変遷は聖闘士の引き起こす猛威

「この男は何も考えずただ預言預言と喚き、動いてきた・・・その代償が如何なものかを見せてやってるまでの事よ。今までに犠牲になった者達の怨嗟の声と共に自らも刃に貫かれていく悪夢をな」
「な、何故そのようなことを・・・?」
「その男が救いようもないクズだからだ・・・先程の話を聞いていたのなら感じただろう。預言の為ならどのような事でも悪辣な事だと感じないままに悪辣な事を起こすということを。そのような男を放っておけばまた新たな悲劇が生まれる。キムラスカにマルクト・・・果てはダアトの者すら見捨てるべきと決めたなら容易に切り捨て、多大な犠牲を生み出すと言った悲劇がな」
「・・・っ!」
一輝はそのまま強く言い放っていく、いかにモースが非道の輩であり他者を平然と巻き込んでいくかを。インゴベルトもカノン達の話に先程のやり取りがあったことに加え、キムラスカも用済みになったならと仮定されたことに冷や汗を一気に吹き出し息を呑んだ。現実味を帯びた話でもあり、キムラスカや自身の事も否応なしに考えさせられる事だった為に。
「・・・さて、俺はもうやることはやった。行かせてもらう」
「っ、ま、待て!モースはどうなるというのだ、この状態は!?」
「一応発狂して死なない程度には威力は抑えてはおいた。いずれ来るべき時に裁かれるまで生かしておく為にな。それにもう幻は見えていない・・・見てみろ、そいつを」
「・・・あ・・・あぁぁ・・・あぁっ・・・!」
「っ・・・!」
一輝はそこで後ろを振り返り場を出ようとし出すが、インゴベルトは慌ててモースの事を聞く。一輝は振り向かず答えていくが、指示されたようモースの姿を見た瞬間インゴベルトは戦慄した・・・ガタガタと身体を震わせ、目は虚ろになり、恐怖に震えてまともに声を出せず、聖職者というにはふくよかとしか言えなかった頬が一気に痩せこけたように見えるという、あまりにも異質な姿に。
「そいつの脆弱な精神では二度と元のような傍若無人な振る舞いなど出来んだろうが、日常生活をするのになら数日もすればマシな状態になる。適当に放置してやれ・・・さらばだ」
「なっ!?・・・・・・ま、また来た時のように消えていった・・・」
一輝は情けなど見せる様子もなくそのまま放置をするように言い残し、小宇宙をまといながらまた姿を消していきインゴベルトを始めとして場の面々が唖然とする。



『なぁ・・・これで一輝は帰るのか?』
『だとは思うが・・・随分と応えたようだな、モースは』
・・・ただ一輝の事を知る聖闘士達は全く動揺することなく、小宇宙を介した通信でデスマスクとカミュは会話をする。
『俺にはまだやることがある。それが終わってから帰る』
『っ、一輝・・・やることとはなんだ?』
『預言保守派の黒幕と言うべき者達がいる街がある。魔界にあるユリアシティという街がな。モースの記憶を読んだが、預言の達成の為に創世歴の頃の技術により今でも障気に呑まれず存在していて過ごしているとの事だ』
『何っ・・・そのような者達がいるのか・・・?』
そこに場からいなくなった一輝より告げられた事実にカノンは意外そうに言葉を漏らす。
『その街に住む者達は預言を達成するための監視者としての自負に満ちていて、モースもそいつらの影響を受けた上で指示を受けて行動してきたとの事だ・・・これからの事を考え俺はユリアシティに行く。第二第三のモースを送り出させぬ為にな。もし場所に行き方を知りたいというなら導師にでも聞け、ではな』
『おっ、おい一輝!・・・だーくそっ!もう行きやがったあいつ・・・!』
『・・・だが一輝の行動にも一理ある。モースが使い物にならなくなったと知ったらユリアシティとやらの手がすぐに伸びてくる可能性は十分に有り得る』
『それなら一輝にユリアシティの方を任せる方がいいか・・・』
『・・・不安は尽きないが、とりあえずこちらを先に片付けさせてもらう。今の状況を放っておくわけにもいかないからな・・・』
一輝は更に話をしていくがとっとと通信を切る様子にデスマスクは文句を言いたげに言葉を上げ、カミュにアイオロスはその行動に理解を示す。ただカノンは半ば現実逃避気味に目の前の事へ思考を移行させる。一輝がどれだけの事を起こすのかとの不安があるために。






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