変遷は聖闘士の引き起こす猛威

・・・公爵を先頭に一同は城の中に入り、一直線に謁見の間へと続く扉の前へと向かい兵士の案内によりその扉の中へ入る。



「おぉ、来たなクリムゾン・・・してどうしたのだ今日は?このような形で謁見を申し出るとは・・・理由を聞いてもまだ言えぬとの事であったが・・・」
「はい、今日は重要な話をしに参りました」
・・・そこで待っていたのは玉座に座るインゴベルトとその脇にまるで重臣であるかのよう、当然のように立っているモースだ。そして周りには兵士の姿はないのだが、これは公爵の申し出により出来る限りの人払いをと言われたからインゴベルトがそうしたのだ。
そんな状況でインゴベルトは早速と何用なのかと首を傾げながら問うと、公爵は真剣そのものと言った様子で重要な話と告げる。
「ただ最初に何を話せばいいかと思い色々と悩みましたが、この場に大詠師もおられる以上はまずこの事実からお話したいと思います」
「・・・私がどうされたというのですか、公爵?」
「その話をする前にこれはダアトの事情にも関わることになります・・・ではヴァン、変装を解け」
「っ・・・何っ、ヴァン・・・貴様何故ここに・・・!?」
そこから段階を踏むと前置きをする公爵にモースは眉を寄せるが、名を呼ばれ無言で変装を解いたヴァンの姿に驚きつつも厳めしく場にいる理由を怒り混じりに問い掛ける・・・大方預言通りに行かせる為に派遣したヴァンが勝手に預言を達成させず戻ってきた事を怒っているのだろう。
「ヴァンがこの場にいる理由については後々申し上げますが、まず申し上げねばならないことを言わせていただきます。それはヴァンが我々キムラスカだけでなく、ダアトまでもを欺かんと動いていたと言うことです」
「何・・・どういうことだ、クリムゾンよ?」
「それはこちらの二人の変装を解いたなら有無を言わさぬ証拠になりますが、まず一つお二人に約束していただきたいことがございます・・・これより我々が話すことを途中で無理矢理に止めようとする事はお止めください。これからの話は全てを聞いてこそ意味を為す物になります」
「・・・ふむ・・・よく分からんがそなたがそこまで言うならいいだろう」
「・・・公爵がそう言うなら・・・」
そんな姿に意を介さず話を続ける公爵は話を進ませ念の為にと約定を持ちかけ、インゴベルトは釈然としなそうながらも頷くがモースは怒りにも不安にも見えるようななんとも言えない表情で一応は了承を返す。
「ありがとうございます・・・ではルーク、それとアッシュ・・・変装を解いてくれ」
「「・・・はい」」
「っ!?こ、これは・・・!?」
「ルーク、いやルーク様が二人・・・!?」
二人の返事に礼を言いつつルークとアッシュの二人に命を出し、同時に同じ声で変装を解いた姿にインゴベルトは目を最大に見開きモースは動揺のあまり呼び捨てにしかけながらなんとか様付けで言い直す。
「予想はしてはいたがやはり大詠師も預かり知らぬ所だったみたいだな、アッシュの事は」
「そ、それは・・・!」
「ど、どういうことだクリムゾン・・・一体何がどうなっているというのだ、アッシュの事とは・・・!?」
「端的に結論を申し上げるならヴァンは本物の『ルーク』であるアッシュを誘拐し、その際にキムラスカにダアトの目を欺く為にフォミクリーと言う技術を用いてルークを造り・・・本物だと思い込ませていたのです」
「「!!」」
「っ・・・」
改めてモースが知らない事を公爵が冷たい目を向けながら確認する声を詰まらせ、インゴベルトは更に混乱する。公爵もその声に単刀直入に事実を告げると二人はまた驚愕することになるのだが、一人ルークはただ誰にも見られないようにと強く拳を握りこんで唇を噛み締めていた。分かっていたが、改めて言われると辛い事実を耳にして。







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