取捨選択を求められる者達

・・・元々からしてカノンの手助けをするためにこの世界に来たデスマスク達だが、その目的はアテナより命じられた事からルークを守ることだけでなくカノンと共にオールドラントの面倒事を避けることに変わった。

その為に今動いているのだが、表向きの問題だけを解決してめでたしめでたし・・・などと言えるような生易しい事態にはならないとデスマスク達は見ていた。特にナタリアに関しては。だが何故ナタリアに対しそんな酷評を下すのかと言うと、王女としての責任に果たすべき義務と言うものを易々と放棄して自分のやりたいことを優先する嫌いがあるからだ。

・・・元々聖闘士は聖衣を着ない時に人前に姿を見せることはあっても、自分が聖闘士だと名乗り出たり名誉を求めて活動しないのが普通なのだ。その力があれば一般人の中において莫大な富と名誉を得られる可能性が高いはずなのにだ。その辺りには聖闘士はみだりに人前に姿を見せないという風習があるためでもあり私事の為に力を使えば罰を下される為でもあるが、だからこそナタリアの行動は私情まみれの私事としか言えない行動とデスマスク達は見て取ったのだ。自分達の在り方とは明らかに違うその在り方に。

そしてそのナタリアの行動を考えれば考える程、これからの事を思うと何の罰も無しにはい終わり・・・ではナタリアは懲りることなく城を抜け出すような行動をまた取るとデスマスク達は見ていた。そういった我を貫くように私事を押し出した行動は下手をすれば最悪、マルクトやダアトに戦争を吹っ掛けるような事態になりかねないことも有り得る・・・と。

そのような事態などデスマスク達は望んでいないし、ましてや自分達がいなくなった後で何かを起こされるような事態になってしまえば今までの行動の意味が無くなってしまうばかりか、以降は手を出さないというか状況を知ることすら出来ない事になる。デスマスク達はもう地球に帰ってしまう為に・・・だからこそデスマスク達は心残りを残さないためにも万全を期して事に挑んでいるのだ。ナタリアに徹底的に自分の起こした行動の責任に立場というものを教え込ませた上でインゴベルト達にストッパーとして動いてもらい、戦争などといった事態を避けるために。



「おい待て・・・だったら何故ナタリアに俺の事を言うかどうかなんて事になる?今の話じゃ俺の事を言うかどうかは関係ねぇはずだろうが・・・」
「む・・・そう言えば確かに・・・」
そんな風に話を進めていく中でアッシュから疑問の声がかかったことにインゴベルトも確かにと疑問の声を上げる、アッシュの事実を言う必要に繋がらないと。
「その理由については二つありますがまず一つ、ナタリア様がアッシュの事実を知らねばアッシュの精神をガリガリと削るような事を平然と言いかねないと見たからです」
「アッシュの精神を、削る?」
「公爵様はルーク様がファブレに来てからの七年間を見ていたので、ナタリア様がどの様なことを言うかは想像がつくのではありませんか?もし記憶を取り戻したとアッシュがファブレに戻ったなら、その七年間のルーク様との暮らしの記憶を記憶が戻らなかった貴方は貴方らしくなかったといった類いの言葉をナタリア様が言うことは」
「っ・・・それは、正直有り得るだろうな・・・むしろ記憶にこだわっていたナタリア様の事を思うと、言わない方がおかしいとすら思えるな・・・」
デスマスクはその理由は二つあると言う中で一つを上げつつ公爵に問いを向けると、少し気まずげながらもナタリアの取るだろう行動の予測は正しいだろうと漏らす。
「ありがとうございます・・・そこでだ、アッシュ。お前、ルーク様に対する物であっても自分にナタリア様からそう言われたら我慢出来るか?それは俺じゃないって、事実を言わずにずっと」
「っ!・・・なんで俺がそんなことを我慢しなきゃいけねぇんだ・・・ましてやナタリアからそんなことなんざ、言われたくねぇ・・・!」
そこまで聞きデスマスクがその声を我慢出来るかを聞くと、ワナワナと震えた上で出来るわけがないと怒り混じりにアッシュは答えた・・・その瞬間、デスマスクの口角がニヤリと一瞬上がった。






18/24ページ
スキ