取捨選択を求められる者達

「カミュ、どうしていきなりそんな事を言い出した?」
「いや、ルーク様が謡将にさして興味がないのは今までの旅で見て取れていたのだが何故いきなりと思ったのだ」
「・・・まぁ興味が薄かったのはカノンがいたからって所があるんだけどな」
「カノンが?」
「・・・正確に言うと俺が生まれてからって事になるのかな・・・俺が一年くらいをファブレに来てから過ごす間っておぼろ気くらいにしか覚えてないんだけど、その時って謡将くらいしか俺の事を見てくれる人ってのが屋敷の中にいなかったんだよ・・・」
「そうなのですか?」
カノンはカミュにいきなりの質問の訳について問うのだが、そこにルークが入ってきて昔の事を思い出しながら語った中身にカミュは意外そうに声を上げる。
「あぁ、間違いない・・・今この状況だから言わせてもらうが俺が来てからそう言った状況は改善こそされたが、その間にファブレで働く人間からよくこういった声をかけられた・・・あんな風になったルーク様によく甲斐甲斐しく出来るな、と」
「っ・・・!」
「それは・・・」
その声に答えたのはカノンなのだが重くもありあまり気持ちのいい中身でない苦く語られた話に、ルークはたまらず下を向きカミュも眉をしかめる。
「その者達はルーク様に明確な悪意を持っていなかったと言うのは重々に承知している。あくまで記憶がなくなった赤子同然に近いルーク様の面倒を見る俺への慰め程度に言っていたことは。だがその言葉の中に多少なりともそう言った気持ちがあることも俺は感じていた」
「・・・実際、俺も感じていたと思う。周りを見てそんな俺に進んで付き合ってくれるのって、ほとんどいなかった・・・それこそ多分ガイか謡将くらいだったからな。んで多分カノンが来なかったら二人に寄り掛かる形になってたと思うんだよ・・・それでそのまま進んでたら、謡将達くらいしか信じなくなってたかもしれなかったかもって思うとな・・・」
「・・・心中お察しします」
カノンにルークは当時の事と共に感じていたことを漏らしていくのだが、ルークが暗く頭を下げたままもしもの可能性を考える姿にカミュも一言だけ慰めの言葉をかける。下手をすればそれこそ盲目にヴァンを信じ、何も疑うこともなくアクゼリュスを消滅させていた可能性があったとルーク自身が自覚してたために。
「・・・まぁでもカノンが来てくれてから謡将だけじゃなく、ファブレの中の人間の目とかそう言った事もなくなったんだけどな。多分カノンがその辺りについても動いてくれてたと思うんだけど・・・」
「カノンが、ですか?」
「俺も端から見ていて、そして周りの人々と接している内にどうにかせねばならないと考えていたのだ。この環境はあまりルーク様にとっていいものとは言えないのではないかとな」
「そうか・・・」
しかしそれを解決したのはカノンだと言うルークにカミュがカノンへ視線を向けると、その対応は当然と言ったように返す姿に納得する。
「あ~、それでまぁなんつーかカノンと謡将の俺に対する態度を考えてる内にどっちを信頼をするべきかって考えたら・・・カノンだったんだよ。謡将がダアト所属でそんな頻繁に来れないって事を差し引いて考えても、どっちを選ぶかって考えたらな」
「そう考えられた決定的な理由は何だったのでしょうか?」
「・・・今考えてちゃんと言葉にするならこういう言い方になるけど、謡将の態度がどっか一歩引いたもんだって感じたからだな。何て言うか謡将ってちゃんと接してはくれたし冷静な態度で常にいてくれちゃいたけど、そこにどっか自分が俺よっか上にいるみたいな気持ちが感じられたんだよ。つってもそんな露骨なもんじゃなかったけど、カノンが立場を考えて接してはいても俺に親身になってくれてたことと比べるとどうしても・・・な」
「成程・・・そういうわけですか」
「・・・おい、何故そこで生暖かい視線を俺に向ける」
「気にするな」
ルークは更に話を両者への信頼についてに変えて進めカミュはそっとカノンへ視線を向けるのだが、優しい目になっていたことをたまらずカノンはジト目で指摘するのだが一言で返す。そこまでルークの為を想い動くカノンに心が暖まり、その気持ちを押さえることを放棄した為に。







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