取捨選択を求められる者達

「それよりまだ何か聞きたいことはあるのか?この後は夜まで待つだけだから特に何もないし、答えてほしいんなら答えるぞ」
「いえ、今の疑問はふと思ったことですので気になさらないでください・・・私はこれで失礼します。また夜にお会いしましょう」
「あぁ、またな」
そんな流れにルークがまだ話題はあるかと問うと、無いと告げた上でカミュは頭を下げて部屋を退出していく。
「・・・とりあえずはルーク様もしばらくお休みください。先程の一連の流れは肉体的疲労と言うよりは精神的な疲労が強かったと思われます。そして夜の人目を避けての時間帯に陛下の元に向かうことになりますので、万全の体勢を整える為にも休息は必要です」
「あぁ、わかったよ」
カノンもカミュの退出に気を取り直しながら休息を勧め、頷く姿を確認する。そう、まだ今日の内にやらねばならないことはあるのだ。インゴベルトを説くという重大な事が・・・















・・・そして時は過ぎ夜になった。カノン達は休息を十分に取った上でまた変装を施してから上の階層に行った。そこで城の前の噴水の所で待っていた公爵と合流し、城の中へと入っていった。



「・・・来たか、待っていたぞ」
・・・それでインゴベルトの私室に来て変装を解いたカノン達は重い表情を浮かべていたインゴベルトと顔を合わせる。
「陛下・・・お心は決まりましたか?」
「・・・うむ、大方は決まった。そなたらが来るまでどうするかと散々悩んだが・・・アクゼリュスの崩落を望むことはやめ、マルクトとの戦争には踏み切らないこととする」
「そうですか・・・」
公爵が単刀直入にどうする気かとの心境を問うと、未だに悩ましげながらも確かに戦争には至らせないとの宣言がされた。公爵もだがルークもその言葉にホッとしたように安堵の様子を浮かべる。
「・・・とはいえ、だ。いくつか確認せねばならんことがある。それらをはっきりさせぬことにはこれからの事もどうしていいかわからぬからな。まずはその質問に答えてくれ」
「陛下がそうおっしゃるなら」
だがまだインゴベルトは聞くことがあると言い、その質問を向けられる側である公爵は了承と共に頭を下げる。
「・・・ではまずマルクトの人間であるそなたに聞くが、ナタリアの事実をどのようにするつもりでいる?」
「・・・っ!」
そこでまずとジェイドへの問いかけに出たナタリアの名にアッシュがハッとした顔つきになるが、ラルゴは表情を崩してはいない・・・この辺りは覚悟しているものかそうでないかの差と言えるであろう。
「・・・一応ピオニー陛下にはその事実をお伝えするつもりではいますが、事が事なだけに公表するような事態にだけはしないようにと私からも具申させていただく予定です。キムラスカが妙な形で混乱することになればマルクトにとっても不利益になりかねない上、もし事実を明かしたとしてその情報がどこからもたらされたのかを明かすにしても明かさないにしても面倒な事態になりかねませんので」
「そうか・・・本当ならそなたの心の内にだけ秘めてもらいたいところだが、そこまで望むのは筋違いだからな。そうしてくれるというならこちらも助かる」
ジェイドは慎重に言葉を発していく、下手な混乱は起こすような事はしたくないとする自分の考えを。インゴベルトはそれらの考えを受け、心なしかホッとしたように返す。
「では次に、と言いたいところだが・・・その質問をする前にわしからルークとアッシュ、二人に聞きたいことがある」
「っ・・・何でしょうか?」
「そなたら二人はキムラスカに残りたいと考えているか?そして・・・二人でいてもいいなら、二人でいる気はあるか?」
「「・・・っ!」」
・・・だが次にインゴベルトから静かながら確かに力を込められ発せられた問いかけにルークとアッシュの二人は揃って身を震わせた、二人の行く末が決まると行っても過言ではない問いが来たことに。








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