取捨選択を求められる者達

「この件に関してですがまず事が露見した理由というものに、大詠師がアクゼリュスに向かったナタリア様の事を陛下に諦めていただくために明かしたことがあります。まぁナタリア様の事実に関しては今言った通り、我々の内に留める事は可能でしょう。ですがもう一つ言えることとして、ナタリア様が城を脱け出したという事実・・・これは変えようのない物であり、様々な方々に知られている出来事です。これらの行動に関してはある程度周知の物となっている上、ケセドニアという場ではナタリア様を見た人々にナタリア様がいたことを言うななどとの箝口令を敷きようもありませんからね」
「むぅ・・・要は城を脱け出した件については目に見える形ではっきり罰を与えねばならん、と言うことか・・・そしてそれを避けるような事をするのはあまり感心出来ないと・・・」
デスマスクがそこでナタリアの行動を誤魔化す事は難しいと滔々と話す姿に、インゴベルトも唸り声を上げながら納得する。
「はい。そしてその上で言えることなのですが、ナタリア様に今後政治の実権を握らせるか否か・・・更にはアッシュの事を明かすか否かも視野に入れるべきかを検討すべきかと私は思っています」
「何っ・・・政治の事もだが、アッシュの事を明かすかだと・・・?」
「テメェ・・・一体どういう事だ・・・?」
デスマスクは肯定した後に更に条件を上げるのだが、その条件にインゴベルトだけでなくアッシュも厳めしく眉を寄せる。
「私はナタリア様とそこまで話をさせてはいただいた事はございませんが、カノンにカミュからの話を聞いた限りでは彼女の意志の強さは相当との事・・・今のまま何の罰も与えずにいればナタリア様がどのように思うのかを私が推測しててみた所では、また陛下に命令を下された所でそれが不満だった場合は遠慮なく命に背くでしょう。そのように思いきりがよくなければ先のアクゼリュス行きに無理にでも付いてこようとはしないでしょうからね」
「それは・・・否定が出来んな・・・」
「もしそうなってしまえば、例え陛下がナタリア様を守ろうとした所で流石に臣下からの抗議の声を抑えることは出来なくなるでしょう。ならばいっそ、この辺りでナタリア様を守るという意味でも選択をされるべきかと私は思います。もう政治と関わらぬことと引き換えに王女としての地位を失わずに済ませるようにするか、別の処置を取った上で次の失敗が王女としての地位が完全に失われる事に繋がると伝えるか・・・その二つの内どちらかを」
「それはっ・・・いや、ナタリアの事に臣下達の事を考えると妥当か・・・それにナタリアの行動を止めるにはもう、それくらいの事はせねばならんのだろうな・・・」
デスマスクはその行動の是非に加え歯止めをかけるべきとの選択を提示すると、インゴベルトも苦しくも非常に苦そうに納得してうめく。
『随分と念の入った言葉ではあるがこれくらいはやはり必要なことだろうな』
『まぁな。折角ここまで来といて後を任せたら馬鹿姫のせいで台無しになりました、なんて俺だってごめんだからこれくらいは言っとかないとな』
その表情にカミュが小宇宙の通信で声を向けると、デスマスクは表向きとは逆に楽し気な声で返す。



・・・そう、デスマスクがこうまで執拗にナタリアについて言っているのには訳があるのだ。本来ナタリアの事など気にかけなくてもいいはずの立場にいるデスマスク達が。










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