取捨選択を求められる者達

「さて・・・話に戻るが、どうしてあんたはそんな教育しかしてこなかったんだ?言っちゃなんだが体と戦闘力くらいしかまともに成長してねぇようにしか思えねぇぞ。この体たらくじゃ。あんた、アッシュが超振動さえ使えりゃそれでいいなんて思って手元に置いてたのか?」
「いや、そのようなことはない・・・ないのだが、私の教育が甘かったことは否定出来んだろうな・・・私は神託の盾に、自分の元にアッシュを留めようと考えいくつか手を打ってきた。そして神託の盾に留まり、神託の盾として名を上げていくアッシュにこれでいいと思っていたが・・・まさかこのようなことを言い切るまでとは・・・」
「随分とまぁいい加減なことを言うもんだな、あんた・・・呆れたもんだぜ」
デスマスクは視線をヴァンに戻しアッシュの人としての有り得なさについて質問をすると、自身も想定していなかったと目を伏せる姿に頭をガシガシとかく。
「・・・そもそもよぉ、あんたなんでアッシュを拐ったんだ?預言を覆したいだとかの為とか単独で超振動を使える存在が欲しかったとかって理由はあるんだろうが、正直アッシュがあんたの計画に絶対必要な理由が見えてこねぇんだよ。それこそ超振動を使えるってだけなら、武力において有利になるってくらいしか利点が見当たらねぇ・・・まぁ既存の譜術よっか遥かに強力だってのは否定はしねぇが、それでもあんたの計画に絶対必要な理由にはなりえねぇ・・・他にどんな理由があんだ?俺には及びもつかないような理由は?」
「「「「・・・」」」」
それでずさんな教育体制については追及せずアッシュを引き込んだ訳についてにデスマスクは問い掛けを変更し、周りはどういう答えがヴァンから返ってくるのかを静かに見据える。
「・・・・・・そうだな。強いて言うなら今上げた以外に言える理由は二つだ。まず一つはアッシュに対する情が湧いたからだな」
「情?」
「元々は私も預言を覆すためや超振動を利用するためにアッシュを取り込もうと決めた。だがその最中にアッシュが私を師として接してくれる姿にこのままアッシュを殺してしまうには惜しい、と思うようになっていた・・・」
「ヴァン・・・テメェ・・・」
ヴァンもそこで意を決して前を向き情だと本心から言ってると滲ませながら答えるのだが、アッシュは師としての姿に目を軽く見開きながら声を上げる。
「んじゃもうひとつの方は?」
だがヴァンとアッシュの師弟の絆を確認し合う場など必要ないと言わんばかりに、デスマスクはとっとと言えとばかりに問い直す。
「・・・それに関してはお前達が知りたいことでもあると思うが、先に言っておこう。今から私が言うことは紛れもない事実だ」
「事実?なんだよ、一体?」



「・・・端的に言おう。私は第七譜石の中身を知っている。この世界の終わりが詠まれたというその中身をな」



「「「「!?」」」」
「何っ・・・!?」
・・・しかし念押しされた上でヴァンが告げた言葉にラルゴとディストを除いた一同が揃って驚愕し、デスマスクも驚きに声を揺らす。
「ヴァ、ヴァンよ・・・だ、第七譜石の中身などそのようなことを、何故そなたは知っているのだ・・・!?」
「こちらも端的に申し上げますが、私はホドの出身でかつて崩れ行くホドから命からがら脱出した事がございます。その際に私は偶然にもその中で第七譜石を見つけそれを詠んだのですが、そこには要約してキムラスカが戦争に勝って繁栄するが何年か後に病が持ち込まれ障気が世界に満ち、オールドラントの最期なり・・・という風に締め括られていました」
「な、なんだと・・・で、ではキムラスカは戦争をして勝っても意味がないというのか・・・!?」
「極めてそうなる可能性は高いでしょう」
「・・・っ!」
そんな中でインゴベルトが信じたくないとばかりに動揺しながら確認の言葉を向けるが、ヴァンが一切揺るぐことなく第七譜石の中身を伝え否定材料がないと告げた事に愕然とした表情を浮かべた。










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