変遷は聖闘士の引き起こす猛威

「すまないな、ミロ。苦労をかけた」
「何、気にするな。それよりこれがアニスと大詠師がスパイとその主として繋がっていたという手紙に報告書といった物だ。手段は誉められた物ではないが、大詠師がダアトに帰ってせめてと証拠隠滅を謀られてはと部屋の中を探してきた。これをお前に渡す」
「あぁ、すまない」
カノンはそのまま礼を述べるとミロは気にしないように言った後に書状の束を取り出し、カノンに手渡す。重要な証拠の物品を。
「・・・私もそれらの書面を見た時は驚いたが、アニス=タトリンの証言も相まって更に私は思うようになった・・・モースを放置することはけしてキムラスカにとって益をもたらすとは思えないと・・・あの話を聞いた後だから、また尚更にな・・・」
「あの話・・・?」
「・・・この際だ。カノンとミロ、お前達にもこの話は先にしておく。本来ならこれは出来る限り誰にも話すべき事ではないとは承知しているが、今の状況をもたらしてくれているお前達には話すべき事だと私は思っている・・・聞いてくれるか?」
「・・・はい、勿論」
公爵はその書状を見て暗い面持ちで苦く言葉を漏らし、カノンが眉をひそめる姿にその話を聞くかと聞いてはいるが言わずにいれずにいるといったように重く問い掛ける。カノンもまた重く了承し、ミロも黙って頷いたのを確認して公爵は厳めしく口を開く。
「・・・事が起きたのはナタリア様がバチカルより抜け出した後の事だ・・・当時我々、特に陛下は心を乱された。言葉にこそしなかったが、アクゼリュスに行くルーク達に付いていったのではないかと。その時私はカノン達の事を言えなかったので心配するフリをしてナタリア様の引き戻しについて画策をしたのだが、どうしても私達とカノン以外の言葉にナタリア様が耳を貸すのかが非常に疑問になった・・・故に私も仕方なくカノンが同行しているので任せてみてはいかがかと具申しようとしたのだが、その時モースがこれは内密の事ですがと切り出してきたのだ・・・」



「今のナタリア様は本物のナタリア様ではなく、身代わりを立てた偽物だと」



「「!?」」
・・・まさかの公爵の言葉に、流石のカノンにミロの二人も絶句した。ナタリアが偽物、その衝撃的過ぎる発表に。
「・・・なんでもモースの言い分としては本物のナタリア様は死産だったらしく、産まれた時期がほぼ一緒であった侍女の娘をナタリア様として祭り上げたそうだ。そして嘘ではない証拠として本物のナタリア様が埋められたという場所を掘り起こした結果、条件に当てはまる遺体が見つかったのだ・・・」
「・・・そして大詠師は言ったのですね。偽物なのだから気にする必要はない。むしろルーク様と一緒にアクゼリュスで亡くなっていただいた方が戦争の気運をより高めることが出来る・・・と言ったような事を、お二方に全く配慮もせず」
「あぁ、もうほぼその通りの事を言っていた・・・陛下は尚も食い下がろうとしていたが、もうナタリア様が自ら戻ってくる可能性はほぼないに等しいのではと改めて突き付けられた事にうなだれた・・・本当ならそこでカノンの事を言えば陛下にも安心いただけたのだろうが、私自身も驚愕していた事もあり何も言えずにいたのだが・・・その後ナタリア様がカノンにより送り返されてきたことに安堵した反面、恐ろしくも感じたのだ・・・もしナタリア様のようにモース、いやダアトが何かをしていたり隠していたのならキムラスカは大丈夫なのかと・・・そう、な・・・」
「「・・・」」
そのままに説明と共に自分の不安に疑念に恐怖と様々な負の可能性を思い、自分の気持ちを心底から吐き出し身を抱く公爵に二人は沈黙する。いかに負の想いに焦がれているのかというのを滲ませる様子に、公爵の気持ちを理解せざるを得なかった為に。







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