取捨選択を求められる者達

「ここでハッキリと言わせていただきますが、ナタリア様に事実を明かさねばまずアッシュが爆発するのは避けられない事態になるのは間違いないでしょう。そしてナタリア様に自重を願われたとて、度々ファブレ邸に来てはルーク様に記憶の事を言われていたと何度も制止をかけても止まらなかったとのカノンの言葉から察するにまず無理かと思われます。人目を盗んではアッシュにその事を愚痴のように切り出し、終いにアッシュが爆発するかもしくは謡将を始めとした一連の出来事を全て暴露すると言った流れになるのが予想出来ます・・・そしてその上で暴露されたナタリア様が取る行動として最も可能性が高い行動は、謡将達を批判した上でルーク様にアッシュの事実を誰にもはばかる事なくぶちまける事でしょう。それがどのような影響を及ぼすのかや、人々が知ったらどう思うのか、そして世界に事実を知られたらどうなるのか・・・と言ったことを考慮せず、真実を公表すべきと義侠心を奮い立たせたと言った風に振る舞いながらその実、言わねば気がすまないと自分の気持ちを優先する形で」
「「「「っ!!」」」」
更にデスマスクはそうしなかったならと最悪の場合のシミュレーションを話していくのだが、その中身を受けてインゴベルトに公爵にアッシュにラルゴとナタリアに関連する面々が一気に息を呑んだ。何もしなければナタリアが世界の趨勢を最悪な方向に向かわせかねないその危険性に、たまらず圧されてしまう形で。
「もしそうなれば取り返しがつかないどころの話ではありません・・・ですので私はナタリア様に事実を申し上げることをお勧めします。勿論口止めは確実に行うことが前提になりますが」
「っ・・・ク、クリムゾンよ・・・そなたはどう思う・・・?」
「・・・私は個人的にはデスマスクの意見を無視することは出来ないと思います・・・ナタリア様がそう言ってしまえば冗談ではなく取り返しがつかないでしょうし、先の殿下の政治に関する権限をどうするかと言うのを決めるのも真剣に考えねばならないかと・・・おそらくアッシュの事だけを明かしてナタリア様に何もせずとなれば、ナタリア様は異様な程に張り切られるでしょう。アッシュが神託の盾にいたことなど打ち消さんばかりの活躍をすればいいことと思いこれまで以上に政務に取り組まんとし、その上で先のアクゼリュス行きに無理矢理向かおうとしたように小事を切り捨て大事の手柄ばかりを求め、全くナタリア様が関わらなくてもいいはずの公務を我が物顔で貴族達から奪いすらしかねません・・・そうなってしまえば次はいよいよもってその地位を剥奪する事は避けられないでしょう。それでも不満だと言うならそれこそ・・・ナタリア様の事実を明かす以外に、殿下を黙らせる手段はもうないかと・・・」
「「「っ!!」」」
それで言うことは言い終わったとデスマスクが言ったと見たことで、インゴベルトは恐る恐る公爵にどう思うかを聞く。そんな自分だけで判断したくないとも取れる声に公爵はデスマスクの考えに賛同した上でナタリアの行動の危険性及び最悪の場合・・・偽物であることを明かさねば止まらないだろうと最後は気まずげに漏らしたことに、ナタリアに関連する三人はまた大きく息を呑んだ。
「・・・そうしないようにするにはデスマスクの言ったようにナタリア様へ制止をかけると共に事実を明かして慎重さを心掛けていただくのがよろしいかと思われますが、どうするかは私だけでなく陛下にアッシュにも考えていただかなくてはなりません・・・この問題は誰にも漏らすことが出来ず、我々だけでしか判断出来ない事なのです。後は二人がいかな考えを持っているか、それが重要になります・・・」
「「・・・」」
それで公爵はインゴベルトとアッシュにも考えるように自分の考えを言い黙る姿に、二人も複雑な表情を浮かべ視線を背けながら黙りこむ。どうするべきかと考えるために。










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