変遷は聖闘士の引き起こす猛威

「おーおー、遠目で確認したから分かっちゃいたが本当にぶち壊れてやがんな。この橋」
「流通の流れを復活させるためにも今は修復作業に入ってるからここまで直ったのだろうが、当時はどれだけ壊れていたのだろうな。この橋は」
ローテルロー橋の前に着き、その損壊の姿にデスマスクとカミュが思い思いの声を上げる中でカノンはジェイドに視線を向ける。
「・・・一つ聞きたいのですが、よろしいでしょうか?」
「何ですか?」
「当時賊の乗った辻馬車を見つけ貴方はタルタロスを指揮し、賊を捕らえようとしたそうですが結果として捕らえられず挙げ句には橋を壊された・・・それでいいですか?」
「えぇその通りですが、それが何か?」
「・・・いえ、その賊を是が非でも捕らえようとする必要が貴殿方にはあったのか?と我々は疑問に思ったんですよ」
「・・・どういうことでしょうか?」
それで当時の状況確認からそうしなければならない理由についてを聞くカノンに、ジェイドは何をと逆に疑うように声を返す。必要な事だろうと信じて疑わない様子で。
「その質問にお答えする前にお聞きしますが、貴方はあの辻馬車に賊が乗っている事を何故ご存知だったのでしょうか?あの馬車に見覚えのある賊が乗り込んだ姿を見たのですか?」
「・・・道中こちらに情報が入り込んで来たのですよ。漆黒の翼という賊が辻馬車に乗り逃走中だとの情報が」
「それで貴方は怪しい辻馬車を見つけ、タルタロスで追い掛けていたというわけですか。成程・・・失敬、話を続けますが遠目で確認したとデスマスクが言った通り我々はその追跡劇を一部始終目撃していました。ですが貴殿方は導師を連れて和平に向かう身であったはずですが、そのような中であえてその辻馬車を追う理由はなかったのではないかと申し上げているんですよ」
「・・・犯罪者を追うのは当然の事でしょう。軍に身を置くものとしては」
「物分かりの悪い大佐殿だな・・・あんたが優先順位を間違ってるっつってんだよ、カノンは」
「何・・・?」
そんな様子に構わず段階を踏んで話をしていくカノンだが、ジェイドは間違いなどあるはずないと自信を伺わせながら返していくのだがデスマスクからの明らかに馬鹿にした声の乱入に丁寧な声が乱れて本音が漏れた。
「あんたはその情報を聞いて行きがけの駄賃程度に賊を捕まえようと思ったかもしれねぇが、あの時の航路を思い出すとローテルロー橋付近からエンゲーブっていうキムラスカに向かうには逆戻りにしかならないルートだった。予想としちゃ何もなかったらエンゲーブで食料を補充してキムラスカにまっすぐ向かうつもりだったんだろうが・・・そうしちまったことで和平に何日も向かう遅れを取らせちまった。これって行きがけの駄賃を得るどころか損以外被ってねぇだろ。橋も壊されて賊も取り逃がしてんだしよ」
「っ・・・橋を壊したのは漆黒の翼と、貴殿方も見ていたでしょう・・・」
「そいつに関してもあんたの浅慮は否定出来ねぇと思うぞ、俺は。まぁ元々からその賊を捕まえるための大々的な作戦を企てといて逃げられたんならそれはそれで問題だとは思うが、あんたに関しちゃ突発的に出くわした賊を捕らえようとルーク様達の乗った辻馬車を強引に警告で退かせた上で強行して賊を追い掛けてそれで賊に橋を壊された・・・これに関しちゃ賊が橋を壊したのは確かに実行者って目線から見れば当然責任はそいつらにあるが、あんたに関したらあんたがやるべきって必然性のないことでマルクトに関する不利益をもたらしたんだ。不十分な追跡で獲物を追い込みきれなかったことで、主に人の行き来を妨げエンゲーブからの食料をケセドニアにまで運ぶ手間を大いにかけさせるって不利益をな・・・まぁ起きた結果に関しちゃあんたに責任が全くない訳じゃないとだけ今は言っとくが、あんたが優先順位を間違えず漆黒の翼とやらの対応を他の奴に任せてキムラスカに向かってりゃ他の奴が上手い策を取った上で賊を捕らえて橋も壊されないで済んだ・・・なんて結果も有り得たと思うぜ?少なくとも橋を壊されてむざむざ逃げられるようなことはなかっただろうな」
「っ・・・!」
そして出るわ出るわのデスマスクの行動批判に可能性の羅列の声に反論しようとしていたジェイドもたまらず苦々しげに押し黙ることになった、反論しようにも出来そうにもないその言葉の数々に。






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