達も喜んで協力させてもらうぞ」
それでアイオロスが漏らしたユリアの名にカノンも想う所を見せるがすぐに決意を漲らせた表情に変わり、その姿に笑顔をアイオロスは浮かべる。
『話は聞かせてもらったぞ、二人とも』
「っ・・・この声はシャカ・・・どうした、一体・・・?」
そんな時二人の頭の中に届いてきたシャカの声にアイオロスが何事かと問う。
『君達の先程の王の私室での話を聞いていたアテナよりの伝言だ。事態の解決の為に私もそちらに向かい時期が来たなら君達の元に向かうと、そう君達に伝えてくれとな』
「なにっ・・・何故アテナ自身がこちらに・・・こちらは俺達だけで十分とはアテナの立場からは言えぬかもしれぬが、これは俺が解決すべき問題だとアテナ自身認めてくださったのではないのか・・・!?」
『君の事、ましてやそちらの世界の行方を心配しての事ではない。調べなければならないことがあるっ、そうアテナはおっしゃられていた。その上で君達の助けになりたいと言われていたよ、アテナは』
「・・・調べたいこと・・・?」
シャカはそこからアテナが来訪する事を告げカノンは何故と本気で声を上げるが、調べたいこととの返答に眉を寄せる。
『どちらにせよ君達に拒否権はない。いずれアテナはそちらに向かう、その時には失礼のないようにしてくれたまえ。ではな』
「おい、シャカ!・・・おい、一方的に通信を切ったぞあいつ・・・!」
「昔からそういった性格だったからな、シャカは・・・もう一度話し掛けても返事もしないか素っ気なく返されるかだろう。これ以上は何かしても意味はないぞ」
「あいつは・・・!」
しかしシャカが言いたいことを言い終わったと勝手に通信を終わらせる有り様にカノンはアイオロスに抗議の目を向けるが、無駄だろうと返されワナワナと震える。
「・・・はぁ、もういい。明日もまた早いことだ。それにナタリアの件もある・・・この話はもう終わりだ、寝るぞ」
「あぁ、そうするか」
だがすぐに気持ちを落ち着かせタメ息を吐きながらカノンが休息を切り出した事にアイオロスも苦笑い気味に同意する、態度など取り繕う気もなく疲れたようなその声に。












END











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