変遷は聖闘士の引き起こす猛威

「・・・心中お察ししますが、今は時間がありませんので話を続けてもよろしいでしょうか?まだ船が着くまでには時間があるとはいえ、このように時間を取れるような事はもうないはずですが・・・」
「・・・うむ、そうだな。話に戻ろう」
少ししてカノンは気持ちは分かるがと言いながら緊迫感を持って話を促し、公爵も表情を引き締め直し頷く。
「ではまず現在ナタリア様はどのようにされていますか?」
「戻ってきたのはいいが、すぐさま私をちゃんとした形でアクゼリュスに派遣してくださいの一点張りだ・・・カノンの話を聞いて多少は効いたみたいだが、それでも行くという意志を取り下げない所から見てまず懲りてはいないだろう。陛下もそう感じたのか取り合う事もなくすぐに自室での見張りつきの謹慎を命じ退出させたが、やはりまだ受け入れがたいようでその後で苦悶されたような表情を浮かべておられた」
「成程・・・ナタリア様には事実は伝えられてはおらず、陛下もまだ悩まれているとのことですか・・・しかし大詠師がいたならすぐさまアクゼリュスにまた向かうようにと陛下に上奏するかと思われるのですが・・・」
「その時は場にいなかったと言うのもあるが、いかにモースとて戻ってきて過ちを認めたナタリア様を嬉々として送り出そうとするのはおかしいとくらいは気付くだろう・・・最も、今となって考えるならそれも半々くらいの確率ではあるだろうがな・・・」
それでカノンがナタリアについて話題に出し次第にモースの方へと話題が移るのだが、公爵は滲み出る不信感を隠せずに言葉を漏らす。やはりもうモースの事は信じることは難しいのだろう。
「・・・カノンにミロ。お前達にこのような事を聞くのは立場的に見てお門違いな事だと分かってはいるが聞きたい・・・キムラスカはこれよりどのようにすべきだと思う?ダアトとの関係を・・・」
「ダアトとの関係、ですか・・・」
「率直に私の気持ちを申し上げるなら、預言を含め国交の見直しを行うべきだと思います」
「ミロ・・・」
だからこその迷いを浮かべつつの問い掛けを投げ掛ける公爵にカノンが答えに困ったように間を空けそうになった時、ミロのまっすぐな答えが告げられた。国交の見直しを計るべきと。
「言ってしまえば今現在の国交は預言があるダアトの意見に反対しにくい状況にキムラスカが陥っています。このままの状況が続けば更に反対が出来なくなる状態が続くのは目に見えてきます」
「だから国交を見直せ、と言うのか・・・?」
「先程公爵様は言葉にされてはいませんでしたが、ナタリア様の入れ換えの件・・・それを預言だと大詠師は申し上げたのではないですか?」
「なっ!?何故それを・・・!?」
ミロは構わず話を続けていくがそこで出てきたまさかの予想に公爵は驚き、目を丸くした。入れ換えは預言によるもの、そう言われたと明らかにするよう。
「公爵様と陛下の様子から大詠師に反論出来なかった理由は何か、と思った時に預言だったのでは?とふと思ったのです。でなければ流石に他国の人間である大詠師の言葉に両者がただ屈服するはずがないと思ったので、そう申し上げさせていただきました」
「確証があったわけではないということか・・・だがそれは事実だ、間違いない・・・」
・・・ミロは黄金の中ではどちらかと言えば直感型の人間だ。物を考える能力も勿論あるのだがカミュやサガなどの思慮深い面々と比べると流石に落ちはするが、それを補ってあまりある直感力がある。
物事の本質を捉えた上で推測するミロの言葉に公爵も納得し、うなだれながら声を上げる。正解だと。
「おそらく、いえ確実にこの状態が続いたら似たような事はこれからも多く出てくると思います。下手をするとナタリア様の事以上の秘密を握られてしまう可能性も否定出来なくなる事も有り得ると思われますが、それを解決するにはダアトの人間を易々と国の内に入れないことが必要だと私は思います」
「むぅ・・・ナタリア様の事実を思えば確かにそうだが・・・」
「私もミロの意見に全面的に同意します。預言なら・・・その言葉一つで黒を白へ、悪を善へと変えられるのなら逆もまた可能になります。それこそ今ならまだ譜石の欠片による預言ですのでまだアクゼリュスの消滅からの戦争については言い逃れも出来るかもしれませんが、ダアトがキムラスカを牽制もしくは制圧しようとした場合の最悪の状況としては第七譜石を本物かでっち上げたかどうかは別にしても持ち出し・・・キムラスカが先の戦争を引き起こしたといったものであったりキムラスカがダアトの属国になるといった内容を読めば、それこそキムラスカが最悪の状況に陥りかねません」
「!!」
続けて注意すべきと言葉を続けるミロに続いたカノンの最悪を想定した言葉の数々に公爵は青い顔色で絶句した・・・あまりにもキムラスカにとって危険すぎるその中身に。






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