「・・・陛下、何故その質問を先に二人に？」
「・・・そなたも少なからず考えているであろう。二人がどのような気持ちであるかを差し置いてもまず一つ確実にやらねばならぬ事は・・・せめてどちらかだけでも『ルーク＝フォン＝ファブレ』をキムラスカに残す事は」
「・・・はい、それは」
公爵はその空気の中で妙な言い方をした質問について問うと、インゴベルトが言いづらそうに口にした本意に重く頷く。
「本来なら『ルーク』という存在をわしの後の王位につけることは諦めていたことだった・・・預言により死ぬと詠まれていたためにな。だが現状はそのような事をするわけにもいかぬ状況だ。様々な事が絡み合ったが為にな。しかし『ルーク』をそのままキムラスカに戻すとしても、二人の『ルーク』をどういう風にするかと考えると・・・」
「・・・お気持ち察します。それで二人にどう思っているのかとお聞きになりたいと・・・」
「・・・わしとて自分の判断だけで決めれる物なら決めたかった。しかし二人の立場を思うと一概にどちらかに去れとも言い難くもあり、共にいろとも言い難かった・・・無論二人が共にいることを選ぶというなら苦難はあるだろうが、サポートはするつもりだ・・・ただそれも二人がどのように思うかだが・・・」
「「・・・」」
インゴベルトは自身の葛藤と苦悩を公爵の頷きを受けつつ明かし、せめて二人の意志を聞いてと言いルークとアッシュは揃って表情を引き締める。
「・・・ではまずルークから聞こう。そなたはどう思っている？」
「・・・俺は、アッシュの決定に全て委ねます」
「なっ、に・・・！？」
「ルークよ、本気か・・・！？」
それでまずはとインゴベルトはルークに考えの程を聞くが、まさかのアッシュに委ねると迷いを見せない目で出した答えにに二人だけではなくカノン達にヴァン達までも信じられない物を見るような目をルークに向けた。
「はい、本気です」
「どうしてそのような事を・・・」
「・・・理由はアッシュに選ぶ権利があると言うか、俺の気持ちよりアッシュの気持ちを優先させるべきだって思ったからです。前から色々考えたけれど、叔父上の姿を見たらより一層二人が変に自己主張したって事態が進まないんじゃないかって思って。それになんだかんだ言ってもアッシュが本物の『ルーク＝フォン＝ファブレ』だってことには変わりはありません・・・だから俺はアッシュに全てを委ねます。俺がキムラスカにいるべきかいないべきかを」
「・・・お前は、それで後悔しないのか？」
「はい・・・どんな結論が下ったとしてもアッシュを恨むような事も、不満を言うことはしません」
・・・ルークの決意に迷いはなかった。
揺るぐことなくこちらの方が動揺している公爵の確認に、まっすぐに是と返した。
「・・・分かった、そなたの意志は。では次にアッシュ、そなたに聞こう。そなたはどのようにしたいと考えておるのだ？」
「・・・」
インゴベルトもその意志を確認した上で次に判断を委ねられたアッシュへと視線と質問を向ける。それで自身に集まる視線にアッシュは・・・ルークにバッと視線を見るなり、悪意ある笑みで顔を歪ませた。
「・・・ハッ、どんな結論が出ても恨まねぇだと？なら言ってやろうじゃねぇか・・・テメェと一緒にキムラスカに残るなんざお断りだ！俺が『ルーク』に戻るからテメェはどことなりとでも消えちまえ、この劣化レプリカが！」
「「「「・・・」」」」
そのままアッシュが罵倒と共に叫んだ考えは・・・ルークの事や今のアッシュを立てるような言葉など一切無視した、共存ばかりか共にいることすらの拒否であった。そのブレないルークへの拒否の姿勢に周りの空気は一気に引いた物へと変わった・・・こんな性格にした一因どころか原因とすら言えるヴァンまでその空気をまとう形でだ。









．