双子の片割れと三人の聖闘士の介入

「駄目ですよぅ、イオン様ぁ~。あたし達は大佐に頼まれてマルクトに来てここに寄っただけなんですから、これ以上寄り道をしてる時間はないんですよ?」
「それは、わかっています・・・」
「・・・大佐?頼まれて?」
「あっ、それは・・・言えないんです、すみません・・・」
そんな姿を見かねてアニスがたしなめるように声をかけイオンも力なく頷くが、また聞き捨てならない重要そうな言葉が出てきた事にカミュは探るように覗き込む視線を送る。だがイオンは失言したと言ったように、そっと視線を背ける。



「・・・では私がそのチーグルの異常を調べましょう」



「「・・・え?」」
「・・・アイオロス?」
・・・その時、静かに上げられた声に三人が一斉にアイオロスを見た。カミュは表情には薄いが、何をと言った様子で。
「・・・そんなこと、貴方にさせる訳には・・・」
「このまま放っておけば貴方は周りの反対を押し切って抜け出してでもチーグルの所へ行く。そういう方でしょう、貴方は」
「・・・っ!」
「・・・素直な御方だ」
イオンはたまらず断りを入れようとする。だがその言葉を途中で切って取るだろう行動を述べられたイオンはハッと息を呑み、それを肯定と見たアイオロスは爽やかながらも苦笑を浮かべ立ち上がりイオンに近付く。
「ですがそのような向こう見ずな事はお控えください。今の貴方の行動は他の皆の為にではなく、貴方がただ自分の為に取っている行動です。現にホラ・・・こちらのお嬢さんの事を、貴方は一切考えていない」
「あっ・・・」
「っ!?~~~~~~っ!!?」
イオンにゆっくり近づきながらも、確かな注意をしていくアイオロス。そしてイオンの前に立つかと思われていたが、予想に反しアニスの前に立つアイオロス。そして優しげに微笑みながらアニスの顎を優しく手で上げ見据え覗き込むその姿にイオンは失念していたように声を上げるが・・・アイオロスのキザに作られた動作でなく至って自然な動作に、アニスの顔は一気に真っ赤に染まってパニックで声なき悲鳴を腹の中で大いに上げていた。
「貴方は大方周りの迷惑を考えないようにと先程の食料盗難事件の件を一人で解決しようとしたのでしょうが、現に貴方は今このお嬢さんにその行動について叱られました。そしてまた貴方はその事を考えず、一人で問題解決に動こうとした・・・これでは逆に迷惑になるだけですよ、彼女にとってね」
「それは・・・」
「それならまだいっそ最初から最後まで酸いも甘いも共に、という方が楽です。まだフォローのしようがありますからね、隣にいれた方が。それにそうやって自分の意見が通らないなら無理矢理にでも通そうと言うのは彼女が貴方を想っている事に対しての無礼に加え、彼女を必要がないと言っているも同義です。そう自覚なくされているのであれば、改めた方がよろしいと思われます」
「・・・僕は、そんなつもりは・・・・・・いえ、アイオロスさんの言うとおりですね。僕の行動は僕の為の行動でした、迷惑をかけたくないって言ってアニスに迷惑をかけてしまうのなら結局何にもなりません。すみませんでしたアニス、わがままを言って・・・」
「・・・えっ、あっ・・・いいいえ、そそそんなことないですよ!わかってくれたならそそそれでいいです!」
そして今度はイオンに向かっていかにその行動が独善的かと語るアイオロスに、初めは反論をしようとしたがそうすればアニスを貶める事になると言われたこともありイオンはアニスに向かって申し訳無さそうに頭を下げる。だが明らかにアイオロスの横顔にポーッと見惚れていたアニスは慌ててイオンの言葉に反応し、凄い早さで前に手を出しながら首を横に振っていた。









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