変遷は聖闘士の引き起こす猛威

「私は大詠師だ!私の行動は全て預言を達成する為のもの!それを何故批難されねばならんのだ!」
「モ、モース・・・」
「・・・成程、それが貴方の答えというわけですか。道理を預言のみとし、その他の物を些細な物として見下すと」
「ふん!それの何が悪い!」
そして叫ばれた開き直りの言葉にインゴベルトは唖然としてカノンは冷ややかな声を向けるが、全く悪びれもせず嘲笑う。
「さぁヴァン!それにラルゴにディストよ!貴様らが捕らえられた事も、今までの行動も特別に全て水に流してやる!今すぐそやつらを捕らえよ!」
「ま、待てモースよ!お前はアッシュにルークの事をどうするつもりだ!?」
「フ・・・今更何をおっしゃる陛下!今度こそアクゼリュスと共に消滅していただくのですよ!そしてその後今度こそマルクトとの戦争に興じていただく!預言通りに!」
「・・・っ!」
そのままヴァン達にモースは明らかに自分に都合のいい裏切りを命じるが、インゴベルトはまだ聞いてないとルーク達の事を焦って問い質すと・・・取り繕うこともなく欲望に忠実に歪んだ笑みを向けてきたことに、明らかに脂汗をかきひきつった表情を浮かべた。
「・・・陛下、これが大詠師・・・いえ、預言だけを大義とする者の真意です。このような者をキムラスカにこれからも受け入れたいと思っておられるのですか?」
「そっ・・・それは・・・」
「えぇい、余計な戯れ言で陛下を惑わすな!陛下、兵士をお呼びを!」
「むっ・・・むぅっ・・・!」
静かにインゴベルトへカノンはこれでも従うのかと問い掛け、モースがすぐに従えと言わんばかりに声を張ったことに両者の顔を汗だくになりながら見比べる。
『そのような者の言うことなど聞く必要はない!』
「っ!?何者だ!」
「・・・ここで来たか」
そんな場全体に存在感を強く感じさせる声が響いた。モースが驚き周りを見渡す中でデスマスクがそっと呟きながら、入口の方にアイオロス達と共に向き直る・・・そこには特徴的で攻撃的な小宇宙が空間を歪曲させて渦巻いていた。
「なっ!?なんだこれは!?今の声の奴か、こんなことをしているのは!?」
『貴様のような外道に名乗る名など持ち合わせてはいないが、耳の穴をかっぽじってよく聞くがいい・・・俺の名は一輝、フェニックス一輝だ!』
「「「「・・・っ!」」」」
モースはその光景に驚愕していると、その空間の中からフェニックスの聖衣を身にまとった一輝が名乗りと共に姿を現した。空間は一輝が出てきた事により塞がれるのだが、普通では有り得ない登場の仕方や一輝が攻撃的な小宇宙を浮かべていることに聖闘士組を除いた一同の目は驚きに見開かれたままとなっている。
「さて・・・今までの話は聞かせてもらった。だが最早貴様と語ることなど何一つない。人の命を預言一つで大量に消すことをためらいなく消せるような者などとな」
「ふん!どうやって今のような事をしてここに現れたのかは知らんが、私も貴様と話すことなどないわ!貴様もまとめてそやつらと共に捕らえてくれよう!」



「鳳凰幻魔拳!」



「っ・・・!?」
一輝は周りに構わず指を突き付け話をしていきモースは異様な登場の仕方を気にせずに居丈高に声を上げるが、鳳凰幻魔拳を問答無用にぶつけた瞬間虚ろな表情になって黙りこんでしまった。その光景に周りは何事かと訝しげにモースに一輝を交互に見る。
「っ・・・うわぁぁぁぁぁぁっ!?」
「なっ、なんだモース!?一体どうしたというのだ!?」
「今のそいつに話しかけても無駄だ。今のそいつは悪夢の中にいる・・・未だかつて見たことのない悪夢の中にな」
「・・・っ!」
次の瞬間虚ろなモースから魂を消し飛ばすかのような叫びが辺りを埋め尽くす程に叫ばれた。インゴベルトが慌てて何事かを問うと一輝から当然とばかりに自分が悪夢を見せてると返され、言葉を失った。信じられないが、今のモースの様子からただならぬ事が起きていることは理解せざるを得ないために。







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