変遷は聖闘士の引き起こす猛威
・・・その後カノン達は夜にまたということで公爵と別れ、下の階層の宿に向かった。
「・・・さて、後は再び陛下の私室に夜に向かい話をつけるのですがお二人には覚悟していただかなくてはいけない事がございます・・・」
「「・・・」」
それで宿は二部屋取ったのだが、話をするために片方の部屋にルークとアッシュの二人を呼んだカノンは真剣に話を切り出す。
「これからの話次第でお二人がキムラスカに残るかどうかの峠になります。その際に重要になるのはアッシュがどのような考えを持つかです。今の状況で二人共にキムラスカに残るとなれば相当の物議を醸すことは予測出来ますが、それも二人の考え次第では共にいることも出来るでしょう・・・ですがそれもあくまで二人の意志が揃っての事になり、おそらくアッシュの意志の方を重要視すると見られます」
「っ・・・」
カノンはそれでアッシュの優位性を語るのだが、そこで当の本人がニヤッとしたのをカノンは見逃さなかった。
「・・・ただ一つそこで言っておかねばならない事がありますが、もしアッシュが一人でキムラスカに戻るとの意志を示したなら・・・アッシュは事の擦り合わせをするためにルーク様の服を譲り受けた上で、以降は記憶を取り戻したという体を取ることは必須になるでしょう」
「なにっ!?それはどういうことだ!?」
「今二人の存在は公になっていません。その状況の中でアッシュ一人で戻るというのであれば今までのルーク様のフリをある程度はしなければ合点はいきません。ただある程度不自然な点は記憶を取り戻したとでも言えば誤魔化しが効きますので、そこは呑んでいただかねばならないのは後の話し合いで出てくるのは間違いないと思われます・・・また、キムラスカにそうやって戻ると決めたなら公爵様に陛下のお言葉に二度と逆らえなくなることも覚悟していただかなくてはなりません。いかに事情があったとはいえキムラスカに戻ろうとしなかった事実には変わりはなく、アッシュとして起こした行動を否定も出来ません。アリエッタに命令を下した事実も」
「・・・っ!」
カノンはそんなアッシュに冷たい目を向けながら告げる、そんなに甘くは事は進むわけないと。特に何の考えもなしに軍港を襲わせた経緯を匂わせた時、アッシュは冷や汗を浮かべて顔をひきつらせ息を呑んだ・・・喜び勇んで帰れると思ったその位置が、自分の意志を縛る可能性の高い場所だと知らされ。
「ですがキムラスカに戻りたくないと拒否を示したとして、アッシュがそのまま放逐される可能性はほぼないものと見ていいでしょう。先の件の事もありますが、キムラスカの王族の血を引いていることには違いはありません。そのような存在をみすみす逃すような事は出来ないでしょうから考えられる可能性としては拒否をしたすぐに否応なしの捕縛か、もしくは立場と名を変えての監視付きのキムラスカへの従事の強要で、ダアトに亡命したとしてもその行動は逐一知れるようにとの監視体制を取られかねない事は容易に想像が出来ます。そして亡命するという選択を選ぶにしてもキムラスカが選ぶ選択が・・・アッシュの抹殺との結論に至る可能性も否定は出来ません。この期に及んでもまだキムラスカに戻らないというならいっそ殺してしまえばいいではないかと、そう考える可能性も」
「!」
更にカノンは逃げ道を塞ぐように告げていった、そんな状況を避けようとした場合のマイナスの可能性達を。アッシュはそれらに愕然としたようたたらを踏んだ、あまりにも自身にとって絶望的過ぎる事に。
「・・・お前がどう思うかは知らんが言っておくぞ、アッシュ。お前に今述べ上げた事はあくまでお前に降りかかる選択についての可能性であり、その選択による結果はルーク様に責任がある物ではない。むしろお前の選択次第でルーク様の命運が左右されかねないし、その事は既にルーク様にも話してある・・・その事を承知した上で夜までに自分がどうしたいか、自分がどうするべきかを考え結論を出せ。キムラスカに残るべきか否かをな」
「・・・ぐっ・・・!」
そしてこれが最後と言わんばかりにカノンは口調を崩して強く選択を迫るよう言うと、アッシュはルークとカノンの二人に視線を向けて強がりともなんとも言えない声を上げるばかりであった。
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「・・・さて、後は再び陛下の私室に夜に向かい話をつけるのですがお二人には覚悟していただかなくてはいけない事がございます・・・」
「「・・・」」
それで宿は二部屋取ったのだが、話をするために片方の部屋にルークとアッシュの二人を呼んだカノンは真剣に話を切り出す。
「これからの話次第でお二人がキムラスカに残るかどうかの峠になります。その際に重要になるのはアッシュがどのような考えを持つかです。今の状況で二人共にキムラスカに残るとなれば相当の物議を醸すことは予測出来ますが、それも二人の考え次第では共にいることも出来るでしょう・・・ですがそれもあくまで二人の意志が揃っての事になり、おそらくアッシュの意志の方を重要視すると見られます」
「っ・・・」
カノンはそれでアッシュの優位性を語るのだが、そこで当の本人がニヤッとしたのをカノンは見逃さなかった。
「・・・ただ一つそこで言っておかねばならない事がありますが、もしアッシュが一人でキムラスカに戻るとの意志を示したなら・・・アッシュは事の擦り合わせをするためにルーク様の服を譲り受けた上で、以降は記憶を取り戻したという体を取ることは必須になるでしょう」
「なにっ!?それはどういうことだ!?」
「今二人の存在は公になっていません。その状況の中でアッシュ一人で戻るというのであれば今までのルーク様のフリをある程度はしなければ合点はいきません。ただある程度不自然な点は記憶を取り戻したとでも言えば誤魔化しが効きますので、そこは呑んでいただかねばならないのは後の話し合いで出てくるのは間違いないと思われます・・・また、キムラスカにそうやって戻ると決めたなら公爵様に陛下のお言葉に二度と逆らえなくなることも覚悟していただかなくてはなりません。いかに事情があったとはいえキムラスカに戻ろうとしなかった事実には変わりはなく、アッシュとして起こした行動を否定も出来ません。アリエッタに命令を下した事実も」
「・・・っ!」
カノンはそんなアッシュに冷たい目を向けながら告げる、そんなに甘くは事は進むわけないと。特に何の考えもなしに軍港を襲わせた経緯を匂わせた時、アッシュは冷や汗を浮かべて顔をひきつらせ息を呑んだ・・・喜び勇んで帰れると思ったその位置が、自分の意志を縛る可能性の高い場所だと知らされ。
「ですがキムラスカに戻りたくないと拒否を示したとして、アッシュがそのまま放逐される可能性はほぼないものと見ていいでしょう。先の件の事もありますが、キムラスカの王族の血を引いていることには違いはありません。そのような存在をみすみす逃すような事は出来ないでしょうから考えられる可能性としては拒否をしたすぐに否応なしの捕縛か、もしくは立場と名を変えての監視付きのキムラスカへの従事の強要で、ダアトに亡命したとしてもその行動は逐一知れるようにとの監視体制を取られかねない事は容易に想像が出来ます。そして亡命するという選択を選ぶにしてもキムラスカが選ぶ選択が・・・アッシュの抹殺との結論に至る可能性も否定は出来ません。この期に及んでもまだキムラスカに戻らないというならいっそ殺してしまえばいいではないかと、そう考える可能性も」
「!」
更にカノンは逃げ道を塞ぐように告げていった、そんな状況を避けようとした場合のマイナスの可能性達を。アッシュはそれらに愕然としたようたたらを踏んだ、あまりにも自身にとって絶望的過ぎる事に。
「・・・お前がどう思うかは知らんが言っておくぞ、アッシュ。お前に今述べ上げた事はあくまでお前に降りかかる選択についての可能性であり、その選択による結果はルーク様に責任がある物ではない。むしろお前の選択次第でルーク様の命運が左右されかねないし、その事は既にルーク様にも話してある・・・その事を承知した上で夜までに自分がどうしたいか、自分がどうするべきかを考え結論を出せ。キムラスカに残るべきか否かをな」
「・・・ぐっ・・・!」
そしてこれが最後と言わんばかりにカノンは口調を崩して強く選択を迫るよう言うと、アッシュはルークとカノンの二人に視線を向けて強がりともなんとも言えない声を上げるばかりであった。
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