取捨選択を求められる者達

「お前の性格を考えりゃそりゃそう言うだろうな・・・そこで二つ目の理由だが、その事実を言うことでナタリア様に歯止めをかけるためだ」
「歯止め?何の歯止めをかけると言うのだ、ナタリアに?」
「簡単なことです。これは一つ目の理由にも関連することですが、その事実を知ることで今言ったような事とを言わせないようにする事も加えナタリア様に自重していただくようにしてもらうという目的の為ですよ。話に聞くナタリア様の性格では何も知らないままでいては陛下達のお言葉は弱いかと思いますので」
「むぅ・・・確かにナタリアも事情を知れば話は聞いてはくれるだろうが、歯止めと言うには少し違うのではないのか?」
デスマスクはすぐに笑みを消した上でその続きとばかりに歯止めと言い出し、インゴベルトは話を聞いた上で何か違うのではと首を傾げる。
「今申したのはあくまで理由の一端・・・本当の狙いは今言ったよう、ナタリア様に自重をしていただくためです・・・ナタリア様もアッシュの事情にキムラスカの事情、そして謡将に大詠師を含めた一連のダアトの行動の流れを知れば軽々しくそれらの事柄を口には出来ないでしょう。流石に戦争が詠まれていたなどと第六か第七かの譜石にあったと明かしたなら少なからず人々に動揺を与えかねない上、マルクトとこれから良好な関係を結ぶこと・・・何よりアッシュの今の所属の事を考えれば、ね」
「っ!」
「・・・そうか・・・そう言えばアッシュはマルクトのタルタロスを襲撃したのであったな・・・神託の盾として・・・」
デスマスクは心得ているとばかりにすぐに話を続けていくのだがその中で明らかに意味深に空けられた間と言葉に、アッシュは息を呑みインゴベルトもその意味を正確に察して苦そうに声を上げる。神託の盾として起こした行動というその事実が、キムラスカに戻ってから明らかにされたならダアトとマルクトとの国交はどうなるか・・・まずどうよく見積もっても、いつ戦争が起きてもおかしくないピリピリした状態になりかねないために。
「起こしてしまった事実に変わりはありませんし、何よりこちらの大佐殿も事実を知っておられます。まぁその点は公表しないとマルクトに了承してもらったと仮定した上で話を続けますが、あくまでそれも戦争が起きないようにと表向きは何もないと示すための処置であって・・・その事実がもし誰かの口から公になって広まったとしたなら、どうしようもありません。そしてそこまでの事になると言われたならナタリア様も自重されることでしょう。アッシュの件も含めてどう発言するかと」
「・・・成程。確かに理にかなっているが、そうするくらいならナタリアに何も言わない方が手っ取り早くはないか?」
「お忘れですか、陛下?今公爵様にアッシュは言われたのですよ。ナタリア様がアッシュに記憶の事を言わずに済まずにはいられないと思うと言い、アッシュは自身でそのようなことが我慢出来るはずがないと。そして先程のアッシュの激昂した姿を見て・・・もしアッシュが爆発してその事実を明かしたとしたならどのような事態になるか、陛下達も想像が出来るのではないですか?いかにまずいことが起こるかを」
「「・・・っ!」」
・・・一つ目の理由とアッシュの怒りをぶちまけさせた事がここに活きた。
話を進め利点を聞かせるデスマスクにインゴベルトはそもそも話す必要はないのではと首を傾げるが、先の話にアッシュの姿を思い出させるようにいやらしくもしもの仮定を突き付けると、インゴベルトだけでなく公爵もサァッと顔から血の気を一気に引かせて顔色を青くした・・・その事実が世に知られることになったらそれこそ戦争が避けられない事態になりかねないと、そう一瞬で理解したと言ったように。









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