双子の片割れと三人の聖闘士の介入

「いえ、貴殿方が運ばれた神託の盾の様子はいかがかと思ってこちらに来たのですが・・・どうやらまだ目覚めてないようですね」
「えぇ。ですがいずれ目を覚ますでしょう。心配は無用です」
それでイオンの用向きはティアの様子見と言うが端で寝ている様子を見て少し落胆したのを見て、当たり障りなくカミュは大丈夫と答える。
「ただそれでなんですがアニス、あぁ彼女は僕が一人でこちらに来ることに反対されたんです」
「当たり前ですよぅ、ただでさえさっきも一人で行動してたのに・・・」
「「・・・」」
次にイオンは導師守護役がいるわけを言うが、紹介されたアニスは疲れたよう抜け出された事を平気で暴露する・・・ここで普通なら、聖闘士である二人は反応しなければならない。だが二人は共通した想いを抱いていた。



((・・・星矢(氷河)達に聞いたアテナの行動のようだな・・・))
・・・それは後輩でありカミュにとっては弟子がいる青銅5人組が、度々の争乱の時のアテナの独断専行による混乱の話だった。主だった所ではポセイドンとの戦いでは海界に単独で乗り込んだのに星矢達がメイン・ブレドウィナを壊すまで溺死寸前まで閉じ込められ、ハーデスとの戦いではエリシオンに単独で乗り込んだはいいが捕らえられアテナの聖衣が星矢によって渡されるまで全身の血を吸われ瀕死になる・・・いくら考えがあったとは言え、いつも主の考えに振り回され割りを食わされギリギリの所で戦うことを余儀なくされる。それがアテナを守る聖闘士の役割とは言え、護衛する側としてはやりにくくてかなわないと黄金12人揃って青銅5人に同情して思っていた。



・・・正直アニスの媚びに満ちた態度は引っ掛かってはいる。だがそれ以上に単独行動を取って周りを困らせるイオンの行動は規模が小さいとは言えアテナを彷彿とさせると二人は感じていた。
((だがこういった人柄も慕われる理由なのだろうな))
・・・しかし伊達にアテナに仕えている訳ではない二人はわかる。そう言った人物だからこそ理屈抜きに人が付いてくるものだと。
意外と主の問題行動に(青銅5人組が主に活動していたのを聞いたからというのがあるが)慣れている二人は、目の前のイオンに対し少なからず好感を持っていた。
「・・・それで、用事はおしまいでしょうか?確か導師はこのエンゲーブで起きた盗難事件について調べていたはず。そしてそれがチーグルの仕業とわかった以上こちらに留まる理由はないはずですが・・・」
だが導師と必要以上に交流する理由は二人にはない。カミュはこれでお引き取り願おうと事前に村で起きた事件の情報も含めて穏便にいる理由がないなら帰るように言うが、その言葉にイオンの表情が悲しそうに歪む。
「・・・確かにそうなんですが、そのチーグルが食料を盗んでいたというのが少し引っ掛かっているんです・・・」
「確か話によればチーグルはあまり体も大きくなく、草食の動物とのこと・・・そんなチーグルがわざわざ人里まで来て何故食料を盗むのか、それがどうしてなのかと思っているんですね?」
「はい、そうです・・・」
チーグルがどういう存在か。ダアトの事を記した本より知った知識を総動員してイオンが悲嘆に暮れる理由を余すことなく察したカミュに、イオンは力なく頷く。
「・・・もしや導師、貴方はチーグルの事を調べたいと思ってはいませんか?」
「えっ・・・!?・・・はい、そうです・・・」
そこにアイオロスがその心中を読んだかのように調べたいのかと静かに問えば、イオンは驚きに顔を上げ自分を見据えて話さないアイオロスの真剣な目に観念したよう肯定する。










12/18ページ
スキ