双子の片割れと三人の聖闘士の介入

「クスッ・・・そこまで固くならないでください。僕もどうしたらいいかわからなくなります」
「あ、いえ・・・気になさらないでください。まさかこのエンゲーブで導師に会えるなどと思っていませんでしたので・・・」
そんならしくない姿を見て笑い声をこぼすイオンに、これ幸いとカミュは冷静さを取り戻しながら正直に動揺の訳を言う。
「そうですか?・・・あぁいけません、そう言えば急いでローズさんに伝えなければならないことがあったのでした。ですので僕はこれで失礼します」
「「・・・」」
イオンはその答えに首を傾げるが唐突に思い出したように声を上げ、一礼をしてその場から立ち去っていく。場に残された二人はその姿を微妙な気持ちで見送るばかり・・・
「・・・とりあえず宿に入るか、早くカノン達に合流したい」
「・・・そうですね・・・(一刻も早くカノンにはこの世界の事を教えてもらおう・・・)」
・・・ロクにこの世界の情報を知らない、故に妙に気構えてしまった。
少ししてアイオロスのやけに気疲れした声に同意しながらも、カミュは夜などと言わずにすぐこの世界の知識を知って対応しようと心に誓っていた・・・












・・・そしてティアを宿に置いてからアイオロス達はカノン達の元に向かったのだが小宇宙を頼りに探したそこは民家で、扉を開けるとキッチンに立っているカノンに、剥いてもらったリンゴを椅子に座りながら行儀よくもパクパク食べていくルークに、上機嫌で扉近くで立って皮付きのままシャリシャリとリンゴを丸かじりしているデスマスクを二人は見つけた。

その光景を見て何をしているとカミュが言えばリンゴを剥く為に場所を借りた、というカノンにカミュは思わず脱力しかけた。だがデスマスクからこんなうまいリンゴ中々ねーから食っといた方がいいぞ、と言われ投げ渡されたリンゴにアイオロスと一緒にリンゴをかじったカミュは確かにうまいと呟いた。アイオロスはうまいに付け加え、満面の笑みを浮かべていた。

そのリンゴのおかげで多少沈んだ気分が浮かび上がったカミュにアイオロス。そこで腹も膨らんだとルークも満足したことで、カノンが場所を貸してもらったことに礼を言ってから一同は宿に行った。



「・・・導師がこのエンゲーブに?」
「あぁ、先程アイオロスと一緒に会った」
・・・場は宿に変わり、カミュ達が取った部屋というよりは共同の就寝スペース。一番端のベッドに追いやられて寝ているティアはさておきと、一同テーブルを囲み集まる中でカミュは先程会ったイオンの事を報告する。
「あれ?でもおかしくねーか?確か謡将の話じゃ今導師はダアトから行方不明って話だぞ?」
「それは、本当ですか?ルーク様」
「あぁ。俺が飛ばされる前謡将がその捜索にあてられるから、その前に存分に稽古するって言ったんだよ・・・一大事なら一刻も早く探しに行かないんですかって言ったけど、今日はいなくなる分付き合うって聞かなかったからな・・・よくよく考えりゃそのせいであいつに関わってしまったようなもんだしな。恨むぜ、謡将・・・」
「「「「・・・」」」」
その報告に異を唱えてきたのが肘をついて聞いていたルークで一人テーブルの横に立っていたカノンが確認を取るが、ちゃんと状況は説明はするものの明らかにその通りとしか言えない主張に加えて不満タラタラな視線をティアに向けるその姿に誰もフォローも何も言えず、カミュ以外はヒクヒクと頬をひきつらせ黙りこくった。



・・・ルークの言っていることはカノン達からすれば正論極まりなく、ヴァンの行動は愚かしいとしか言えなかった。

イオンという存在はローレライ教団及びダアトのトップの人物なのだ。これをアテナに当てはめて見れば、行方不明になったアテナを放っておいて道草を食うなど聖闘士であるカノン達からすれば有り得ない。それこそ真っ先に何を差し置いてでも捜索に回るべきだろうと、カノン達は考えている。

その上更に問題になるのがヴァンの妹であるティアの行動だ。そんなヴァンの主に対する敬意の見えない行動でルークは巻き込まれて、マルクト領まで飛ばされたのだ。本来来る必要のない不必要な来訪とカノンは聞いているし、ルークはそれを承知で帰られてはと勧めた・・・つまりヴァンがバチカルに来て留まりさえしなければルークは兄妹の争いに巻き込まれなかったのだ。不満が出るのも当然と言えよう。

また、加えて言うならイオンの捜索を命じられているのにルークの捜索に行く・・・と言ったのも問題なのだ。はっきり言ってここまで来れば、どこからツッコんでいいかわからない・・・それだけの事をカノン達からすればヴァン達はしでかしていた。








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