世界の流れを変え行く聖闘士達

「一輝が消えただと・・・どういうことだ?」
『その話の後の事だ・・・私はアイオロス達と共に住民の様子を見た後こちらに来ようと思ったのだが、そこには一輝の姿はなかった。それでその場に救助要員として来ていた青銅の話によれば我々が話をしている時にフラッと姿を消したらしい・・・そう聞いて私達はある結論に達した。それは一輝がバチカルに向かったのではとの結論だ』
「バチカルに、だと?」
ミロはその言葉に何故と聞き返すが更に出てきた結論に眉を寄せる。
『こちらは幻魔拳により一輝自身の姿も見たが、奴は大詠師に対する非常に強い憤りを浮かべていた。そして次の我々の目的はバチカルで、大詠師と決着をつけねばならなくなる状況になるのは想像が出来る・・・そのような状況となれば一輝が動かない訳がない。そう我々は結論づけた』
「・・・バチカルで大詠師を片付ける為、ということか?」
『我々はそう見ている』
「・・・一輝が動く以上まず間違いなくそうなるだろうが、よくもそこまであいつが動く気になったものだな・・・」
『・・・大詠師の姿がなければ一輝もそこまでにはなっていなかっただろう』
その上で一輝が来るだろうと根拠づける話を聞きミロがその怒りの深さにある種の感心めいた言葉を漏らすと、カミュにしては諦めを滲ませた言葉を呟く。
『言ってしまえば大詠師は預言への傾倒、もっと言うなら盲信のみで行動する人間だ。善悪の判断はただ預言一点にしか基準はなく、そこには他者への情も何もない。そのような考え方は他者が犠牲になることに罪悪感で心を乱すことすらないばかりか、当然の事と平気で思える上に宣える・・・そんな人間を相手に説得などまともに行えるはずもない。徒労に終わるのは目に見えている』
「だから一輝は怒り、カミュ達もあえてそれを止める気はない・・・ということか」
『あぁ・・・むしろ一輝を止めるような事をすれば一輝を止められるかどうかもだが、言葉でどう取り繕った所でそれからの大詠師の行動次第でこの世界がより酷い混迷に陥る可能性が高い。そう思ってな』
そのままモースに対する負の方向での信頼を多大に滲ませその可能性の危うさを語るカミュにミロも反論せずに重く納得する・・・もう分かっているのだ、カノン達は。モースが改心する余地はないどころか、むしろ放っておけばおくほど後々の危険の可能性が強まると。故に諦めをカミュは滲ませたのだ・・・そうまでしなければ止まらないだろうモースを、情け容赦なく崩壊させるだろう一輝の怒りを止めることを。
『・・・そういうわけだ。おそらく放っておいても大詠師の件は片がつく。しかしだからと言ってそれに併せて動くとなればお前に対する不信感も生まれるだろう・・・だからそちらは何も知らぬままにバチカルに向かうといったようにしてくれ。その方が都合がいいだろう』
「あぁ、わかった。ただ話ではそっちもそろそろバチカルに向かうのだろうが、どれぐらいで着くことになると見ている?」
『・・・こちらはルークに加え謡将にアッシュ達と何人かいる事に加え、あまりに早くバチカルに戻れば本当にアクゼリュスにまで行ったのかという指摘が来る可能性が出てくる。それにタトリン一家を受け入れてもらうのに大詠師がいなくなってからでは都合も悪いだろう・・・だからそちらが数日内でバチカルに向かうと決定させたならその後という事になると見ている』
「そうか、わかった。すぐにバチカルに向かうようには出来る限りはしよう」
話を戻しモースは心配ないと区切りをつけた後に二人は話を続け、ミロ達が先にバチカルへと着くようにと話を進めた。これからの安全のためにと。







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