取捨選択を求められる者達

『おい・・・迷いなく言い切ったよな、こいつ・・・』
『あぁ・・・言い切ったな・・・』
そしてそれは聖闘士四人も同様で、デスマスクにカミュは似たような声色で頷きあうように小宇宙の通信で会話する。呆れ以外に何物とも言えない声色で。
『カノン・・・流石に俺もここまでの事になると思っていなかったが、これはいいのか?』
『・・・確かにお前達三人の言うように俺も意外ではあった。が、これはルークとアッシュが共に選択をした上で出た結果だ・・・俺からすればルークを庇う気持ちはあっても、アッシュを庇うつもりはないし向こうも願い下げだと言うだろう。出した結論に偽りは無いにしても・・・その答えを馬鹿正直に告げた事を後悔しようともだ』
『・・・だろうな』
アイオロスは表向き静かなカノンに探るような声で問い掛けると、こちらもまた呆れを伴った上で手を差し伸べる意味もないと言い切る声色で返ってきた事にそっと一言で返す。アイオロス自身アッシュに手を差し伸べても徒労だと感じた事もあり。



「アッ、アッシュ・・・そなたは、それでいいと言うのか・・・ルークの事をそのように言っても・・・?」
「何の問題もありません叔父上。むしろこのような屑が俺の代わりにキムラスカにいることもですが、ましてや俺と一緒にこれからいるということなど到底認められるものではありません。ですからこれでいいんです・・・それにこの劣化レプリカはどんな事を言われようとも文句は言わないと言いました。だから正直に俺の気持ちを言ったまでです」
「・・・っ!」
そんな中でインゴベルトがなんとかと言葉を紡いで意思を再確認するが、悪びれず当然と言い切るばかりかルークを見て見下す笑みを浮かべる姿に絶句した。
「・・・お前の気持ちは分かった、アッシュ。だがもう一度ルークとカノン、お前達に問う。お前達は意思を変えるつもりはないのか?」
「俺は変える気はないですけど・・・カノンは何を?」
「私は以前に公爵様に言っていた事があるのです。もしルーク様がファブレから出るような事になれば私も共にファブレを出ると・・・ですので私もルーク様と共にファブレを出ることになりました。この事に関しては私もその気持ちを変えることはございませんので公爵様、明日にでも私の退職の手続きをよろしくお願いいたします」
「・・・うむぅ・・・」
「そうだったのか・・・」
公爵はあえて二人から目を反らしつつ話題を変えるようにルークとカノンに意思を確認すると、二人ともに変える気はないと言った上でカノンのまっすぐな声にルークは納得したものの、公爵は難しそうに唸り声を上げる。
「父上、何をそんなに悩む事があるのですか。劣化レプリカもですが、劣化レプリカごときの為に屋敷を辞めることを選ぶような奴などどうでもいいでしょう」
「・・・っ!」
アッシュがそんな姿にフォローの言葉をかけるが、公爵の口元はそっと食い縛られていた。おそらくその自分が既にファブレの人間としての立場にいると感じた上で、自分の苦悩を軽く言う所か二人までもを貶めるアッシュの発言に苛立っているのだろう。
「・・・ま、お前さんにとっちゃどうでもいいんだろうな。ルーク様にカノンのことは」
「あぁ?」
「デスマスク、お前・・・」
「いいから言わせろ、カミュ。それにどうせこのまんま進んだって陛下も公爵様も言いたい事を言おうにも時間がかかんのは目に見えてる。だったら俺が話を進めた方がいい」
「・・・そう、だな。頼むデスマスク、今の状態では私は気持ちを抑えるのに必死で何も言えない」
「・・・正直に言えばわしもそうだ。それにクリムゾンが言うのであればそなたには話を進めるだけの力があるのだろう・・・そなたが主導してしばらく話を進めてくれ、デスマスクとやら」
「はっ、かしこまりました」
そんな状況を見かねたデスマスクが言葉を選ぶことなく発言をし、カミュが諌めの言葉をかけるが公爵にインゴベルトと両者共に話をするよう許可を出すとデスマスクは二人に頭を下げ、アッシュに目を向ける。サディスティックに、楽しげに細まった目を。










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