取捨選択を求められる者達

「ま、要はだ。あんたにはあのお姫様の行動はお姫様自身が償いをしなきゃなんねぇ事を覚悟しといてもらわなきゃなんねぇって事だよ」
「・・・そうか、そういうことになるのか・・・」
「・・・なぁデスマスク。ちなみに聞くけどナタリアにそんなことにならないようにってさせることは出来ないのか?」
「現状ではそれは難しいでしょう。今言ったように我々の立場はキムラスカ上層部に関係する物ではない上、本人に注意を促しても余程の事が無ければ聞き入れるかどうかは怪しいと思われます。そうでなければ陛下の命に背き単独でケセドニアにまでなど来れないでしょうからね・・・絶対に言うことを聞かせようとしたいのなら事実・・・つまり本物のナタリア様との入れ換えの事実を申し上げた上で、次の失敗がその地位の失脚を招く事をお伝えするのが確実な方法になるかと思われます」
「っ!・・・そこまで、って事か・・・」
そこまで言ってざっくり話をまとめるデスマスクにラルゴも覚悟をしたように声を上げうなだれる中、ルークから上がった疑問。その答えを丁寧ながらナタリアの性質を考えた上での確実な方法付きで答えるデスマスクに、ルークも苦々しげに顔を背ける。そこまでしなければナタリアは黙らないと認めたくないながらも、短くない付き合いから理解もした為に。
「少なくとも私はそう思っていますが、それはカノンも同じのはずです・・・違うか?」
「あぁ、俺もそう思っている。だがラルゴがナタリア様の本当の父親だとは流石に予測はつかなかったが・・・」
「そいつについちゃ俺も同感だが・・・まぁ安心しろってのもなんだが、俺らからはお姫様には事実を明かしはしねぇよ。あんたが実の父親って事もな。んでこの話はまたするかもしれねぇがそれもここにいる俺らにアイオロス達の前でだけだ。そいつは約束しといてやるよ、おっさん」
「・・・礼を言うような立場でないのは分かってはいるが、その心遣いには感謝しよう」
デスマスクはそこで一度カノンに話を振った後に皮肉げながらも笑みを浮かべ事実は言わないと約束を交わし、ラルゴもその言葉にそっと頭を下げる。
「礼を言われる程でもねぇよ・・・まぁそこまで言うってんなら興味本意ってのは否定しない上で聞くが、あんたの本名にあのお姫様の本当に呼ばれるはずだった名前ってなんなんだ?言わねぇなら言わねぇで構わねぇし、聞きたいことを聞き終わったからこのまま部屋に戻しても別に構わねぇけどよ」
「・・・・・・俺の本名はバダック=オークランド、娘の本当の名はメリルだ」
「バダックにメリル、ね・・・言わせちまって悪かったな。んじゃ俺らは部屋に戻らせてもらうぜ?カノン」
「あぁ、ではな」
デスマスクも気にしないように言いつつも興味があると、言わなくてもいいと前置きを置いた上で隠しもせず本名に対して質問をする。ラルゴはその質問に人柄的には答えないかに思われたが、少しの間を空け小さい声ながらも確かに本名を口にした。その事に軽く謝りながらデスマスクは退出を切り出し、カノンの声を受けながら二人は部屋を出ていく。
「・・・なぁ、どうしてラルゴは自分にナタリアの本当の名前を口にしたんだ?あいつそんなことを簡単に言うような奴に思えなかったのに・・・」
「・・・彼なりのケジメだと思われます。確かにラルゴは本来でしたら敵と呼べる存在の私達に本当の事など言おうとはしなかったでしょう。ですがラルゴは自らが知りたかった事を教えられた事に加え、デスマスクも実直な彼の気質を理解した上で真摯に対応した・・・故に彼なりにその姿勢に対して返答を返したのでしょう。自分の中の葛藤と折り合いをつけた上で」
「・・・ラルゴもまた色々考えての事って訳か・・・」
二人の姿を見送った所でルークがラルゴが素直に返答したことについて疑問をカノンに向けると、その内心を推測して話す中身になんとも言えない複雑そうな顔になる。ラルゴの事を思えば迂闊な事を言えるはずもないと、ルーク自身そう感じた為に。










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